米国大受験へのアドバイス集
*母校の進路部に2021年春に寄稿した文章と、ここ2年半ぐらいの間に何十人かの高校生の質問に対して行なった回答を、総合的に編集したものです。
*その結果、とっても長いので、すべてを読む必要は皆無です。欲しい情報の項目まで飛んでください。なお、本稿は日本の一条校から米国大受験をする場合を念頭に置いていますが、内容の全てがその限りではありません。
*より多くの質問やエッセイが集まるにつれ、私にも知見も溜まって改訂されていく…はずです。(最終改訂:2023年8月31日)
1.考え始めよう
1.1 受験に必要なもの
①覚悟
リストの最後に置こうと思って書いてから、考え直して最初に持ってきました。覚悟が間違いなく必要です。なにかというと、このnoteを読んで向かおうとしている先は、これまでの人生の延長線上ではない、「隔絶」だからです。海外大の世界は、日本の大学の上位互換でもなければ人生のボーナスステージでもありません。太平洋を飛び、日本社会と良くも悪くもある種の断絶を経験しながら、4年間みっちりと英語で学ぶことです。自分の中で正解だと思っていたことの95%を粉々にされても翔び続けることです。
それでもこのページに辿り着いたなら、これまでの生活でちょっぴり満ち足りないところがあって、とび出してみたい、という気持ちが心のどこかにあるのでしょう。それに素直に従って、世界の洗礼を受けるのがなんだかんだ言って社会のためだと思います。間違いなく成長しますし、どの海外大かに関わらず日本社会を外から見ておくことは不可欠です。ただ一方で、とぶ方法として海外に正規進学することが手っ取り早くはあっても、唯一の方法ではありません。どんな進路でも、どんなタイミングでも、自分の知らない世界にとび出すことはできますし、またそうすることは多くの人に手の届かない特権でもあります。なので、私は「結局進学するかどうかに関わらず、海外大受験・留学を経験することはよいこと」というスタンスで本稿を書きます。後述するように、それまでの人生の全てを魅せて挑む課外活動やエッセイライティングだけでも、十分跳躍になり得ます。
私は受験を振り返ってみると、どんな世界に足を突っ込もうとしているのか全く分からないまま手を動かしていたな、と思います。高校の時点で大学以降の世界を想像するのは不可能に近いですが、自分のことをよく知って、今まで出会わなかったような人たちとたくさん知り合って、目指すものを目指す理由を「決めて」みてください。
それでは、あとは以下のものを揃えていけば受験で勝負ができるでしょう。
②高校の成績
すべてではありませんが、大事です。カナダの大学などでは高校の成績だけで合格をくれたりします。アメリカの大学でも、高校の中でどれぐらいの層だったのか、という点は非常に気にされますし、高校生の間で成績がどう推移したかも重要だと言われています。高1でしくじっても、頑張って上昇傾向に乗せれば評価されるでしょう。
③英語力の証明
TOEFL iBTかIELTS、Duolingoから一つ得点を取って提出する必要があります。受験日程が豊富で普遍的なのはTOEFLでしょうか。IELTSの方が問題の相性が合っていたという人もよく聞きます。Duolingoは受験料が安いのが売りです。私が受けたTOEFLのテスト勉強については3.3参照。
④推薦状
高校の先生数名に、自分の性格や業績について主観的に書いてもらうことで、大学側は学生について一段と客観的な評価を得られます。担任の先生、好きだった授業の先生、課外活動を監督していた大人、などが主な選定基準となるでしょう。具体的なエピソードを書いてもらうことが大事なので、高校時代にあったこととか、自分が今考えていることとかをぜひ共有してください。執筆前に、一度面談することをオススメします。
また、推薦状は、「担当分野」を決めましょう。勉強面、人格面、部活面、などなど自分の色んな側面のうち、どの先生にどの側面を書いてもらうか決めちゃいます。その上で、先生にそれぞれ「◯と△についてなるべく具体的に書いてください」みたいなことを言うといいです。分量は、A4の1ページにぎっしりぐらいかなと個人的に感じます。それ以上あると全部読みたくなくなるので。
⑤SATやACT
TOEFLは受験日程がたくさんありますが、SATは本当に限られているので、受けるなら早めに計画をたてて予約をする必要があると思います。ただ、二年前と少し状況が変わって、SATとかACTの提出を必須にしない大学が増えてきているので、志望校の要件を調べてみてください。SATのテスト勉強については3.3参照。
⑥課外活動
正直、課外活動というのはずば抜けた業績をもっている人が一定数いるので(日本・世界大会で〇〇、学生団体立ち上げた、モノが作れる etc.)、高校の部活で普通に生きていた私のような人は「すごい課外活動」を探すというよりは、やったことをなぜやったか大学の志望理由とともに説明できることのほうが大事です。
難しいことに、一つの活動をひたすらやる部活という形態は(特に大会などでの結果が微妙な場合)、米大学でそもそも評価されにくい気がしています。私はそんなことは気にせず部活に過大なエネルギーを消費したため、「部活はこれだけの時間をかけるだけの価値がある文化だと主張すること」「部活が休みの日にできる活動を他に一つ見つけること」が必須条件でした。エッセイや面接でも部活の話がメインにならざるを得ませんでしたが、本気でやったことにはやはりそれなりの「語る力」が伴ってくるものだなあと後から思っています。何をやるにしても熱意や本気は評価されるようです。私の場合、部活は8月に引退し、週1回のボランティアはその後模試などで休みつつも12月まで続けました。
⑦学費か奨学金
こちらが良記事なので、海外大を考え始めた人にいつも共有しています。
