パズーが朝吹いてるやつ。

飛び起きたその足で、家の階段をかけあがった。
屋上の突端をつかみ、一気にてっぺんへとジャンプ。
薄明に、朝焼けの濃い方を向いて立ち上がると、冷めた風が心地よく自分を包みこんだ。
眼下には、レンガで模られた街のみはらし。
その奥に草原が広がっている。


みはらしの東側、奥の奥。
薄青くかすむ稜線のむこうから、白みを帯びた日差しが伸びてきた。
それが、夜の霞をまたたくまに追い払う。

草原では白い光が散り、散った光は短冊のようにあざやかで、足元では街が朝靄の中で色づいてゆく。
光の白線に触れ、朝の熱を感じた。

さて。
どこからともなく取り出したのは、使い慣れたトランペット。
マウスピースを口に当てた。
起床したばかりの自分の唇は、まだ固くて凝りが抜けていない。

が、鳩がもう飛び出していた。

ウォーミングアップはほどほどに、唇をふるわせて今日も夜明けを知らせよう。



🎵

おはようございます。
毎週日曜日の朝にいいかんじの音楽を語る、『にちようびの音。』です。

ひさびさのジブリ劇伴ですね。
今回はラピュタのアレです。
パズーが朝吹いてるやつ。

このエッセイをはじめたときから、いつかコレは紹介するんだろうなァと思っていました。
ラピュタを視たことがある方にとってはすでにお馴染み。
物語の序盤、パズーが起き抜けに演奏していたトランペットの曲ですね。

ラピュタを熱心に視聴していた当時は、この曲を誰が作曲したのか、演奏しているのは誰かなんて、考えもしなかったなァ。
そんな単なるイチ視聴者でした。



🎵🎵

今回紹介した「パズーが朝吹いてるやつ」ですが、この曲は久石譲さんの作曲です。

ジブリのサウンドトラック『天空の城ラピュタ 飛行石の謎』においては、『スラッグ渓谷の朝』という曲名で収録されています。
該当のトランペットのシーンは後半から。

ウェブの演奏動画や楽譜だと、トランペットのパートだけを取り、『ハトと少年』という曲名で浸透しています。

Youtubeでも検索をかけるとパズーの姿勢や舞台の雰囲気をオマージュした演奏動画がいっぱいヒットしますよね。

あまり音楽に詳しくない自分としては、「パートだけ抜き取って別タイトルとかアリなんだ……?」と、おもしろい気づきでした。

そんなパズーのトランペットですが、作中のシーンを担当されたのは、有名なトランペット奏者である数原 晋さんという方です。

歌謡曲やアニメ、演歌など幅広いで活躍されていた方ですね。

ルパンシリーズや必殺仕事人シリーズのトランペットもこの方が担当されたのですが、個人的にはワンピースやサクラ大戦、機動戦士ガンダムの「颯爽たるシャア」のトランペットもこの方がされていたとかで、本当にファーストコールの奏者だったんだなァという印象があります。

きらびやかな高い音!
なんとも格好いいですね。

寝起きの朝っぱらにあれだけ高音を伸びやかに吹けるパズーはトランペットの才能が輝いている、というのが今も語り草です。



🎵🎵🎵

『天空の城 ラピュタ』、もう何回視ているかな。
『金曜ロードショー』で放送されている分もカウントすると、もう数え切れないですね。

特に好きなシーンは、パズーたちがフラップターで出撃してシータを一気に助け出すまでの一連のシーン。
作画と劇伴が間断なく盛り上がっていき一気に救出のクライマックスへとつながる躍動が爽快。

余談ですが、なんとなく冬の映画のイメージがあります。
なぜかというと、私が高校生の頃、クリスマスシーズンの金曜ロードショーにラピュタが流れていたからです。

当時、私が通っていた高校は割と風紀が厳しいところだったのですが、クリスマスシーズンになると「浮かれて街に遊びに出ず、家族と家でラピュタを見ていろ」などと学年集会でしばしば言われ、クリスマスに家で過ごすことは「ファミリーラピュタ」と呼ばれていました。
真面目な高校でもあったので、体感で生徒の9割以上はファミリーラピュタです。
余談ですが、なぜか年末の集会場所にかぎって体育館ではなく学食前のピロティ。さむい!


🎵🎵🎵🎵

さて、最後に余談を挟んだ『パズーが朝吹いてるやつ』ですが、いつ聴いても清々しく楽しい。
好きな曲。

素敵なトランペットも聴けたことだし、今日はどんなにちようびにしましょうか。

それでは、みなさんもよい一日を。

いいなと思ったら応援しよう!

ななくさつゆり
最後までお読みいただきありがとうございます。 今後も皆さまの読書体験に貢献できるよう活動を続けてまいります。 いただいたチップは創作の活動費に充てさせていただきます。 何卒ご検討をお願い申し上げます。