特別な意味のおにぎり
脳に膿の袋が出来て(脳膿瘍)脳圧が上がり 急遽ドレーンを(排出の為の管)入れる為に頭蓋骨に穴を開けなきゃならない緊急手術が決まった
患部が前頭葉だったから 難しい事が分からなくなっていて 子供みたいな話し方になっていた母
前日に ほんの少し会話が出来て 明日頑張るんだよ!とかそんな程度で 顔を見られれば安心出来た
翌日寄ったら オペが終わった後で まだ寝ていて
食べる事が大好きな母に付き添いの叔母が 手術が終わったら何が食べたい?って聞くと
「おにぎり2個食べたい。」と…
その言葉に 胸がギュッとなって涙が止まらなくなってしまった
母のお店に手伝いに行くのは大抵 昼過ぎからで
パートさんが居ない日は 昼食を買いに出られず食べ損なっている事も多かったから
作業の合間にサッと済ませられるように おにぎりを作って持って行った
いつも炊飯器に残ってるだけの白米を ふんだんに利用してワシワシ握り固めて
パートさんにも笑われる程の 大きなおにぎりのサイズ
それを美味しそうに喜んで食べてくれてた
そのおにぎりの事だ… って思ったら
もう色々と分からなくなってしまった頭なのに おにぎりの中に支え合った特別な時間も記憶されてるような気がして 堪らなくなってしまった
入院してすぐのこれが 最後の会話になってしまう
術後 意識が戻らず 2度と目を開ける事もなく もう会話を楽しむ事も出来なくなってしまった
それでも 耳からは届いていると信じて いっぱい話して聞いて貰っていたけど
目の前に居るのに声が聞けず 一方通行なのは寂しかった