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本の感想 殊能将之『ハサミ男』

ジャンル:ミステリー、現代日本

殊能将之氏の著作『ハサミ男』を読了したため感想を書く。

重大なネタバレはしないように、思ったことを殴り書きしている。

※ネタバレは避けてるつもりです



あらすじ

美少女を殺害し、研ぎあげたハサミを首に突き立てる猟奇殺人犯「ハサミ男」。3番目の犠牲者を決め、綿密に調べ上げるが、自分の手口を真似て殺された彼女の死体を発見する羽目に陥る。自分以外の人間に、何故彼女を殺す必要があるのか。「ハサミ男」は調査をはじめる。精緻にして大胆な長編ミステリの傑作!

殊能将之『ハサミ男』講談社文庫,2002年


『どんでん返し 小説』で調べると上位に出てくるこの作品、ずっと読みたいと思いを馳せていた。
 本屋でやっと新品を発見したため会計へ一直線。


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感想

あらすじにある通り精緻な作品だと感じた。
純粋に面白かった。読み直しを進んでするほど惹かれるものがある。
コレ伏線っぽいな、なんか違和感あるな、といったこちら側で感じ取れる部分は感じ取れるのだが、その「ん?」の回収の仕方がとてもきれいで気分が良い。
「わたし」側で話が進むときの、頭の回転の良さが読んでいて気持ち良い。こっちも賢くなった気分。
警察署側でのわちゃわちゃ感も非常に好き。古き良き捜査パートというか、おぉ〜がんばれ!と応援したくなるし、カッケェー!と胸が躍る。
見当違いの予想をしていたため、結末は驚き続けていた。「はぁ〜」「へぇ〜」が漏れ出ていたはず。人前で読み終えなくてよかった。
ただ謎が残る点もややあり、万事解決エンドとも言えないため不完全燃焼感がある。そういう空気感は嫌いではないけれど。


作品概要

「わたし」視点と警察視点で繰り広げられる緻密な現代ミステリー。
「わたし」はつまりハサミ男であり、警察は連続殺人犯であるハサミ男を追っている。
ハサミ男が自身の模倣犯である真犯人を突き止める探偵役として、警察はハサミ男の新たな事件を解明し逮捕に向けて、そらぞれが頑張っちゃう話だ。
あれもこれも伏線で、読んでいる最中「おや?」と思う場面もたくさんある。その違和感を抱きながら読み進める楽しさ。良い。
グロすぎエロすぎといった描写は多くないが、自殺行為の描写は多いため注意が必要かも。

いろいろ書くと重大なネタバレをしてしまいそうだ。
自分の理解のために警察側の主要人物を書き起こす。
・磯部龍彦
警察側視点で主に奔走する下っぱその①
かなり整った顔立ちをしているらしい
愛称は『坊や』
・下川宗夫
小柄な巡査部長
刑事課全員から好かれている
愛称は『長さん』
・村木晴彦
天然パーマの先輩刑事
かなり頭のキレる人
・松元順三郎
尋問が上手いベテラン刑事
刑事課唯一の喫煙者
・進藤誠斗
磯部の後輩である下っぱその②
カメラでの写真撮影を得意としている
・上井田嘉暁
とても礼儀正しい警部
禿頭と顎髭の持ち主
・堀之内靖治
犯罪心理分析官のエリート
愛称(陰口)は『マルサイ』
・捜査一課長
ハサミ男関連事件の総責任者
ブルドッグに似ている(村木談)


星づけ

読みやすさ:★★★★☆
かなりテンポよく読み進められる。ただ「ん?」を抱えたまま次の場面にいくため、慣れは必要かも。
登場人物の魅力:★★★★☆
どのキャラも活きていて愉快。ただもっとハサミ男の深掘りがほしいと思ってしまった。もっとカッケェ場面をみたい。ミステリアスだから良いのかもしれないけれど。
そういうことか:★★★★★★★
最後は、あの場面はこう繋がるのか!これってそういう意味だったのか!の繰り返し。一筋縄ではいかない結末が待っていた。


最後

シリアルキラーの魅力が詰まったミステリー、『ハサミ男』
結末だけでなく、随所随所の描写も惹きこまれ、間違いなく面白い作品だった。
まだ読んだことのない人は、ぜひ駆け抜けるようなどんでん返しを体験してほしい。



閲覧ありがとうございました。

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