この記事が出されて以降の話として、笹川(日本)財団の参入というビッグイベントがありました。出願できる大学がトップ層に偏っていますが、50人以上にほぼ全額出してくれます。奨学金市場のパイは今後も広がっていくはず。ちなみに私はグルー・バンクロフト生なので、そちらの具体的な話は毎年個人的に伝授しています。グルー・バンクロフトは、笹川の参入を経て支給額を増やす代わりに枠を減らすという対応をとっています。
⑧願書、エッセイ、それはもうたくさんのしょるい
多くのアメリカの大学はCommon Applicationという願書プラットフォームを採用しています。2.2で詳述しています。また、カリフォルニア大学系列は、UC Applicationという独自路線を邁進しています(やめてほしいものです)。そして、エッセイ、そして願書の課外活動欄など、広義の「自己PR文章」については第4章で触れます。
⑨塾について
Route H、AGOS、Crimson Education、Global Learning Center、TOEFLゼミナール… 近年の海外大受験熱で、塾の数だけが増えていますが、依然として東京集中・高額である状況は改善していません。利用できる人は利用して損はないです。合格の確率は間違いなく上がります。ただ、合格に感じる価値と、通うことのコストが比べられるぐらいに感じられるならば、塾は必須ではないと思います。
また、塾の代替選択肢として、HLABや留フェロのサマーキャンプなどに参加し、そこで出会った先輩などの伝手を頼るということもできますし、最後の砦として私も参加しているatelier basiがあります。しかし、どれにせよ受験の全責任は取れません。どの選択肢にもメリットデメリットがあることは認識して活用しましょう。
⑩環境と運
海外大受験は一人ではできません。保護者と高校の協力が必要な場面が頻繁に登場します。跳躍するということは、とぶ先が周囲の人々の想像の範疇でないこともしばしばですから、そういった人々にちゃんと理解を示す必要がある一方で、反対されても挫けず道を拓くことはきっと可能なはずです。自分と他人のメンタルを守りながら挑戦してください。
1.2 日米併願のマインドセット
日本の大学もアメリカの大学も、レベル差が激しいので一概には何も言えません。考えておくべきことを列挙します。
①どのような気持ちで日本の大学を受けるのか
単に海外に落ちた場合の抑えと思って受けるのか、むしろ海外の方を抑えにするのか、両方合格を目指して海外大に行く前の4月から8月までは日本の大学に通うのか。それぞれの志望校を検討する中で、高3になるぐらいまでにはこのスタンスの整理をしてみて、時間配分を考えましょう。
②文理選択をどうするのか
海外では文理を決める必要のない場合も多いですが、日本ではほとんど必ず大学を決める際に文理の区別があります。高3で自分の高校のどのコースを履修するか、は迷うところです。先生との相性の良さ(推薦状の可能性もある)、成績の取りやすさ、受験方式への活かしやすさ、クラスメートとの相性、などを総合して決めましょう。
③私大か、国公立か
私大の場合、AOが使えます。どうせ海外大へのアプリケーションに課外活動は必須になってくるので、海外大への準備からそう回り道せずにAOの準備ができます。また、AOではなく一般入試の場合も、私大は英語+もう一科目ぐらいで受験できる場合は多いです。国公立は基本的に一般に限られる分、少し大変ですが、ここでも英語は本当に万能です。また、指定校推薦、校長推薦の伴う公募推薦、国公立推薦などは基本的にその大学に入学・卒業しなければいけない場合が多いので注意してください(受かってしまったら海外に行けない、ということです)。私は全落ち浪人も許容だったので国立文系+米国大のダブル受験に突っ込みました(親も浪人OKでした)が、海外大を優先するならば日本の大学はAOなどで出すところにした方が「効率」は良いです。
④塾利用について
日米併願をする場合、日本の受験・アメリカの受験、どちらに対しても塾利用はデメリットが少し大きくなります。スケジュール調整が効かなくなるからです。今月はこっちの受験が忙しいのに、模試/SATを受けさせられた、とかの事態に陥らないように気をつけましょう。日米併願(日本が一般受験)の場合、毎週末なんらかのイベント(模試、SAT、奨学金の締切や面接、海外大の締切や面接、課外活動など)があることを覚悟するべきです。私は、9月中旬から8週末連続で何らかの本番がありました。
また、高3になるまで日本の大学受験の準備をしていて、最終学年に入るころにアメリカの大学を本気で考え始めた、という人も多いのではないでしょうか。このタイミングで海外大の準備するのが遅すぎるか、という質問ですが、そんなことはないと思っています。ただし、この時点でそれなりに英語力(ないし馬鹿力)に自信があること、それから高1高2で「それなりに」高校での成績をとってきていることが望ましいです。どちらも海外大受験に必要な要素というのもありますが、特に日本の大学と併願ということになると、なるべく双方の受験方法で内容的に被る部分というのを利用していかないと時間が足りないと思うからです。これは、海外大にも必要な高校の成績で日本の推薦入試を突破するとか、日本が一般入試ならなるべく英語で稼ぐとか、そういうことです。
補論:母校の現役生向け
ここは私の高校の現役生向けセクションなので、関係ない人は読み飛ばしてください。
第一歩
まず、海外大を少しでも考えている人は今すぐM.W先生に自己紹介を。日本語で大丈夫です。そして、考えていることを保護者の方と担任の先生に伝えてください。反対されても挫けなくていいですが、とりあえず伝えておくことに意味があります。(もしかすると、伝えたからこのページに辿り着いたのかも)
このページに書いてあることを読んで、もし「自分には無理なんじゃ…?」と思ったなら、私に考えている進路のイメージを相談してください。母校の生徒に限ってハッキリ言うと、受かる大学は必ずあります。心配なきよう。
