【ゲームレビュー】REDFALL【FPS/ルーターシューター】
PS5 コントローラーを使用。クリア済み。
※本稿はPC(Steam)版『REDFALL』のプレイを基に執筆しています。
あらすじ&ゲーム概要
◆ 『Dishonored』や『DEATHLOOP』等の名作で有名な『Arkane Austin(アーケイン スタジオ)』の新作。
たった一人で、もしくは仲間と共に戦うルーターシューター系オープンワールドFPS。特殊な能力を持った生存者を操作して、吸血鬼たちを駆逐せよ。
本作の舞台はタイトルでもある、マサチューセッツ州の島にある街『REDFALL』となっている。この島は、とある企業の実験によって生み出された超常的な力を持った怪物『吸血鬼』たちと、その信望者であるカルト教団が支配している。
物語開始前に、船で島の脱出を試みた主人公達だったが、強力な吸血鬼に阻まれ、脱出は不可能となった。同じく、その吸血鬼の能力の影響で島の外からの救援も望み薄という状況だ。
この様な物語の流れから、ゲームの目的は島を支配している強力な吸血鬼たちを滅ぼし、無事に島を脱出、あるいは取り戻す事だ。
能力の違いについては別の項目で解説するとして、プレイヤーは能力の異なる四人のプレイアブルキャラクターの中から一人を選び、物語を進めて行く。
語り部が主人公なので、いくつかのナレーション自体は変わるが、物語自体はどのキャラクターを選択しても変わらないので、好きなキャラクターで始めると良いだろう。
また、ゲーム開始画面から新しくキャラクターを作成する事も可能なので、序盤をプレイして気にいらなかったら、別キャラクターで再度始めるといった事も可能だ。
物語は拠点となる建物でメインミッションを引き受け、攻略していく事で進行される。それらのメインミッション以外にも、サイドミッションやいくつかのアクティビティも用意されている。
キャラクターの成長やルーター要素に関しては、レベルアップによるスキルポイントの割り振り/スキルの強化、ルーターとしては各種武器や“アクセサリー”に特殊な効果(以下OPと呼ぶ)が付いているといった具合だ。
キャラクター毎の違い
◆ 協力プレイを前提に開発された節のある本作では、プレイヤーが操作可能なキャラクター達のロール(役割)が明確に決められており、それぞれの能力に特徴として表れている点が面白い。
各キャラクターは二つのアビリティ、大抵は攻撃用と移動用のアビリティを持っている。また、吸血鬼を撃破したり、特定の行動を取る事で溜まるゲージが最大時には必殺技(アルティメット)を使用可能だ。
キャラクター達の能力と特徴を軽く紹介すると以下の様になっている:
『ジェイコブ』:元軍人のスナイパーで、カラスを召喚して敵の位置を『マーク(ゲーム的には、敵はハイライトされる)』する能力を持っている。
また、透明になる能力も持っているので、ステルスからの不意打ちも強いキャラクター。必殺技は敵をロックオンして攻撃する技となっている。
『レイラ』:吸血鬼由来の能力を使用可能な女子大生。傘の形をした盾を作成でき、盾は解除すると敵を攻撃する衝撃波にもなる。移動系のアビリティとして、触れたプレイヤーを上空に打ち出してくれる柱の様なモノを作成可能。必殺技は『吸血鬼』となった元カレを召喚して一時的に一緒に戦わせる技。
『デヴィンダー』:自称『未確認生物&幽霊ハンター』。敵をスタンさせる槍を投げる事が可能で、効果範囲も広め。転移を可能とするビーコンを投げる移動能力を持つ。
必殺技は周囲の吸血鬼を石化させるブラックライト。人間も一時的に怯む。
『レミ』:島の湾岸警備隊の一人。相棒のロボット『ブリボン』が敵を引き付けてくれる能力を持っている。いわゆる『デコイ』系の能力。攻撃技は『C4』爆弾。
必殺技は自分と周囲の味方を回復させるエリアを作り出す事。
上記の様に能力を見るだけでもキャラクター毎の役割が『回復』や『索敵』等の様にある程度区別されていると分かるはずだ。
プレイフィールが異なっているので、別キャラクターでのプレイや協力プレイでは楽しめるはずだ。
ビルドと取って付けたようなルーター要素
◆ さて、前の項目でキャラクターの違いについて解説したが、ルーター系作品としては習得したアビリティや装備のOP等の組み合わせで、所謂『ビルド』を変更して様々な楽しみ方があるのではないかと思っている方もいるだろう。
身も蓋も無い事を言うか、基本的にビルドは無いと思って良い。その理由は今から解説しよう。
まず、手始めに各キャラクターで習得可能なスキルは前の項目で紹介した『基本アピリティ二つ + 必殺技』の三つのみだ。これらは自動的に習得される。
