余剰人制度 4

余剰人は全国で30万人ほどいる。各分野のエキスパートなので、余剰人人口は非常に少ない。政府は2000万人を目指していて、人々の労働時間を減らすように考えているようだが、資格を得るためのハードルが非常に高い。

それに現在30万人なので、仕事にありつけるという現状がある。確かに月に10日以上の依頼があるため、もう少し余剰人が増えても良いだろう。

余剰人にもコミュニティが存在する。仮想世界に余剰人が集まって情報交換をしている。このコミュニティに入るためには、合格証明書を読み込ませる必要があるので、余剰人以外が見ることはできない。ちなみに、合格証明書は昔のように紙で渡されるのではなく、電子証明書となっている。

このコミュニティでは、人手を集めるのに利用されることがある。余剰人一人ではどうしようもないときに、同じ資格を持つ余剰人を集めるのである。地域に縛られる必要がないので、仮想空間で見つけるだけで事が足りる。

このコミュニティで仲良くなったネコ助さんがいる。獣医の余剰人で、緊急のオペや救急診療のスペシャリストである。獣医の余剰人は人数が少なく、引っ張りだこである。彼は月に20日も勤務している。通常勤務と変わらないレベルだが、高いクオリティの仕事ができるので、彼は満足している。

ただし、余剰人が存在しない分野がある。IT系の余剰人はいないのである。

現在の仮想空間などプログラミングをする必要があるので、IT系のスペシャリストがいるように思われるが、現在は存在しない。2000年代に始まったITから時代が進み、ほぼ全ての人がプログラミングの技術を持っている。子どもの頃からプログラミングを教えられ、高校を卒業する頃には、ある程度のアプリケーションを作ることができるようになる。

以前の教育では、義務教育があり、義務教育でないと言ってもほとんどの人が高校を卒業していた。しかし、今は基本教育と応用教育の二つに分かれている。これらは修得すべき内容が厳密に決められており、卒業試験をクリアしないと次に進めないことになっている。

基本教育は、物事の基本を学ぶ期間であり、プログラミングに関しては基本的なアプリケーションを作る必要がある。仮想空間で学び、理解が出来たら試験を受けていく形式である。以前のように年齢で句切るのではなく、修得度合いによって合格が決まっていく。

7歳になる年に基本教育に進むことができる。現在最年少で全ての科目に合格したのは9歳10か月の子どもである。通常は12歳になる年までかかり、昔の教育の年齢を意識されている。基本教育を終えた者から就職活動を行うことができるが、低所得の仕事が多く、この段階で就職する人は少ない。

応用教育は基本教育を終えた人から進むことができる。基本教育の内容をさらに発展させ理解を深める必要がある。全ての科目を合格する必要はなく、自分の適性を考えて3分野の技能を修得する。

これが非常に難しく、標準で6年かかると言われている。標準的なスピードで学びを進めると18歳になっている。成人年齢が18歳であるので、この歳で就職する人が多い。ベーシックインカムとあわせて生活できる程度の収入を得ることができるからである。

基本教育、応用教育を終え、さらに学びを進めるために、実践教育に進む人がいる。ちなみに、余剰人にあるためには、この実践教育を終える必要がある。

実践教育では専門とする分野を選択し、実践的な訓練を行う。仮想世界で過去の記録を再現し、その中でひたすら実戦経験を積んでいく。頭で考えている内は合格できず、体が自然と動いてしまうくらいまでトレーニングをするのである。

そうすることで、その分野の職場に行けばいつでも動けるようになるのである。

教育の余剰人になるためには、基本教育と応用教育で必要な実践を行う。基本教育では全ての科目の教育ができるようにトレーニングを行う。応用教育では自分の専門とする科目を3つ選び、トレーニングを行う。他に担任業務などその他の業務に関しても実践的に学んでいく。このようにすることで、どの教育施設に行っても通用するようにするのである。

このトレーニングに標準的な年数の決まりはなく、どれくらいでクリアできるかは人によって異なる。仮想空間の中で行い、なおかつゴールが見えないこともあり、実践教育に進んだものの最後までやり遂げることが出来る人が少ない。これが、余剰人が増えない原因となっている。

改善の余地のある余剰人制度だが、働き方としては非常にホワイトになっているので、憧れの職業となっている。


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