成績
定期試験はガチってください。日本の受験勉強にもアメリカの受験勉強にもなるので、やらない理由がないです。成績の数字に関しては、提出時に五段階に直るので、それほど神経質になる必要はありません。が、点を楽しく(悔しく?)競える友達を見つけてなるべく上へ上へと頑張ることをお勧めします。
参考書
図書室にTOEFLとSAT各種・ACTの問題集があります。また、問題はM.W先生もたくさん持っているので、コピーをお願いしに行きましょう。まだ高2以下なら、TOEFL講座もやって損ではないです。
推薦状・スクールレポート
担任 + 好きな授業から一人 + 部活の顧問、が私のパターンでした。スクールレポートは進路部か担任にお願いします。推薦状もレポートも、M.W先生にお願いすれば自分が読むことなく翻訳してもらえますが、ここらへんは時間に余裕を持って準備しましょう。受験する年の夏休み前には推薦状を書いてもらう先生の目星をつけた方がよいです。いつまでに何の書類が必要なのか一覧に書き出して、関係教員全員に配っておきましょう。
添削してくれる先生
大学へのエッセイ(Common App Essayを含む)を読んでもらったのは英語科のS先生やB先生、ライティングラボのTさんなどです。奨学金への小論文を読んでもらったのは、進路部M先生と社会科で私の担任だったK先生です。他にも、自分を良く知っているなと思う先生であれば、内容・構成の相談ぐらいはできるかもしれません。全員が英語の表現をみれる訳ではないので、的を得ていないアドバイスを上手く処理する器用さがこちら側に求められます。もっと個人名が欲しい人は個別に連絡してください。私も書類の添削はできますが、常時10人ぐらいの添削は抱えているのでテンポが遅いときはご了承ください。
2. スケジュールを把握しよう
2.1 春〜夏休み
夏休みは受験の天王山だとかなんとか。一番大事なことは、今後のスケジュールを週単位で一元的に可視化しておくことです。何月に何の締め切りがあって、書類はいつ準備して、日本の一般入試を受けるのなら受験日がいつで、模試はいつで、いつまでにこの科目を完成させる、みたいなのを、すべて一枚の紙にまとめます。全体のスケジュールができたら、担任なり進路の先生なり、受験をサポートしてくれる人にコピーして渡します。週単位以上に細かくある必要はないです。守れない約束なので。
①課外活動
数ヶ月間のプロジェクトを始動するとかでなければ、新しいことを始めるというよりは、今頑張っていることの集大成みたいなところです。秋にエッセイとか自己PRみたいなの書くならば、それの肝になる部分だと思うので。部活の引退とか、校外で頑張ったことの振り返りとか。
②出願先選び(参照:1.2 大学の選び方)
まず、秋の怒涛の出願シーズン前に大学や奨学金の出願先を決めたいです。そして、それぞれにどんな書類とエッセイが必要なのか書き出す。エッセイは書くの秋でいいと思いますが、トピックぐらいは押さえてきましょう。同じエッセイをどれぐらい複数大学に使いまわせるか、が大事だからです。
③アメリカの受験勉強
ついで、なるべく早くテストスコアを揃えたいです。大学のリサーチを英語でしたりして、勉強時間以外も英語を見ているクセがつくとTOEFLとかは伸びます。TOEFL・SATについて3.3参照です。
もし日米併願の場合は、①〜③に加えて
④日本の受験勉強(推薦系は、③が近い)
一般試験については受験科目の多さによるけど、「基礎力を完成させる」「範囲を終わらせる」あたりがキーワード。国数英(国語は特に古漢文)あたりは、秋から過去問解き始められるために基礎固め。社会理科は、秋までに範囲が一周目おわってることを目指すといいです。(ちなみに私は終わっていません。笑
2.2 秋〜冬
実際に出願書類を揃えて提出する季節になります。
出願時期について
基本的に1つの大学あたり2つか3つの締め切りがあると思ってください。10月末日頃までに出願し12月上旬に合否を受け取るEarly、そして1月初旬頃までに出願し3月末から4月にかけて合否を受け取るRegularです。さらに、Earlyは合格を蹴れるか蹴れないかによりActionとDecisionに分けられ、例えば10月31日までに出願し、合格しても入学義務が生じない形式をEarly Actionのように言います。大学により、EarlyにおいてActionとDecisionどちらを採用しているかが異なるため、公式サイト等での確認が必要です。高レベルの大学になると、Earlyではその学校のみに出願することを求めるSingle Choice Early Actionを採用しているところもあります。
Common Applicationの諸項目
いくつかの独自ポータルを持つ大学を除けば、基本的にすべての出願はこのサイト上で完了します。生徒(受験生)側のアカウントと、高校の先生側のアカウントがあり、推薦状などは後者から提出されます。どの先生に協力を仰いでこれをやってもらうか、夏の間にはアカウントを作って決めておくとよいでしょう。
こちらの記事(全部で4本あります)に詳しいです。
エッセイや小論文
大別して①奨学金に出す小論文(日本語が多い)、②上記Common Applicationを通して出願する全大学に共通のCommon App Essay、③各大学が独自に設定するSupplement Essay、の3つがあります。
これらについては、第4章で詳しく書きます。
3. 手を動かそう
3.1 大学の選び方
基準はいくつもあるのですが、例えばいきなり学業面から入ってしまうと、あまりに同じような大学が沢山ありすぎて情報過多になりますので、以下のような順番で考えることをオススメしています。
①まず、どうにもならない絶対条件