アビリティはレベルアップ時に入手できるポイントをスキルツリーで消費する事で、強化可能だ。この時点で何となく察せると思うのだが、スキルツリーに用意されているスキルは上記のアビリティを強化するモノのみとなっている。
スキル自体の使い勝手は良くなるが、ゲーム性を変化したり、プレイスタイルが変わるほどの物はない。
では、ルーター系作品と言えば各種装備品に付与されている特殊な効果『OP』によるプレイやビルドへの影響が気になると思うのだが、こちらも最悪だ。
各種装備品には5種類のレア度があり、レア度毎に追加で一つ『OP』が付与される形だが、全てのOPは『攻撃力が上がる』『リロード速度上昇』『精度上昇』等の数値が上昇するだけの取って付けたような効果ばかりだ。
他の作品に登場する『レジェンダリー』枠の装備の様にゲームチェンジャー/プレイスタイルチェンジャーな能力は一切ない。
これらの要素から、装備品を集めるファームは意味が殆ど無く、ハクスラとしても下の下といった作りだ。
この要素を更に最悪たらしめている要素があり、それは本作では自キャラのレベルが上がると敵が自動的に強くなる仕様になっている事だ。
これによって自キャラのレベルが上がる、イコール『装備品を更新する必要がある』となる。前述したようにファームはまったくもって面白みがないし、レベルが上がった所でスキルポイントは得られるものの、ビルドの概念もほぼなく、プレイヤーは半ば強制的に装備品を更新するハメになるのだ。
レベルアップが実質的にデバフとなっているゲームはなかなかお目にかかれないが、この作品がその一つだ。
誤解の無いように少しだけ追加で解説すると、実際に自キャラのレベルに合わせて敵が強くなるハクスラ/ルーター作品は存在する。だが、そういった作品は自キャラのビルドや特殊な装備によって自分が強くなっていると実感できるように調整されている。
それが、上で挙げた理由もあり、本作には全くないのだ。
作業感の強い戦闘
◆ 前の項目で説明した理由から殆どの戦闘は、物語を進行する為だけに行っているようなモノである事は前置きしておくとして、その他の点でも戦闘は面白みに欠けている。
本作では通常の銃撃、能力を活用したり、ステルスを行う事が可能であるが、それらの殆どが調整不足で、形だけの作りかけの状態でゲーム内に放り込まれている。
まず、通常の銃撃だが、通常の人間とドンパチをする分には爽快感もあって良いのだが、こと『吸血鬼』相手に関してはスポンジを撃っているような感触でイマイチ気持ち良くない。
超常的な存在である事から怯みにくいといった事は問題ないし、別の作品でも良く見られる現象だ。ただし、そういった作品では視覚的なエフェクトやSEで爽快感を演出したりするのだが、そういった事は本作では行っていない。
唯一、UV照射武器等の吸血鬼専用武器使用時は少しこういった感触が緩和されるといった具合だ。
また、アビリティ/能力を使用した攻撃はピンキリだが、やはりエフェクトやヒット感の作りがイマイチな能力が多い。
ステルスに関しては説明が序盤で入り、あたかも戦闘における選択肢の一つとして提示されるが、『ジェイコブ』以外は無いものと思って良いだろう。
そもそも、本作においては遠くから敵をスナイパーで倒すならともかく、近づいて倒す、あるいは敵をすり抜けるメリットは殆ど無い。
なんなら、敵に見つかると周囲の敵が全て主人公を襲い始めるので、見える範囲の敵は倒しておく方が良いだろう。
戦闘で致命的な点がもう一つあり、それは敵AIの作りが稚拙である事だ。人間型の敵は戦闘中に壁に向かって銃を構えたり、プレイヤーとは明後日の方向を向くのは当たり前で、ショットガンを射程外から乱射してくる事は日常茶飯事だ。
射程外からの攻撃は少々厄介で、プレイヤーにヒットはしないのだが、敵が撃ってきている事からプレイヤーに『近くに敵がいるのか?』とゲーム性とは関係ない余計な確認を取らせる。大抵はこちらからも、敵からも視認できない場所にいる事が多い。
一部の敵がカルト集団である事は事実だが、別の意味で危険な人物達になっている。
全てでは無いが、吸血鬼側のAIにも問題があり、多数に囲まれているのでもない限りは、吸血鬼の周りをクルクル回りながらショットガンを連射する事で中ボス系の敵でも無傷で撃破可能だ。
これらの要素から戦闘周りの作りも“とりあえず形にした”だけという印象が強く、面白みに欠けている。
その他の細かい不満点
◆ ここまで紹介した以外にも作りかけの様な要素が多数登場する。全てを挙げるとキリがないので、直接ゲーム性に関わるような、気になった点をいくつかだけ挙げよう:
①:全体でオープンワールドのマップは二つ用意されているが、一度別マップへと移動すると、その周回では以前のマップには戻って来れない。当然、取り逃したアイテム/やり残したサイド等はプレイ/回収不可となる。
同じように、ラスボスを倒すと強制的に二周目が開始されるので、注意しよう。
