アラスカ1人旅記録 vol.14



(前回の続き)
今日中に川を見つけるため、
再び歩き始めた私は、背後を何度も振り返りながら山ちゃん(南に位置する山)がいる事を確認する。
油断すると私の左側に、お次は右にと、
いかに私がまっすぐ歩けていないのかを教えてくれるように山ちゃんは居場所を変える。
「ちょっと山ちゃん背後だってば!」
と山ちゃんにツッコミを入れながら方角を正して再び歩く。

それにしても寒い、そして心細い。
雪もちらちら降っている。
もう2時間は歩いただろうか。
全く景色が変わらない。
油断するとあの「死ぬかも」という恐怖が襲ってきそうになる。
この方角は間違っているのかもしれない。
もしかしたらもうかなり時間が経っていて、帰りのバスに間に合わないかもしれない。
もういっそ石でSOSを書いてヘリに迎えにきてもらおうか。
でもそんな事して見つからなかったらこの寒さの中、食料も尽きて私は死ぬだろう、、。

死と隣り合わせというのはこんな感覚なんだな。
日本にいた時は知らなかった。
俺ってちっぽけなんだなぁ。

結論が出たら、その後は考える意味はあまりない。
アラスカの旅で学んだ事だ。
よし、歌おう。
私も一応ミュージシャンの端くれだ。
音楽に助けてもらおうじゃないか。

とにかく歌った。
色々歌いすぎて何を歌ったかあまり覚えていない。
ただある歌のこの歌詞を歌った時、
遭難中で唯一泣きそうになった事を何となく覚えている

"僕らはまだ先の長い旅の中で
誰かを愛したり忘れたり
色々あるけど
いつの間にかこの日さえも懐かしんで
全てを笑うだろう
全てを愛すだろう"

4時間ほど経ったのだろうか。
肉体的にも精神的にもかなり追い詰められた頃、私の右側で何かが崩れ落ちる様な音がした。
何だろう。動物だろうか。
それにしては断続的な微かな音だ。
こういうのを一筋の光明、というのだろう。
「水じゃね、?川じゃね、、?」

もうそこからは全力ダッシュである。
どんどん音が大きくなってくる。
淡い期待は徐々に確信を持ち始める。

草や枝を掻き分けて、
やっと、やっと私は
想像していたよりも遥かに巨大な河を目にした。
しかし何だろう、私は思っていたよりも山の方にいたらしい。
河は100mも下を流れていた。
私in崖。。
でもとにかくよかった。
本当によかった。
首の皮一枚繋がった。
人って極限状態だと嬉しくても泣けないんですね。
座り込むんですね。力が抜けて。
へなへなへな。って感じでしたねこの時。

雪も割と本格的に降ってきたタイミングだったので、
すぐにテントを設営。
軽くご飯を食べ、濡れたものをできるだけ拭き、寝袋を濡らさないようにした後、私はすぐに眠った。

次回、崖の上のタロの橋探し🐟
(絵本の題名みたい)

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