一つ一つの大学についての学費・奨学金の見通し、要求される点数のスコア、などは大まかな見当がつきます。さらには、自分の受験スケジュールの金銭的・時間的な面で、いくつの大学に出願できるのか、決めましょう。出願数を決めれば、その中でちょっとリーチしたり、安全圏の大学をつくったり、と工夫することができますし、複数出願するなら、全校うかる必要なんてありません(だから、奨学金団体に求められない限り、受ける大学の中で志望校順位なんて要りません、受かってから考えましょう)。これらは自分ではどうしようもないところなので、単純にたくさんある海外大のなかから絞るのに使いましょう。
②つぎに、場所は大まかに選べそう
ミーハーに行きたいところが大まかにあるでしょうか。アメリカ、カナダ、イギリス、などまずは国単位で文化や物価や日本からの遠さ・直行便の有無などが違います。国のなかでも、地方によって治安や留学生の多さなどが違うので、調べてみるといいでしょう。アメリカは地方差が激しい国の一つです。気候にこだわりたい人もいるでしょう。気温と日光はメンタルヘルスに直結します。
③ついで、環境面
地方の大学、都市の大学、どちらがいいですか?大きな大学、こじんまりとした大学、どちらがいいですか?これらは、接することになる学生や教授の数と密度、それから課外活動をやろうとしたときのフットワークの軽さなどに違いがでます。小さな大学の売りは関係の密度の高さです。都市の大学は、近くに文化施設や企業が多いのが魅力です。個人的には、東京で生まれ育った人で、長期休みで戻る見通しがある人には田舎の大学をおすすめしています。見える世界が全然違うので。
④最後に、いちばん大事な学業面
①〜③は、なんとなく自分のなかで思い描いていたイメージがあるのではないでしょうか。学業面はちゃんと考える・調べる作業が必要なところ、というか自分が欲しいものがイマイチ言語化できていない部分だと思います。特定の学問でやりたいものがあるのか、リベラルアーツがやりたいのか。リベラルアーツの中でも、色々な学問がバランスよく必修になるDistributional Requirementのところ、自分がやりたい科目だけがとれるOpen Curriculumのところなど履修の自由度は様々です。さらには、取りたい特定の授業や教授がいればそれを基準にするのもいいでしょう。各大学のホームページを見て色々と考えてみてください。探し方は後述します。
と、ここまで色々書いてみましたが、
⓪結局、入った大学に適応して自分に一番の行動をとるようになる
ので、あんまり悩みすぎず。悩みすぎるよりは、出願準備にちゃんと時間を割いて、「入りたいかもと思った大学のうち一つ受かればいい」と思います。
3.2 じゃあ具体的にどう探すか
基本的には①ネット検索+②信頼できそうな人の口コミ、です。
(2023年追記:加えてChatGPTに聞いてみたら?笑)
①ネット検索
大学の公式サイトが基本ですが、まずそもそもどの大学を見たら分からんですよね。色々なポータルサイトがあり、場所×分野×学費、で絞れます。ランキングもいいですが、ランクされていないのもありがたい。
また、現実的な話をすると、奨学金財団の対象校を順番に見ていく、というのも戦略の一つです。行くお金がないと仕方ないですからね。「奨学生の声」的なページで体験談も読めます。
財団以外でも、実際の日本人留学生が書いている体験談ベースのサイトが沢山あります。大学だけでなく、学術分野自体についても少し知ることができます。
こういう体験談ものの注意点として、激強な経歴を持つインフルエンサーだけが見えてきて、いやそんなに自分すごくないわ!と諦めてしまわないこと。世間知らず・情報不十分のまま突っ込んだ方が受験は幸せになるきらいがあります。海外大進学は跳躍だと書きましたが、その世界に飛び込んだことで人が変わって強者になるということもあるので、私がそうだったように井の中の蛙で受験するのもメンタル的にあり寄りのありです。(親に浪人の許可を取るなど、それなりのリスクヘッジはしてください)
学業面の一つの考え方として、「興味のある分野に強い大学を探す」という方法があります。例えば、環境問題に興味がある→環境学に強い大学を探したい、など分野別でランキングを探すこともできます。
これらのサイトで何となく大学の目星をつけたら、それぞれの公式サイトやYouTubeを見て雰囲気を掴みましょう。
少し見つけにくいこともあるのですが、卒業要件(Degree Requirements)やCurriculumの情報、学生層の統計などを見ていくとある程度比べられます。他の作業に疲れたときにネットを開拓していきましょう。Course Catalogなどを見ていくと、取りたい授業や会いたい教授がいるか調べられます。
②信頼できそうな人の口コミ
このページに辿りついた人は、すでに私の口コミを情報源にして(しまって)いるわけですが、「信頼できそうな」というのがポイントです。どうせ十人十色なので、「できそう」ぐらいでいいです。
自分の高校の先輩など身近に経験者がいるならば頼りましょう。いなければ、上記の体験談サイトなどから気になる人を探して、SNSを掘り起こしてDMしてもいいでしょう。DMなんてハードル高ぇよと嘆いているそこの君、こちらには月数件そういうメッセージが来るので、気にせずどんとこいです。
⓪情報整理
この情報過多のご時世、正直「どう探すか」よりも「どう整理するか」が鍵になってきます。Notion、OneNote、Scrapbox、Obsidianなど何でもいいですが、メモ・アウトライナーのアプリを使うのがオススメです。大学の情報を一覧で表にするなら、Spreadsheet(Excel)の利用もいいでしょう。リンクを貼り付けまくったときに、なるべく見やすくなるように工夫を。
3.3 TOEFL・SATのコツ
あまりないと思いますが、受験時期が早すぎると、2年とかのスコア有効期限にひっかかるので、ちゃんと受験生になってから受験しましょうね。
