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NVIDIA、対中国半導体輸出規制により中国AI半導体市場への参入困難に

AI関連の米国株、物凄い勢いで上がっています。
先日、NVIDIAは株式分割で買いやすくなりました。
私もブームに乗り、NVIDIAの株を少しだけ保有しています。

今回は、安全保障輸出管理の視点からNVIDIAについて調べました。
恥ずかしながら、個別株を買う前に把握できていませんでした。




米国の対中国半導体関連の輸出規制強化

米国の対中国半導体、スパコン関係の規制強化が行われている事はご存じでしょうか。
米国の輸出規制は、従来は「軍事用途」が対象でしたが、民生用途品でも軍事転用が可能なことから、中国での「先端半導体製造、スパコン用途」という「民生用途」もここ数年で禁輸対象となりました。

リスト規制

米国輸出規制ではCCLといわれるリストに具体的な貨物を列挙し、規制を行っています。
昨今の規制強化に伴い、先端 IC・先端 IC 製造関連(半導体製造装置関連)もこのリストに追加されています。

エンドユース規制

・スパコン関連エンドユース規制( § 744.23(a)(1))
・IC( 集積回路) 関連エンドユース関連規制( § 744.23(a)(2))
   (i) 先端IC 関連エンドユース規制( § 744.23(a)(2)(i))
   (ii) 先端IC を製造しているかどうかを知りえない場合のエンドユース規制( § 744.23(a)(2)(ii))
・先端コンピュ―ティング品目関連エンドユース規制( § 744.23(a)(3))
・半導体製造装置関連エンドユース規制( § 744.23(a)(4))

このような用途による規制が2022年頃から現在に掛けて、次々新設されました。
従来は、軍事用途でなければ輸出できましたが、このエンドユース規制により中国ロシア等には半導体関係は輸出に制限が掛けられています。
エンドユース規制に該当する貨物を輸出する場合は、米国商務省の許可が必要です。

制裁リスト(Entity List)

上記のエンドユース規制だけでなく、中国の半導体関連の企業は続々と制裁リストに追加されています。
このリストに追加された企業に輸出するには、米国商務省に輸出申請が必要ですが、原則不許可となります。

ざっくりまとめますと、リスト規制、エンドユース規制、制裁リストの三重体制で中国に半導体関係の貨物が渡らないよう、米国は規制をかけているのです。


NVIDIAに対して米商務長官が非難(2023.12)

昨年末、レモンド長官がNVIDIAを名指しで非難したとの報道がありました。

NVIDIAは、これまでリスト規制で定められているスペックを下回る中国用の特別設計のチップを販売してきました。
23年10月、この中国専用品も規制対象に追加されたのが事の始まりです。

これに対し、NVIDIAは中国向けにまた新しい半導体を23年 年末までに提供できる可能性があると公表します。

米国商務省の主張

中国向けの特別設計のチップを再設計しないように、と23年12月に米国商務省はさらに警告を出しました。
特別設計をしても、翌日すぐにその仕様も規制対象にする構えです。
これにより、NVIDIAは中国向けのAI半導体を作っても即封じられてしまいます。

中国でも利益を上げたいNVIDIAと、国家安全保障の為に中国にAI半導体を渡したくない米政府。
米政府はさらに対策を講じます。

24年4月にNVIDIAの中国におけるデータセンタプロバイダーの会社 SITONHOLY(Tianjin) Co., Ltdを、制裁リスト(Entity List)に追加したのです。
先述した通り、制裁リストに掲載されれば、輸出許可申請をしても原則不許可になります。

これにより、現在、中国企業はNVIDIA製の規制対象品およびその代替品を入手するための流通経路を失いました。

中国AI半導体市場での規制回避競争(2024.1-4)

中国のAI半導体市場は70億ドル規模で、そのうち9割超をNVIDIA製品が占めていたらしいです。
規制強化された24年以降は、中国市場での売り上げは苦しい状況になるでしょう。

24年1月から3月までは、NVIDIAは規制を回避すべくもがいていました。
詳細は下記ニュースをご確認ください。

第一弾、第二弾と規制回避品を出荷している情報が出ています。

その後、米国政府とNVIDIAの規制対決は、4月の中国データセンタープロバイダーの制裁リストへの掲載をもって終結します。
しかし、このような続報もあります。

規制されたはずが、どこからか流通しているようです。
この流通させた犯人は、米国政府に制裁されると思います。
日本企業が迂回輸出で関与していないといいのですが。


私見

NVIDIAが1-3月に規制回避品の出荷をしていた姿勢から、中国AI半導体市場を諦めたくない事が伺えます。
輸出管理で仕事をしている人間としては、NVIDIAの姿勢は強気だったなと感じます。
しかし、ニュースでは3月の第2弾までの情報で、4月以降に第3弾というのは出てきません。
流石のNVIDIAも、AI半導体の流通経路を封じられたら諦めざるを得ないと思います。

米国輸出規制に違反すれば、莫大な制裁金が課されたり、数年間のTDO(輸出停止)も食らいます。
米国政府は大手企業だからといって忖度はしません。
過去にマイクロソフトも制裁金を課された事例もあります。

あとは、規制後に中国に流通してしまったニュースが心配です。NVIDIAが意図的に関与していない事を祈ります。
コンプライアンス体制が気になるところです。

最近「一生一緒にNVIDIA」というのが流行っていますね。
AI半導体は、今後の輸出規制により販売できるエリアが限られてくるビジネスになるのではと個人的に予想しています。
中国AI半導体市場での収入を失った24年2Q決算と、同社のコンプライアンス体制を気にしながら判断したいと思います。

余談

米国輸出規制の改正が多すぎます。
域外適用があるので日本企業の輸出管理部署も無視する訳にはいかず、勘弁して下さい。

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HANA
最後まで読んで頂きありがとうございます。