【ゲームレビュー】The Last of Us Part I - ラストオブアス【アクションアドベンチャー/ホラー】
PS 5コントローラーを使用。原作プレイ済み。※本稿はPC(Steam)版『The Last of Us Part I』のプレイを基に執筆しています。原作版との比較/変更点からくる内容も含まれています。また、『最適化不足』の項目内でコントローラーの設定について説明しています。
あらすじ&ゲーム概要
◆ 数々の作品に影響を与えたアクションアドベンチャーのリメイク作品。少女『エリー』を軍の隔離地域から脱出させる仕事を請け負った運び屋『ジョエル』を操作して、ならず者と感染者が蔓延る荒廃した世界を生き抜こう。
『ラストオブアス』は所謂“ゾンビ”アポカリプスが発生した世界を舞台とした作品だ。寄生菌に寄生され、怪物と成り果てた『感染者(インフェクテッド)』と呼ばれる怪物が世界に溢れている。
怪物が徘徊し、荒廃した世界で、人々はその日を生きる事で精一杯だ。怪物こそ登場するが、本作はホラー作品と言うよりも、そこで生きる人々、主人公達に焦点を当てたドラマ性の高い作品となっている。
アクション面では原作からの追加は特に無く、これといった特徴も無いが、銃を撃てたり、多少の格闘戦が可能で、今ではスタンダードな3Dアクションアドベンチャーなゲーム性になっている。こちらに関しては、後程別の項目で説明しよう。
物語、グラフィックとホラー要素
◆ まず、誤解しないで欲しいのだが『ラストオブアス』のアクションやシステム、その他の要素は良く出来ているし面白い。
だが、登場人物の魅力や物語のドラマ性は群を抜いて完成度が高く、まるでその他の要素がオマケのように感じられる。
プレイすればするほど、ストーリーの続きが気になり、やめ時を忘れてしまうほどだ。
物語の終着点、目的はいたってシンプルなのだが、そこに至るまでの過程や登場人物の内面を表すエピソードがたまらない。
登場人物達が魅力的に感じられる重要な要素として、彼等彼女等が主人公も含めて“完璧”ではない事が挙げられる。
主人公達は時には正しい選択をし、時には罪を犯し間違いもしてしまう。それが間違っていると自分で分かっていても、どうしようもない時もある。
彼等は人間臭く、そこが魅力的で、プレイヤーは自然と彼らの物語に惹かれてしまうのだろう。勿論、筆者もその一人だ。
これらの登場人物達を引き立たせてくれる、本作の舞台を別の項目で“荒廃した”世界と表現したが、人間がいなくなった事で一部の地域には植物か溢れ、以前よりも美しくなっているという皮肉の効いた場所も登場する。
厳密には原作からそうだったのだが、今作は場面の転換や演出で人のいなくなった場所を美しくも残酷に描写する事に秀でている。そしてそこに住む、生き残ろうともがく人々の苦悩や葛藤を表現する事も、だ。
そして人のいなくなった場所には新たな住人である『感染者』が潜んでいる場合も。元は人であった『感染者』は不気味な音を立てながら徘徊をしたり、あるいはただぼんやり“そこ”に佇んでいる。
感じ方は人にもよるが、本作に登場する『感染者』はホラー要素と言うよりも舞台装置としての役割が強いように感じられた。要はストーリー性を高めるための装置だ。
アクションとサバイバル要素
◆ 別の項目でも軽く触れたように、原作と今作ではアクションに変化は無く、銃火器を使った遠距離戦や素手や道具を使った近接戦、ステルスキル等の基本となるアクションを完備している。
ちなみに原作から良くなった点と言えば、アニメーション、キャラクターの動きは更に良くなっており、敵を殴った時のインパクトの表現が抜群に上手い。
本題に戻るが、人の殆どいなくなった世界で各種リソースは貴重で、弾薬や近接戦に使用する道具、これらのリソースには限りがあり、探索を通じて入手/クラフトで作成可能で、プレイヤーが管理する事になる。
こういったリソースの中では銃弾が重要なように思えるかもしれないが、実は時と場合による。
というのも本作の“ゾンビ”にあたる『感染者』の一種『クリッカー』は目が見えないのだが、音に敏感に反応するからだ。このような敵が大量にいる場面では発砲すると酷い目にあう。そこでステルスキルや近接攻撃で対応する事になるわけだ。
一方で銃は人間との戦闘で重宝する。プレイヤーは怪物だけでなく、人間とも戦闘をする事になる。何ならば、人間との戦闘の方が印象に残るぐらいだ。
