お久しぶりです

まだ暑いけれどそろそろ一つの季節が終わろうとしている。蝉の声も少しずつ減ってきましたね。

今まで過ごした散々な夜について綴ってみようと思います。

紅葉をみにいったことがある。
地元の有名な場所だったけれど紅葉を見にわざわざ行くのは初めてだった。
いくつか前のバイト先で出会ったひと。
どうして仲良くなったのか、もう憶えていない。
憶えているのは、そのひとの大きな車で、駐車場に停められなかったこと。
激混みな駐車場から、やっと空きを見つけたと思えば、それはずいぶんと端で、そのひとの大きな車はとても擦りそうだった。
駐車場管理のおばちゃんが、窓を開けなくても聞こえるくらいの大きな声で、もっと右にハンドル切って。と吠えている姿をみて、人の駐車にずいぶんと熱心なんだなと助手席で失笑していた。
こんなに駐車が下手ならわたしが運転したのになと思ったことも憶えている。
おばちゃんのおかげで無事に駐車を終え、言の葉の庭に出てきそうな木の椅子と、雨よけを見た。言の葉の庭に出てきそうな椅子がある。そう伝えてみたのだけれど、ああ知らないわ。映画?と返答が帰ってきた。
そこでわたしの中の何かがプツッときれた。
別に全人類が言の葉の庭を知っていろとは思わないし、そんなことは不可能に近い。わたしだって知ったのは高校二年の頃だし、たまたまそのあとに、高校二年のクラスのなんかの教科の先生が見る時間をくれたらしい。

らしいというのも、わたしはその教科をとっていなかったような記憶があり、友人に授業でこの映画を観たとあとから聞いたときは心底その先生を尊敬したものだった。

この映画を観た友人が映像を綺麗と言い、言の葉の庭から何かを得る感性、わたしと一緒だ。と勝手に嬉しくなっていた。

時々、その友人のことを想う。ひとりでは眠れないんだととんだ馬鹿げたことを言う友人。その言葉が深く刻まれていて、いつかひとりで過ごすことの心地よさを感じてくれていたらいいな、なんて考える。わたしの街で雨が降っている頃、あなたの住む街はそろそろ雨があがっているかな、なんておもう。
言の葉の庭の聖地である新宿御苑に去年行った。外国人が、言の葉の庭の劇中の写真を見せながら、I want you to take a picture like this.と言ってくれたとき、日本に生まれて良かった、と思った。


わたしは雨が好きだ。雨を好きになった理由も、言の葉の庭が深く関わっていると感じる。
雨は光を通す。
雨は黒い髪を透かし、美しい光で染めてくれる。
濡れた服に降った証を残す。
雨は涙を隠してくれる。
街は雨が降るとじっとりとした独特な雰囲気に包まれる。
雨は植物たちの緑を輝かせる。

夜、車の中から見る雨粒は車の中のふたりに語りかけてくるように感じる。身体を雨粒柄に染めてくれる。運転席をみると、その長い腕も雨粒柄に染まっていて、確かに存在しているんだと実感する。

雨が降っていて暇な夜があれば、助手席に誰かを乗せて雨粒柄を見つけてみてください。結構な暇つぶしになりますよ。

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