大竹伸朗展 23/2/5
東京国立近代美術館で開催された大竹伸朗展に、最終日の今日行ってきた。
最終日とだけあって、整理券を配布しており、2時間先まで埋まっているという混雑具合。神保町が近いので、時間を潰すカフェをすぐに見つけることができて、待ち時間は本を読んで過ごした。
ここからはほとんど個人的な記録。
大竹さんの作品は、ゼロから生み出すのではなく、既存のモノとの共同作業とのこと。そのため、こんな感じでモノを組み合わせたり重ね合わせたり、凝縮されている感覚を得る。
記憶 Memory
大竹さんは記憶という行為ないし機能に強い関心を抱いてきた。外部の刺激を取り込み、保存され、必要に応じて再生される。たわいもない印刷物やゴミのようなモノまで、あらゆるものを貼り付け、作品の中に留めていく制作は、それ自体が忘却に抗う記憶術。
時間 Time
”そのときどきに形を変えるものとして「記憶」を捉えている大竹にとって、時間は流れていくのみならず、形を持ち、手触りがあり、あるいは音や匂いを伴う素材のひとつです”
移行 Transposition
半世紀近くの創作活動により作り上げてきた”時間”は、大竹さんが北海道、ロンドン、ニューヨーク、ナイロビ、日本国内津々浦々の旅により、彩りが加えられた。また、身体的な移動だけではなく、大竹さんの作品は切り貼りなど元あった場所から転移させることで成り立っている。
夢/網膜 Dreams/Retina
モノの切り貼りによる制作方法としての”移行”を、物質的でないやり方で試みたのが網膜シリーズ。露光ミスのために捨てられたポラロイド写真が、当時漠然と頭の中に描いていたイメージをあまりに忠実に再現していることを発見。これをさらに傷つけたり引き延ばしたりしてから、その上に透明なプラスティック樹脂を乗せた。どろどろとした質感としての樹脂と、つるつるとした色彩としての写真がそれぞれ独立したまま重なり合った絵画をつくった。質感と色彩が一体化した絵画ではなく、網膜上、もしくは脳の中で移行が生じることでできる絵画。
層 Layer/Stratum
実態のないイメージが重なり合う網膜への関心は、大竹さんの作品が物質の寄せ集めと切り貼りを基本としているから。あるイメージがコピーされ、その上から描画が加わり、切り貼りされ、またコピーされて増殖する。時に膨大な時間を費やされる積み重ねは、物質的な、視覚的な層をなし、厚みや重たさとなって「景」を形成している。
かつてロンドンで見たポスター貼りの職人。ポスターの上にそのままポスターを貼ると時間の経過が蓄積されるとともに、覆われた下層が消えていきながらも気配を残す。その下層の気配こそが重要と大竹さんはいう。
音 Sound
大竹さんが積み重ねる層の素材は物質だけでなく音も含まれる。
会期中限定で、美術館の入り口に宇和島駅の文字が!これも”移行”。
以上。