①TOEFL
よく何点取ればいいのと聞かれますが、仮に90点と言っておきましょう。それ以下でも受験は始められるし、受かるところはあります。また、それだけあれば、どんな大学でもTOEFLが理由に不合格になることはないと思います。大学の公式サイトに明記されていない限り、テストスコア系全て足切りはないと3回唱えてください。
お金があるなら、手っ取り早く書店で気に入った問題集/参考書を買いましょう。参考書部分を何に使うかというと、SpeakingとWritingの回答の作り方のテンプレを抽出します。こういう文章構成で書く(喋る)のが良い、というテンプレを頭に入れたら、問題集で制限時間内にテンプレに落とし込む練習をしましょう。ReadingとListeningは、TOEFLの中ではクセがない方なので、他の英語の勉強(一般受験なり、エッセイなり)との兼ね合いでも伸びる可能性がありますし、逆に言えば地道に一つの文章を完璧に理解できるまで繰り返し解く必要があるでしょう。
②SAT
こちらも何点取ればいいのと聞かれますが、こちらは更に分かりません。先ほどのように「どんな一流大学でもそれを理由に落とされることはないライン」は1350点ぐらいかな、と想像しています。SATは日本では場所と日程がかなり限られているので早め早めの予約がとても大切です。私の場合、普通のSAT(Reasoningのこと)は高3の5月と10月、Subjectは6月に失敗し11月に受け直しました。10月出願でも11月初旬のテストで間に合う場合が多いようです。
SAT ReasoningのMathは、問題さえ読めれば実際にやる数学は簡単です。高校の範囲から三角比や簡単な二次関数がわかっていれば、あとは中学範囲です。満点近くを狙えます。
SAT ReasoningのReading、Writing and Grammarは、普通に難しいです。いわば米国の共通一次。アメリカ人が解いて差がつくようにできているのだから、解き終わらなくて当然です。制限時間を文章の本数で割ると、だいたいReadingは文章一本あたり13分、W&Gは一本あたり7分となっています。毎回模試を通しで解くのは大変なので、文章一本をこの時間で区切って解き、答え合わせをする、のサイクルを繰り返すのがお勧めです。
SAT Essayは必須としない学校が多いので出願校のHPをチェックしましょう。一番点が取りにくいので要らないなら受けないが吉です(私は一回目で要らないのに受けてしまい低かったのでもう一度受ける羽目になりました)。やるなら、そこそこ長く文量を書いたほうがいいです。
SAT Subject Testが必須ならば、やはり日本人にとって米国数学は簡単なのでMath IIがベストでしょうか。社会や国語はハードル高く、私の出願校は2つ必須としていたため、もう1つを物理にしてセンター理科基礎の対策を兼ねました。なるべく時間を割かずに学校の勉強の延長でできることを探す、というのが一応のセオリーになります。
4. 自己PR文章を書こう
海外大へのエッセイや奨学金への小論文についてです。まだ何も手をつけてないならば、4.2までを読んで、とりあえず「自分について」と題した文章を好きな言語で何千字でも書いてください。これが最初の添削者にとっての叩き台になります。
すでに添削やエッセイ指導をボランティアでやり始めて3シーズン目になりますが、最近思うことは、どんなに受験の初めに言語化に慣れていなかった人でも、提出するころには提出できるようなものが書けていることです。これってすごく不思議だと思いませんか?(意訳:書けるようになるから安心しよう)
4.1 自己分析ってやっぱ大事ですか?
この質問がたまにあります。感覚として、「歯磨きってやっぱ大事ですか?」に似たものを感じます。もともと皆んな無意識にやっているものを、意識的に言語化すると言った方が正しいです。
自分がどういう人か自分で知らずに自分をPRできるわけないじゃん、と言えばそれまでですが、この背後には「なぜ自分を他人から差別化しなければいけないのか?」みたいな気持ち悪さがあるんじゃないかと推察します。真っ当な話です。取ってつけたような人生哲学を書いたって仕方ありません。でも、自分が日頃どんなことを考えて、悩んで、好きでいるのか、という断片にちゃんと考える時間を与えることは、自分を大事にすることだと思うのです。周りを堕として自分を良く見せるのが自己分析ではないのです。キラキラした課外活動のリストだけが揃ったら、それは自己分析失敗です。
「自己分析」とかいうカッコいい工程名をつけたから悪いのだと思います。自己分析とは要するに「自分のコミュニティ内の立ち位置」を理解することです。あなたはいま、日本の高校にいます。周りにいるのは同じ高校の高校生ですが、でも、その中で「あなた」という人をただ一人指し示すことができます。どうして?あなたは、高校や部活などの所属先や、国籍や性別などのアイデンティティ、あるいは固有の考え方やプライドによって、隣の経歴が良く似た子と全然違う人だからです。その、パッと見で分からない違いを詳しく教えてください。あなたは今、アメリカの大学を目指しています。周りで同じように目指している人の中で「あなた」という人をただ一人指し示すことができます。どうして?ひとまず「目指す」というところまで辿り着いたあなただからこそ、自分が他の人と違うことを書きだしてください。違うことなんてない、と思ったあなた。人の過去は誰一人として同じではありません。違いを見失ったら、じっくりと自分の過去を振り返りましょう。
自己分析が大事とか大事じゃないとかじゃないのです。だって、あなたは自分を人と比べずに生きているんですか?生きているうちに誰しも自己を分析しています。受かる落ちる、の次元から外れて一旦自己分析という行為を捉えてほしいと思います。時間をたっぷりとって考えられたら、それを言語化する訓練をしましょう。言語化スキルには、残念ながらこれまでの経験量によって大きな格差が存在します。ということで、、、