②:協力プレイを前提に作られた節がある割には、クイックマッチを搭載していない。フレンドがいる方なら良いのだが、いなければオンラインマルチ(笑)となる。フレンドは別売りだという事を開発元は知らないようだ。
③:こちらの動きを阻害/拘束してくる攻撃を行う敵が登場する。おそらく、協力プレイを前提にした攻撃だと思うが、ソロプレイ時にはストレス以外の何物でもない。ちなみに、強いわけでは無い。
④:メニュー画面から開くマップ画面では、一部必要なUIが無い。また、操作性も異常に悪い。
⑤:ただでさえ挙動が可笑しい敵達ではあるのだが、たまにバグって更に可笑しな挙動を取る。サーカスで覚えたのだろうか。
⑥:ストーリーテリングが稚拙で、物語のいくつかのテーマが異常に分かり辛い。ネタバレになるので詳細は伏せるが『人間にも怪物がいる』『元から内面が怪物だったものが、怪物の外見になっただけ』等といった『人間こそ真の怪物=人間の恐ろしさ』が一つのテーマなのだが、恐ろしく分かり辛い。
⑦:戦闘中や特定行動を取った時に自キャラが発言をするのだが、種類が少ない。同じセリフを繰り返すため、少々ストレスに感じてくるほどだ。
⑧:厳密には別の名称ではあるが、一部のサイドミッションはメインミッションを進めるために攻略しなくてはならない。メインミッションという表記で良かったのではないだろうか。
⑨:オープンワールドではあるが、アクティビティの種類が少なく、死に体の大きなマップになっている。ハクスラ周りの問題を抜きにしても、収集物こそあるが、探索する意味や要素は基本的にない。チェックポイントを見つけるぐらいだ。
⑩:アクティビティの一つに範囲内の敵を強化する、敵の拠点の様な『吸血鬼のネスト』という場所があるが、報酬のアイテムが他でも入手でき攻略する意味が殆ど無い。そのわりには、別のクエストと場所が重なっており、攻略しておかないと邪魔になので、半強制的に攻略する必要がある場面も。
等々、他にもあるがこのあたりでやめておこう。
最適化不足
◆ 最近のAAA作品ではお約束となった要素だが、本作も最適化不足となっている。ちなみに、筆者は自分ではプレイしていない事は書いておくが、本レビュー執筆時点ではコンシューマー版は30fpsでのみ動作しているようだ。60fpsモードは公式が追加すると明言している。
PC版の話に戻るが、環境にもよるが、かなり高頻度でfpsが上下する。そのおかげで、一部のシーンでは敵の頭などの弱点となる部位をエイムする事が至難となっている。
グラフィック周りの設定である程度改善する事は可能だが、全く変化しない場合もあるので注意だ。また、筆者の環境では1度しか発生しなかったが、クラッシュが多発する場合もあるようだ。
PC版の最適化周りに関しても、公式が改善すると発表している。
-------------------【良い点】-------------------
+ キャラクターの違い/役割がハッキリしている。
-------------------【悪い点】-------------------
- ルーターシューター系としては装備のOPが取って付けたような能力。
- キャラクター毎のビルドの概念がほぼない。
- 多くの敵は攻撃しても爽快感が無い。戦闘の仕組み/作りが稚拙。
- 致命的な最適化不足。
- 殆ど全ての要素が中途半場で、完成前に発売したような出来。
--------------------【総評】-------------------
ストーリー、戦闘システム、ルーター要素、ビルド要素、協力プレイ、それらすべてが中途半端に実装されており、形だけの“魂の無い入れ物”の様なゲーム性になっている。
どの要素一つをとっても、別の作品でそれらを突き詰めた、あるいは特徴的な作品があり、あえて本作をオススメする事は出来ない。プレイ時に感じられるのは“楽しさ”では無く、“精神修行をしている”という感覚だ。
開発元の肩を持つわけでは無いが、全体的に本作の発売は納期に無理やり間に合わせた印象が強い。上で挙げた要素の全てがポテンシャルがありながらも、中途半端なのだ。
本レビュー執筆時点では、友人と協力プレイを行う予定でもない限りは、楽しみを見出すこと自体が困難な作品に仕上がっている。
購入を検討しているのならば、少なくともアップデートで最適化不足が改善されるまで待つことを強くオススメする。
プレイ動画をアップしているので、本作が気になった方はこちらを参考までにどうぞ。
他にもSteamで発売されている『プラットフォーマー』作品をこちらで:
『ローグライク』作品をこちらで紹介しています:
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