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自分を壊すために選んだ職場でバーンアウトしたってことに今更気づいた

最初にエクスターンシップをし、フルタイム採用された動物病院では、個性豊かで自由な同僚たちに囲まれながら、順調に国家試験合格までこぎつけた。しかし、私は早く有資格者としての経験を積みたかった一方で、状況は思うようには進まなかった。試験合格後も「ルームランナー」という基礎的な担当ばかりを任され、さらに、一番経験豊富でリーダーシップのあるスーパーバイザーがリモート勤務だったため、学びの機会がほとんどなかった。次第に苛立ちや焦りが募り、転職を考えるようになった。そして辿り着いたのが、教育に力を入れていると評判の緊急病院だった。

英語に不安を抱えていた私が、なぜそんな無謀とも思える挑戦をしたのか。その当時の私は、職場で感じていた不満や働きづらさのほとんどを、自分の英語力不足のせいだと言い聞かせていた。ことあるごとに、「英語ができないから」と繰り返していた。しかし、心のどこかでは分かっていた。言葉が不自由でも道を切り開いている人はたくさんいるということ。そして実際、私は英語が原因で大きなミスをしたり、仕事に支障をきたしたことは一度もなかった。つまり、私が不安に駆られていたのは、起きてもいない「英語力不足による大失敗」を勝手に想像していたからなのだ。すべて、私の考え方の問題だった。

何か発言したいと思うたびに、頭の中で何重ものシナリオを展開していた。「日本語だったらこう言うけれど、アメリカではどうだろう。もし親しい間柄で、経験も信頼も十分にあれば、こう言えるかもしれない。でも私はまだ初心者だし、ミスするリスクがあるから……」そうした想像を繰り返し、相手の反応を予測して頭の中が忙しくなり、結局何も言えなくなることもあった。自分ではない自分として生きているような感覚に陥っていた。

そんな自分を変えたい。漠然と、緊急病院で働けば、今の自分を叩き直せると思った。それは、アメリカに移住したいと思った理由とほとんど同じだったのかもしれない。余計なことを考えなくてもいいくらい、忙しく真剣な現場に飛び込めば、ありのままの自分で働かざるを得なくなる。そう思ったのだ。「心がけ」では変えられない思考ぐせを、そうした環境に身を置くことで壊していける。行動し、話さざるを得ない状況に飛び込めば、きっと何かが変わる。いい意味で、自分を壊せると期待した。

緊急病院に勤務開始後わずか9ヶ月で、心身ともに限界を迎え、バーンアウトという形で退職を決めた時、どうしてこんなことになったのだろうと思った。しかし、振り返ってみると、それは私自身が望んで選んだ道だったのだ。自分を壊し、変わるための環境を求めていた私は、皮肉なことにその目的を過酷な形で果たしたのかもしれない。


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