4.2 言語化に係る一般論(進学の知恵より抜粋)
皆さんがこういった提出物で書かなければならないのは、間違いなく「伝わる文章」です。それ以外の価値、例えば「面白い」とか「意識高い内容」とか「語彙力」はあくまで+αであることを知ってください。言いたいことが存在して、伝わればOK。そう思います。
①題材選び
きっと、「書きたいこと多すぎ!」よりも「書くことなんぞないわ!」の方が多いだろうと察します。ポイントは、自分が感情を持っているものを探すこと。私がそうでしたが、多くの場合10年後の職業になんて何の気持ちも持っていないでしょうから、無理に将来の目標を捻る必要はないです。それよりも、素の自分が気にかけている、例えば辛かった思い出、身近な憧れの人の話、家族との大切な記憶などから、ちょっとだけ社会に向けて話を広げてみればそれで十分。感情的で、自分との距離が近くて、深堀りされた話の方が伝わりやすいのは鉄則です。この手の受験は縁なので提出先のご機嫌を深読みしないこと。自分が思い入れを持っている題材で書いて、大学は私の価値が分かるかな?くらいの気持ちです。
それでも、ありきたりなことしか書けないよ、という人へ。ありきたりなものが嘘って訳ではないから、それも一つの正直な自分の気持ちであることは間違いありません。日本の大学でも選ぶところに絶対的な理由がないように、「絶対に海外に行かなければいけない理由」なんてものも、「自分の不可欠なもの」も基本的には存在ません。つまり、どっかの時点で「えいっ!」と「決める」ことは必要だと思うんです。
だた、それは妥協するということではなく、本気で自分が納得できることでなければいけません。そこまでは頑張って考え抜くべきです。例えば私の場合は、高校での部活に本当に全力を注いだということは自分の中で自信を持って分かっていました。だから、その経験を海外に行きたい理由に変えて繋げてみたら、自分の中ですごい説得力がある「気がした」覚えがあります。自分に対して説得力のある言葉は、他人に対しても説得力抜群です。
②構成がすべて
いきなり書いても駄文が続くだけ。PCで文章を打つ前に、紙にペンでフローチャートみたいなのを書いて段落構成を練るといいです。難しそう!と思ったあなた。シンプルに、書きたいことを列挙してください。その中から一番言いたいことを決め、これを全体のテーマとして他の書きたいことを紐づける。あとは筋が通るように書く順番を考えて、アウトラインの出来上がりです!これをやってから、実際に言葉にしてみましょう。初稿は字数・語数制限をオーバーすることが目標。短すぎる状態で完成した構成を膨らませるより、長すぎるものをカットする方が遥かに簡単です。構成については後で詳述します。
③自分の文章であること
海外受験用の塾や、日本のAO攻略本のようなものが存在します。これらを参考にすることは否定しません。でも、自分が書きたい題材と自分が使いたい言葉で、自分が好きな文章にすることを忘れないで。もしかすると「受かりやすい書き方」や「入れた方がいい言葉」が少しは存在するのかもしれませんが、自分をそのまま見てもらった結果として合格するのでなければ、進学してからだいぶ辛いです。
といっても、アイデアが出なかったり良い文章が書けないときもあります。漫画家になったつもりで、ちゃんとリフレッシュしたり、本を読んでひらめいたことはメモる、などしておくといいです。短時間で良くなる程度は限られているので、早くから始めておくのも大事です。一方で、締め切りに追われて切羽詰まるまで良いアイデアが出ない、ということもあります(さながら漫画家のよう、笑)
私のお薦めは、受験で成功するために書かれた文章ではなく、自分が単純に好きな文章から表現や構成を盗むこと。好きなブログでも、SNSの投稿でも。なにも意識高そうな媒体から探さなくても、この世は伝わる文章で溢れています。だって、実際その文章はあなたには響いたのだから。
④他人の目線をいれる
私は文章を本当に数多くの方に読んで頂き、何回も練り直しました。もらうアドバイスは間違いなく「量より質」ですが、誰が良い質をくれるかなんて分からないものです。ただし気を付けてほしいのは、一度に多くの人の意見をもらうと自分が混乱します。一つ意見をもらったら、自分なりにその人の意見を消化できるまで何回でも書き直す。そうしてようやく、他の意見を反映させる余裕が生まれます。
⑤メンタル
ここで残念なお話を打ち明けておくと、自分が丹精込めて書いた文章というのは、数か月すればゴミのように見えてきます。でもそれでいい、という感覚で。大学出願のエッセイ・志望理由書その他、こと「受験期」に書く文章はこれまでの皆さんの人生のすべてが乗っかるもの。人にはその時にしか書けないものがあります。ぜひ、書いているときは自分の過去、未来、人間関係に思いを馳せてみてください。自分の成長を再生しながら、楽しんで書くことです。
4.3 添削者の目線
(編集後記的なつぶやきと共有)
大体、私が文章を添削するとき、以下のように考えています。あくまで自分のやり方なので、添削する側される側双方にとって相性はあると思います。
①書きたいことが書けているか?
→Yes:②にすすむ
→No:テーマ選びや、ブレストを手伝います。興味関心や、自分のこれまでの活動と将来像、そしてそれらの相互の繋がりなんかについて質問します。出願用の場合は書類全体のテーマ分けとかをみて、バランスをとったりします。
②整理されているか?
→Yes:③にすすむ
→No:アウトラインを書いて、段落構成や前後の文の関係などを明確にしたりします。文を入れ替えたりしてパズルっぽいのはこのあたり。ここで型にはめるので、読みやすくなる一方で(少し厳しい言い方をするならば)金太郎飴エッセイになりやすいです。
③オリジナリティがあるか?
