文字供養(ほぼ女子大生 番外編)
30年の時空を超え、シジュウの終わりに
一念発起した通信制大学入学から卒業までの4年間。
約140課題の手書きレポートを書いた。
1課題2000字ノルマ。
単純計算しても、280000字である。
卒業への最終面接試問で集まった同志と、大量のレポートをどうするか?が話題となり、即廃棄する方、努力の結晶と要保管の方、様々な愛で方があった。
私は、生ゴミと一緒に回収され、地域の焼却炉で燃やしてしまうのが、なんとも切なかった。
恋しさとせつなさがあっても、心強さにはならない
終わったレポート達…
この膨大な文字達をなんとか成仏させたいと、
焚き火を出来る場所を探した。
お焚き上げをしてもらえるお寺も探した。
しかし、このご時世、近場で焚き火をしてよい場所は見つからず、お寺に問い合わせるも、お焚き上げに、単位レポートは不可だった。世知辛い世の中だ。
どうにかして、この手で燃やして文字供養したい…
ググった結果、思いついたのは、
キャンプファイヤーだった
なんと、新聞紙から紙薪が出来るらしい…
レポートだって紙だものw
まずは、レポートを解体して
紙吹雪の大きさに、ちぎる。
古畑任三郎のSMAP回で、紙吹雪は三角にかきる!と言っていたとか、いないとか…四角で勘弁してもらう。
BGMは南無阿弥陀。
高校が仏教系(浄土宗)だった。合宿時などご飯前の腹ペコで唱えるので、いまだに覚えている。
途中で、かまってちゃんがやってくる。
時々、読み返しては泣く。
自分の文字や先生のコメントに泣く。
特に再、再、再、再提出した苦戦レポートは、
読み返すたび嗚咽が漏れる。
終わりが見えない…
BGMを1回流した後は、テレビを見ながら、ラジオを聞きながら、ステイホームの間、結局5日間かかってしまった。(親指付け根を痛める)
タニタは いつ見ても正直者だ…
そしていよいよ、1.3kgの紙吹雪は紙薪へなるべく
バスルームへと向かう‼︎
巻く!
浸す!
もみ もみ
♫ペッタン ♫ペッタン
ぎゅう〜 ぎゅう〜 ぎゅう〜〜
できた?できたの??
できましたあぁ〜
ちょっとキミたち 不気味だよ〜
ひとつひとつ
出来上がるたびに
じわじわと味わいが増してくる…
天日干し
あぁ 天日干し
天日干し
昼はベランダ、夜は猫攻撃防止場所へ
往来すること1週間
ドドーン!ついに!紙薪は完成したっ!!
次に問題になったのは[燃やす場所]である。
緊急事態宣言中は、キャンプファイヤー場、バーベキュー場、ほとんど封鎖されているのだ。
解除後に行けばよいと、気長に構えるつもりもあったが、
娘からの[キモい]クレーム発生
壺?何?コワイ…宗教やセミナーに勧誘されてないのか?
文字供養の意味がわからない…
大学のレポートぐらい、フツーに捨ててよ…
安達祐実のドラマではないが、フツーに捨てられない気持ちが、娘は理解不能らしい。
早めに燃やした方が、家庭内平和が保てると
少しづつ緊急事態宣言が解除になるのを待ち
検索したバーベキュー場に一軒づつ電話をかけた。
『バーベキュー初心者で、手ぶらお任せセット希望。
紙薪を持ち込んでいいですか?』
相手側の【かなり怪しい客だね…】対応をされながらも、ついに、
《あ、燃やしたいものあるのですね、いいですよ》
紙…いや、神対応のバーベキュー場を見つけたのだ。
本日は晴天なり
山奥のひっそりとした東屋に到着
途中の車酔いアクシデントを超え
峠を超えやってきた。
点火式が、賑々しくおこなわれ
ひっそりとした東屋で小さく歓声を上げた
燃える!焼く!
ガホッ ゲホッ ゴホッ
最高に けむたい!
そして 食べる!(うまうま)
ちょっぴり涙目で食べ続ける
煙がやたら目に染みるのだ…
四角い紙吹雪が、1枚1枚めくりあがりながら
燃えてゆく (なーーーむーーーー)
やがて、文字達は、灰となった(合掌)
燃え尽きた ついに私の文字達は燃え尽きたのだ。
ほぼ女子大生が4年間書き続けた
レポートの文字供養が終わった。
燃える文字を眺めながら、食べながら、走馬灯の様に駆け巡った思い出は、
これから先の人生100年時代への糧になると痛めた親指の付け根をさすり、静かに心に留めた。
最後になるが、人生初のバーベキューと、紙薪燃やしに付き合ってくれた主人に感謝している。