余剰人制度 2
さて、今回は余剰人制度について記録しよう。
俺はプロの余剰人である。今は立派な仕事となったが、一昔前まではニートと同じように扱われていた。ニートは2000年代に話題になった。働かず、学業に着かず、仕事をしようとしない人のことを指す。
コロナウイルスの時は、対策の仕方があったので、恐怖心が強い人以外は、旧来通りの生活を行っていた。学校や会社にいき、皆と顔を合わせて生活していた。
しかし、ミチルはそうはいかなかった。マスクをしていようが関係なく感染する。感染すれば、ミチルに操られるか、ミチルの養殖場とされてしまう。人と接触を避けるしかなくなってしまったのだ。
そのような状況になると、様々な仕事が変革を迫られることになった。
飲食店はコロナの時のような支援金では守れなくなった。バスや電車は人をまとめて運ぶので利用者がいなくなってしまった。スーパーや衣料店は店舗を構えても人が来なくなってしまい営業を続けられなくなった。オフィスを構えていた企業も社員が出勤しなくなってしまった。
店舗やオフィスビルなどは需要がなくなってしまった。しかし、各人が家にこもるようになったため、家は需要が高まった。ある程度の年齢になると一人でいる方が安全なため、一時期需要がなくなっていたワンルームマンションが乱立されるようになった
このような状態になったため、多くの労働者が仕事を失うようになってしまい、かつミチルを恐れて一人一人家にこもってしまったため、ニートが爆発的に増えてしまったのである。ニートへの対応は生活保護で行われていたが、爆発的な増加のため、生活保護では対応しきれなくなってしまった。
追い込まれた政府は、一時期注目をあびたベーシックインカムに目を付けた。月額7万円。一人一人に配布する代わりに、生活保護や年金制度を廃止することとした。
こうすることで、ニートは働かなくても質素な暮らしであれば生きていけるようになった。結婚して夫婦になったり、子どもが生まれたりすると、もらえる金額が上がるので、さらに働く必要がなくなった。
働かなくなった人々は、好き好きに生活をするようになったが、どうしても避けられない仕事が出てきてしまった。バーチャル空間を作るための施設やインフラは欠かせない。また、教育機関もバーチャル世界に移行したといえで、子どもの教育を削るわけにはいかなかった。
とはいえ、このような仕事であったとしても、人と人を一箇所に集める必要がなくなり、必要に応じて各人がアクセすることができるので、働く人の数が少なくて済むようになった。
常時配備する人間以外は臨時の時に働いてもらえればよくなったのだ。
それまでは派遣会社を通して、人を融通してもらっていたが、ベーシックインカムが導入されてから、労働人口が激減し、派遣会社は人の派遣を維持することができなくなってしまった。
そこで、政府は人材を国として確保することを決めた。それが「余剰人制度」である。
余剰人とは、「余っている人」という意味である。昔は会社の中で必要以上の人という意味であったが、現在では「必要なときに動員できる人」という意味になっている。
余剰人は誰でもなれるわけではない。国家資格の一つとして認められており、試験に合格しないといけない。余剰人はいつでも誰でも出来る人材ではなく、それぞれの仕事においてプロフェッショナルな技能を持っている必要がある。
ベーシックインカムによって働かなくなったことにより、堕落した人間もいるが、一部は学びに時間を掛けるようになった。そのため、その道の知識や技能に長けた人間が多く生まれたのである。
そのような人間を必要な力があることを試験で確かめ、その後余剰人として認定し、登録する。仕事において人手が必要になった場合、余剰人を検索し、依頼をかけるという仕組みに仕上がった。
余剰人に対する報酬は、日額2万2千円が最低金額となっており、それぞれの企業がその時の報酬を設定することができる。余剰人はその条件を持って仕事をするかどうかを選ぶことができる。
ベーシックインカムが7万円あるので、月に10日ほど働くと悠長な暮らしが出来る。そのため、余剰人は多くの人が目指す職業となっていた。
余剰人の普段はニートに近い。定職についておらず、労働があるかどうかも決まっているわけではない。ただ、ニートと違うのは知識や技能を磨き続けているということである。
俺は教育系の余剰人である。学校で人手が足りなくなった場合に仕事をしている。学校はどうしても無くすことが出来なかったので、担任や教科担当は一部残っている。学校からバーチャルで授業を成り立たせている。最低限の人間がいればいいので、担任や教科担当は一人のところが多い。そのため、その人が何かしらの理由で仕事ができないとき、余剰人に仕事が回ってくる。
余剰人になることになった、俺の経緯を次に記していこうと思う。
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