余談だが、前述したアニメーションと合わせて、SE周りの出来が良く、単純に敵を攻撃した時に気持ちが良いし、アニメーションとSEは『ラスアス』での“暴力”と言う要素を上手く表現する事に貢献している。
グラフィックだけリメイク
◆ 身も蓋も無い事を言ってしまえば、グラフィック以外は原作から殆ど変更されておらず、ゲーム性の変化は無いに等しい。唯一、UIが多少変化をしているぐらいだ。
特にマップの形状やギミックは古臭く、ノウハウの蓄積されていなかった頃の単調な作りのAAA作品のそれだ。アクションに関しては良くも悪くも、前述した通り。
2010年代から今まで、プレイヤーが外界から隔たれた洞穴かシェルターにでも暮らしており、初めて3Dアクションアドベンチャー作品をプレイするのでもなければ、何処かで見たようなお馴染みのゲーム性を味わう事になる。
現代的なシステムやアクションを追加したわけでもなく、皮だけ変えた形だ。原作を持っている/プレイ済みの方はグラフィックに興味があるのでもない限りは物足りなく感じるだろう。
表現規制
◆ 直近でプレイした別のホラー作品と同様に、本作も日本から購入できるバージョンではいくつかの過激な場面で規制が入っている。
一部の表現規制の影響で、本作の世界の残酷さを描写するシーンに説得力が足りていない箇所も。
別のレビューと同じ事を書いてしまうが、規制が入る事によって物語や映像面での印象が変わってしまったり、説得力に欠けてしまう場面が登場する事は残念でならない。物語が重要である本作では特にだ。
リプレイ性の低さ
◆ 全くやり込み要素が無いわけではないが、基本的にはリニアに進行する物語を楽しむ作品である事から、何度もプレイするような作りでは無い。
良くも悪くも、一周目の物語を楽しんでお腹が一杯になる事だろう。
最適化不足
◆ 本レビュー執筆時点では初回起動時のシェーダー構築に時間がかなりかかる。また、グラフィック設定を低にしてもVRAMの使用量が半端ではない。
直近で発売されたいくつかのリメイク作品や同じPS作品の移殖作と比べても、最適化に雲泥の差が生じている。
ちなみに、筆者の環境では発生しなかったが、環境によってはクラッシュが多発したり、ゲーム自体が起動しない現象も発生しているようだ。
また、特定環境ではコントローラー(パッド)を上手く認識してくれない場合もあるが、そちらは『ライブラリ内のラスアスを右クリック→プロパティ→コントローラー項目内の「Steam入力を無効化」』を行う事で概ね解決する。
PS系コントローラーを使用していて、上記の方法でもダメならば『DS4Windows』等の外部アプリを嚙ませる事で解決可能だ。そちらの設定方法は長くなるので割愛するが、設定方法が書かれたサイトもあるので、調べてみると良いだろう。
-------------------【良い点】-------------------
+ 完成度の高い物語と魅力的な登場人物。
+ 上手く舞台装置として組み込まれた世界と『クリッカー』。
+ 今ではスタンダードとなった、基本を踏襲したアクションとシステム。
-------------------【悪い点】-------------------
- グラフィック強化以外の追加要素無し。
- 日本版は表現規制がある。
- リプレイ性の低さ。
- 本レビュー執筆時点では最適化不足。
--------------------【総評】-------------------
新しいアクションやシステムは無く、今では古臭く感じられる作りであるし、PC版は最適化不足と言う十字架も背負って発売された。
それらの問題を凌駕する物語と登場人物の魅力をもった作品である事も確かで、リメイクとしては失敗だと言えるが、原作の完成度に助けられている部分もある。
原作をプレイした事が無く、ゲーム『God of War』やいくつもの映像作品に物語の面で影響を与えた今作を楽しみたいのであれば、プレイする価値はあるだろう。
くどい様だが、ゲームと言うよりも映像作品としての完成度が高いので、購入を検討しているならば、そちら目的で購入をする事をオススメする。逆にゲーム性の面では上記の通りだ。
プレイ動画をアップしているので、本作が気になった方はこちらを参考までにどうぞ。
他にもSteamで発売されている『プラットフォーマー』作品をこちらで:
『ローグライク』作品をこちらで紹介しています:
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