→Yes:おわり
→No:なぜ特定の単語や比喩の使い方をしたのかや、なぜ②で一度整理したアウトラインから離れた構文を一部で使ったのか理由を説明してもらったりします。大体の場合、きちんと理由が説明できていればそのままスルーします(あとは好みの問題なので…受験が縁の世界なのはここから)。できてなければ、一番しっくりくる単語や構文がないか一緒に考えます。
4.4 奨学金への小論文の構成
グルー・バンクロフト財団の「米国大学留学希望理由と将来の抱負(800字)」が一般化しやすいので、例にとって説明します。JASSOなどは文字制限がありませんが、やるべきことは一緒です。そんな目的でこれを読んでいる人はいないでしょうが、日本の就活のESの書き方も一緒です。こうした文章は、論理性重視です。
日本語で書くことを想定していますが、だまされてはいけません。高校英語でならった、パラグラフ・ライティングのテンプレを忠実に守ります。必ず結論→理由→具体例、の順番です。
上の例であれば、いきなり最初の段落で①将来こんなことがしたい、②そのためにはアメリカに行くべき理由はこれとそれ、とずばっと書いてしまいます。その後に、①のきっかけや、②の「これ」と「それ」を段落分けて書いていけば良いです。そして、必ずすべての段落の最後の文が、最初の段落で書いたことに繋がって戻ってこれるように。冗長なことは極限まで削って、これ以上切り詰めると文章に不可欠な情報が抜け落ちる、というところまで濃密な文章になれば完成です。
論理性:★★★★★
文学性:★☆☆☆☆
4.5 Common App Essayの構成
まず、お題をみてみましょう。あまり年による変動はないです。お題が決まっているようで決まっていないことが分かります。つまり、書きたいことを書けばいいです。なんとなく形になってから、お題に当てはめるので十分間に合うと思います。
コモンアップのエッセイは、別名をPersonal Statementと言います。文字通り、自己分析の結果を650語で書けやって言われています。ただ、ここがミソなのですが、自分の人格や過去について、論理的に書くことができません。我々がもっと矛盾にあふれた複雑な人生を生きてきたからです。そして、人生はまだ終わってないために結末が不明だからです(よかったね!)。従って、4.3で書いたような論理的な文章を書くことは、むしろ気持ち悪さを感じさせます。原体験主義と呼んでいますが、なにか全てのビッグバン的きっかけになった出来事があって、それから自分の人生哲学の全てが派生したかのように論理の筋を通してしまうと、自分に嘘をついているような気になりますよね。
ではどうするか?このnoteを出すまで2年半かかった理由として、受験直後に出すのが何だか偉そうなのもそうですが、このコモンアップエッセイの体系化がどうしても上手くいかなかったことがあります。「よいエッセイ」とされるものの構造があまりに多様だからです。これでは、執筆者と添削者で目の前の書き始めのエッセイを向かわせたい方向が違ったとき、混乱を招きます。結局はケースバイケースでアドバイスしていくしかないのですが、何か少しでも一般化できるコツがあるといいのに、と思いながら自分のものも含めて何十人分も添削してきた結果、コモンアップエッセイが良いコモンアップエッセイたるためには2つの本質があるような気がしてきました。
それは、①一つの瞬間を、②展開をもって書く、という相反することを同時にやってのけることです。難しいです。超高校級(笑)の言葉遣いで言うならば、瞬間をその文脈とともに語ることです。以下は、マニュアル化ができないコモンアップエッセイに対して、私が作れる最もマニュアルに近いものです。
①一つの瞬間を描く
4.2の①題材選びから、特に強烈な感情を持っているものを一つ選びましょう。それは、「毎日欠かさず自分の弁当を作ったこと」「親との確執」のように一連の出来事でも、「文化祭が始まった瞬間」「大事な人に言われた何気ない一言」のように一瞬のことでも、「因縁の仲の友人」など人でも大丈夫です。ただ、直近すぎるテーマ(受験の悩みなど)は避けましょう。あまりに論理的に書けないからです。
次に、選んだ大切なものに対して、それが「大切なものになる前」「大切なものに変わったとき」「大切なものになった後」を思い浮かべます。この中から、深く印象に残っている瞬間を一つ切り取りましょう。ほんの一瞬までクローズアップして、そのときの感情や自分なりの理解をありのままに描写します。
一度時間軸をピン(固定)してしまい、なるべく場面転換(時間や場所設定の変更)、登場人物は少ない方が良いです。年レベルはおろか、月レベルのロジックにもなるべく触れずに「その刹那に自分を支配していた論理」で貫き通すことで、矛盾をなるべく小さくできます。また、良いコモンアップエッセイほど会話分の数は少ないと言えます。会話は時間を進めてしまい、一つの瞬間に当てたスポットをぼかしてしまうからです。
瞬間に強烈なスポットライトを当てるのは、そうしなければただの経緯の説明と化してしまいやすいからです。以下の記事はPR一般についての文章ですが、示唆的です。「自分を語らずに、自分を伝えることができるか?」これに尽きます。
②展開を描く
「大切なものになる前」「大切なものに変わったとき」「大切なものになった後」を起承転結という一本の線で繋ぎます。選んだ瞬間は、どうしてそんなに大切な思い出なのでしょう。きっと、自分に大切なことがそこに内在しているからです。「その瞬間の何が大切なのか?」という答えをストーリーにしてみましょう。何か大事なことを気付かせてくれたから、目指すべきものが分かったから、辛いときに救われたから、など色々あるでしょう。例えば、選んだ瞬間が「部長選の敗北」ならば、自分がある困難(e.g., 目標の人へのコンプレックス)を乗り越えて、ある気づき(e.g., その人が自分に不可欠な人であること)を学ぶきっかけとなったのかもしれません。
さあ、固定した時間軸にストレッチが効いて、選んだ瞬間に文脈が生まれました。一つ選んだ「決定的な場面」はIntroかClimaxかResolutionのどこかにハマるでしょう。①で思い描いた瞬間は必ずしもストーリーの転換点ではなく、感動の結末の場面だったのかもしれません。①で思い描いた瞬間が、朝の弁当を詰めながら高校の出来事を振り返る自分だったのならば、その瞬間はイントロや最後に出てきて、弁当を詰める行為が大切なものに変わったクライマックスがどこかにあったのでしょう。可能な限り「瞬間」の数を増やさないように気をつけながら、その瞬間に文脈を与えてあげます。
