京都サンガF.C. 2025 明治安田J1リーグ 独断マッチレビュー【第4節 AWAY vs川﨑フロンターレ 3.1 SAT.15:00K.O.】

京都サンガF.C. 2025 明治安田J1リーグ 独断マッチレビュー

【第4節 AWAY vs川﨑フロンターレ 3.1 SAT.15:00K.O.】

試合結果 〇:1-0
前半 0-0
後半 1-0
(得点)
後半4分 奥川雅也〈京都〉

(スターティングメンバ―)
GK 太田岳志
DF 佐藤響
DF 鈴木義宣
DF 宮本優太
DF 須貝英大
MF 福岡慎平
MF 平戸太貴(77分OUT)
MF ジョアン・ペドロ(46分OUT)
FW 奥川雅也(72分OUT)
FW ラファエル・エリアス(90+1分OUT)
FW 原大智

(交代)
MF 川﨑颯太 (46分IN)
FW 平賀大空(72分IN90+1分OUT)
MF 米本拓司(77分IN)
DF パトリック・ウィリアム(90+1分IN)
MF 松田天馬(90+1分IN)


8年間で4度のリーグ優勝をもたらした鬼木達監督から長谷部茂利監督へと代替わりした川﨑フロンターレは、ここまで公式戦無敗と好調で、監督交代の影響を感じさせていない。名将から名将へと引き継がれた印象で、対戦相手はクラブチームとしての厚みを持つ。そんなAWAYゲームながらしぶとく勝利し、サンガは今季初勝利を飾る。

前節の神戸戦に続く幸運と呼ぶべきは対戦相手が長い連戦中で、川崎のスターティングメンバーは前節から10人が変更されていた。それだけのローテーションを組める実力があることの裏返しとも言えるが、サンガにとってはポジティブな展開だった。京都はセンターバックの宮本優太、インサイドハーフのジョアン・ペドロ、最前線の奥川雅也がそれぞれ前節のスタートメンバーから入れ替わる。宮本は今季初のセンターバック、ジョアン・ペドロは初のインサイドハーフでの出場。奥川は水曜日の試合でのコンディションから、ベンチ外も有り得るかと個人的には予想していたが、スタートからピッチに立つ。こういった采配は曺貴裁監督の腕というべき点かと思う。マルコ・トゥーリオの負傷の裏で、今季の中心となるべきチームエースのコンディションを強制的にでも仕上げるべく、しっかりと試合に使っていく。


川崎はバランスを取りながらもパスを繋ぐサッカーなので、京都のスタイルとは相性が良い。前節の神戸のように中盤を省略して前線に当てられてしまうと、京都はFWを深く下げざるをえず自陣でのプレー時間が長くなる。それよりは川崎のようなスタイルの方がやり易いと言える。ただそれでもパスワークでプレスを剥がされてゴール前まで迫られるシーンはある。センターバックで出場の宮本は高さこそ無いが、粘り強く対応でき、パスの質も良い。相手FWの身長や体格がそれほど脅威で無い場合には良い戦力となりうるし、今季も他のDF選手と交代しながら出場するのではと思う。開幕戦で出場したサイドバックのプレーでは裏を獲られるシーンが気になった。そのあたりの調整が出来て、CBとSBの両方での活躍があれば理想ではある。


後半4分の得点は、第2節の京都の失点シーンを思い起こさせるようだった。川崎のメンバーでは前節から唯一連続で出場していた橘田のバックパスをラファエル・エリアスが拾い、中央の奥川にラストパス。奥川雅也は危なげなくゴールへ流し込む。やはりここまでの今季の得点は全てラファエルが作っている。この得点は彼自身でシュートまで持ち込むことも出来たかもしれないが、より確実な奥川を選択するという判断、パスのタイミングとコース、簡単に見えるようであれだけ正確な動きができるのは一流の選手だからこそである。奥川雅也は今季初先発で初ゴール。プレー全体を通してはまだ仕上がっていなくとも、早くも結果を出すところはスター選手の片鱗なのだろうと思う。曺監督の起用とサポーターの期待に応える、彼自身のJ1初得点となった。


追加点を奪うことが理想ではあるが、それほど試合は甘くない。川崎は失点後即、中盤の選手を3人入れ替える。交代出場した家長昭博の決定的なシュート等、危ないシーンをやり過ごす。少なくない京都のサッカーファンが想っている事。家長昭博は現役の間にサンガでプレーする事はないのか。Jリーグ最優秀選手賞の受賞歴もある元日本代表選手が地元の京都でプレーする姿を私は観たい。今のサンガの戦術と合うか合わないか、という問題はあるにせよ、おそらく残り数年の現役生活の中でそんな選択肢は無いものか。これはただの一ファンの願望である。


試合は前節と同じく1-0で終盤まで進む。ラストプレーで失点した直後のゲームとして、サポーターの最注目はこの部分だった。


ゲームの最終盤を3センターバックにするのが曺監督のスタイルであり、この日も最終的にはパトリック・ウィリアムを投入し、センターバックが3枚になるが、前節と違ったのはアディショナルタイムまでその変更を遅らせた事だった。3センターバックになるとディフェンスラインは5バック気味になり、後ろの守備が厚くなるぶん前線や中盤のプレスが落ちる。サッカーでは守備を厚くしたからといって失点が無くなるわけではなく、逆に守備の時間が増える事で失点するというパターンがある。前節を含め、サンガにもそういった失点がこれまでにもあった。5バックにする時間を極力短くし、前線でボールをキープする選択をしたことで、結果的にこの日は無失点で抑えきり、守備を完遂した。


こういった結果を見る限り、最後まで4バックで通すのが最良なのではないかという意見もある。個人的には3センターバック(5バック)にする事が必ずしも悪手だとは思わない。おそらくサンガのハイプレス戦術は90分間を通したもので想定されていない。これまでの交代のタイミングを見ると75分か、そのあたりだと思う。逆に言うと、90分間は継続困難なレベルのプレスを75分間かけると言うことである。選手の体力を考慮すると残りの15分は少し違った守り方をするのが必然で、それが3センターバック(5バック)という事になる。

だが難しいのは、4バックから3センターバック(5バック)になる時に選手がスムーズに移行出来るかという点。75分間で出来上がったリズムを、ある瞬間から完全に変えるというのは意外と難しく、少なくとも綿密な事前のミーティングや当然ながらその練習が必要となる。前節の失点ではオフサイドラインに今季加入の須貝が残ってしまった。そういったところを見ると、第3節時点でそこまでの綿密な取り決めがなされていない様に見えた。この日は交代のタイミングを遅らせた事に加えて、その部分の調整もされていたと思う。中2日間というスケジュールの中で、監督を筆頭に選手やスタッフはそういう打ち合わせをしているのだから忙しい。そういう意味でもこの勝点3は本当に有意義だ。


次の福岡戦の重要度は、今季の前半戦を左右するものだと思う。開幕戦に敗れたものの悪くない内容で2試合引き分け、今節では勝利。そして次の相手は実力的に大きな差が無い。この展開でのHOME戦の結果は、その後の流れを作る。単純な勝点3というイメージではないし、内容より結果が問われる一試合になる。


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