綺麗に上図の折れ線が再現できたなと思ったら、それを少しずつ崩していって構いません。最終的に、「瞬間」的要素が全くなく、全てを回顧的に書いているエッセイもあります。でも、瞬間に強烈なスポットライトを当てて始めるのは、一つの常勝手段だと言えるでしょう。
場面転換を減らせと言ったのに場面転換しろって馬鹿だなと思ったそこのあなた。そうなんです。だから難しく、そこを表現で誤魔化さなければいけないのです。誤魔化す、というのは言葉が良くないですね。絶対に理屈が通っていないのに、ふとしたときに点と点が繋がる気がする、それが文学、もとい人生の美しいところではないでしょうか。それを再現してくれっていう鬼のようなお願いです。
最後に、私の経験から「あるある失敗」をいくつか挙げます。
内面の変化を描く際、瞬間から瞬間への移行が雑すぎて、ものすごく唐突に自分が成長してしまっているような不自然な文章になってしまう。
起承転結にするために、実際の経験を歪曲して無理に「挫折→成功」を描こうとしてしまう。
題材とした瞬間が、課外活動の正念場や悩みの解決など、非日常になりがち。結果、印象の強い瞬間が多く、場面数が増えてしまう。
いずれにせよ、瞬間は一つに決めて、場面を増やさないことでこれらの大方は解決できます。課外活動の正念場を語るにしても、正念場のシーンを「瞬間」に選ぶより、事後の日常を基点に回想した方が上手くいきます。大切なものが、日常にひょこっと顔を出した瞬間で十分。
③表現のコツ
比喩的な表現や文構造を上手く織り交ぜることで、物語が非常に活き活きと印象に残るものになります。①〜②がコモンアップエッセイに必要な要素だとするならば、③はボーナスポイントです。書き方は自由なので、感情のローラーコースターを上手く表現するエッセイも、とても繊細な心情の変化を描いたものもあります。
構造レベルで大事なことリストを最小限挙げるならば、この3つ。
最初と最後の一文が、深い印象を残すこと
結末が最初にちゃんと繋がっていること
展開に意外性があること。次の展開が予測できないこと
文単位のレベルでは、表現はShow, Not Tellというアドバイスが鉄板になります。言いたいことを直接の英語で言ってしまうと、あまり響かないのが英語の特徴です。日本語は婉曲な言語だからこそ、断言が価値になるのですが、英語は直接な言語なため「神の位置の読者に展開を告げる」のではなく「あたかも読者がシーンに没入したかのように見せる」ことが大事です。
極限まで冗長さを削り、650語すべてが宝石のようにこだわりの表現でできていることが目標です。初稿からはほとんど何も残りません。これができた暁には、もうこの受験に合格以上の価値があると思います。
さらに、表現の上級テクニックとして思いつくものを挙げておきます。
同じ文構造や単語を続けて多用しない。語彙を散らすべき。
自分が主語である必要はない。他人や非生物を主語にしたっていい。
同じ単語や同じ文が、箇所によって違う意味や感情を持つようにする。
同じテーマに沿った修飾語を使う。例えば、アートに関するエッセイで、色を連想させる言葉を多用するなど。
比喩を使う。文化的に伝わる元ネタ(ハリウッド映画など)であれば、ぶっ込んで構わない。隠喩だと、頑張ってチーム作った物を「Our hope」と呼ぶみたいな作風も。隠喩は当て字のように、というのは持論です。
論理性:★★★★☆
文学性:★★★★★
4.6 Supplemental Essayの構成
こちらは、各大学が独自に受験生に課してくるエッセイです。50語から無制限まで様々な長さがあり、お題にも色々なタイプがあります。大まかに二分しておきます。4.3っぽいやつと、4.4っぽいやつです。
双方に共通する「あるある失敗」として、そもそもエッセイの出題意図、質問に沿えきれてないことが挙げられます。
Why?エッセイ系
ストレートにその大学の志望理由を聞いてくるやつを含め、大学で学びたいこと、大学の課外でやりたいこと、大学のこのリソースをどう活用するか?など今後のプランを聞いてきます。
こちらは、物語を紡ぐより大学のリサーチが大事なので、まずは4.3のスタイル(論理性重視)で書くことをオススメします。そこから、徐々に大学で生活する自分の姿をイメージしながら、文章を崩していってもいいでしょう。
論理性:★★★★★
文学性:★★☆☆☆
コモンアップの発展系
コモンアップで聞かれるようなアイデンティティ、困難を乗りこえる話、人生で最も影響を受けた人の話などを少し捻って聞いてきます。課外活動を直接問うもので、リーダーシップにまつわるお題や、周囲の環境とどう関わったかを問うものも多いです。学校内外のコミュニティをどう良くしてきましたか?など。
他にも、名言みたいな文から引用があり、それについてどう思う?みたいなやつや、会ってみたい偉人を問われるものも。「もし〇〇だったら?」みたいなファンタジー系もあります。ショートショートと言ってもいいし、大喜利と言ってもいいです。
こちらは4.4のコモンアップのコツを参照してください。語数が短いことが多いですが、やるべきことは変わりません。お題が何であれ、自分の大切なことに結びつける以外の選択肢がないからです。
ただ、コモンアップの発展系がコモンアップと違うのは、問いがしっかりしていることなので、文学的に書きすぎて問いへの直答がどこにもない事態は避けましょう。最初の二段落のうちには、問いへの答えとして下線が引ける一文をつくってください。
論理性:★★★★☆
文学性:★★★★★
5. おわりに
最初に、海外大受験は良くも悪くも飛躍だと書きました。日本の高校で、海外大進学がメインストリームを形成しているところはまだありません。端的には、奨学金の供給量が小さすぎるからです。飛び出すということは、仲間と違うことをすることでもあります。断絶です。外の世界は本当に広くて、今の場所にいては分からないことだらけ。でもそんな広すぎる世界に疲れたとき、落ち着く存在となるのが自分が帰りたいと思う場所で時間を共にした面々なのだろうと思います。どんな受験であれ、一人ではとべません。
最後に、毎回ですが、卒業後も仲良くしてくれる高校の先生方や部員、日本の大切な人たちには心から感謝しています。皆さんのおかげで今の私があります。
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