見出し画像

【美術と伝統】【無料で楽しめる美術・博物館】足袋って縁起ものだったんだ!足袋の博物館

おもしろいものが観れて、無料だったら!
東京にあるそんな美術館や博物館、ギャラリーなどをご案内させていただきたいと思っております。

今回ご紹介するのは東京都中央区にあります、
足袋たびの博物館です。


私はいままでに足袋たびを履いたことは数えるくらいしかありません。
子どもの頃の七五三やお正月。あと成人式でしょうか。着物を着たのがそれくらいしかないということなのですが、改めて考えてみましたら日本人としてちょっと寂しいなあと思ってしまいました。

最近この足袋の形がアパレル業界でも注目されてきているというおもしろい情報を知りました。我が家の子どもたちからも「足袋の形の靴があるんだよ」と聞いてはいましたが、実際に街でそのような靴を履いている人を見かけたときは「ほんとだ!」と驚きました。
足袋のような形は体の中心に重心が整い、姿勢を正す効果があると言われており、そのため歩きやすく、おしゃれと機能性を兼ねた履物としてそのデザインが見直されてきたのですね。

さて、東京中央区に足袋の博物館があると聞いてネットで調べた時から素敵なお店だなあと思っていた大野屋総本店さんに今回とうとうお邪魔してまいりました。

この建物からもう雰囲気が素敵でワクワクしてきます!

東京都中央区新富2-2-1
03-3551-0896
お休み:土・日・祝日・年末年始
営業時間:9時~17時
アクセス:東京メトロ有楽町線新富町駅2番出口徒歩1分
博物館料無料
※商品のお買い物できます。電子マネー・コード支払い対応可

ここは「博物館」ではありますが、展示物は小さな戸棚におさまる程度。そのためその棚の前で店主の奥様が詳しくお話くださるという形でした。

大野屋総本店さん
安永年間(1772年~1780年)に創業
嘉永2年(1849年)に現在の新富町に移転
明治5年(1872年)新富町に新富座ができる
明治22年(1889年)木挽町に歌舞伎町座ができる
5代目福太郎氏の創り出した新富座(※)の足袋がお店の名前を広く世に知らすところとなる。
※新富型:底が細く、上をふっくらと包み込むようにつくるため足が細くすっきりと見える特徴があります。

現在も歌舞伎役者や舞踏家、能役者などの役者さんたちに愛されている商品を作られています。
足袋だけでなく、肌着や和装雑貨も扱っている老舗です。

私が以前履いた足袋はすべて白くて、足袋は白いものしかないと思っていましたが、今回足袋には様々な色があり柄があり、さらには足首の形なども一種類ではないことを知りました。

素人の私がみても形に気品を感じます。
美しくて素敵な人を思わせます。

白い足袋は主に礼装や茶席、紋付き袴などの改まった場所で用いるのが基本なのだそうです。(でも普段着に白色をもちいても問題はないそうです)それ以外は黒足袋や色足袋を合わせることが多いのだとか!また、役柄によって色を変えたりするのだそうです。
また、今回驚いたのは先が分かれていない、いわゆるつま先がまるくなっていて靴下のようなかたちの足袋があるのです!今でも皇室の方たちはこの足袋をはいていらっしゃるとか!

つま先が丸い足袋があるなんて!!
いろんな色があります

また、足首の後ろについている爪型の金具を「こはぜ」というそうなのですが、基本は4枚なので通常の足袋は4枚ついています。しかし5枚ついているものもあり、それは足首の高さが少しだけ高くなるわけで、そのため素肌がより隠れて所作しょさが上品に美しく見えるようになるとのこと。
足元のそんなちょっとしたところでも美しさを考えるなんて素敵ですねえ!



さて、下の写真では「新富型」の基本的な形の説明と、足袋のサイズについてのおもしろい記述があります。

この黄色い足袋は歌舞伎役者さんにつくられたもの。
足首のところが靴のかたちのようです

「細」・・特別に細い足袋
「柳」・・細めの普通足袋
「梅」・・やや甲高の足袋
「牡丹」・・特別甲高の足袋
呼び方に植物の名前を使うところがニクイですね。
また、右側の板にはサイズが記されていますが、このサイズが同じでもはばの細い足袋から広いものまでいろいろ用意してぴったりのものを選べるようになっているそうです。
もちろん特別注文のあつらえ商品もお受けし、一足、一足形を採って仕上げていらっしゃるそうです。
キャラコの生地を裁断してこはぜをつけて、端縫はぬいをして、甲前こうまえを縫って掛け糸を付けるという順で仕上げられているという事ですが、この建物の中で一貫して製造しているそうです。
なので、細かな部分までどんなオーダーにも対応していただけるとか!

考えてみれば足型もいろいろありますよね。よく言われるエジプト型とかギリシャ型とか。
皆さんは何型でしょうか?
靴を選ぶとき自分の脚の巾や甲の高さを気にして選んだりしますが足袋もそこまで厳密にオーダーメイドできるなんて贅沢な世界ですね!

また、驚いたのは作った後3回洗濯をするのだそうです。そうすると少し縮むためそこまで計算して縫い上げるのだそうですが、洗濯後にまた履いてみて気持ち良くぴったり履いてもらえるとなったらそこで出来上がりなのだそうです。ひとつひとつ丁寧に採寸して手縫いで作り上げ、また足にあわせ履き心地を確かめる。だから大変な時間を要するお仕事なんです。合わないとなったら作り直し。1年以上かかる方もいるとか!
うわあ。なんて丁寧な仕事なんでしょうか!
そうやって作って、それを演技の時に一回きりしか使わないという役者さんもおられるそうです。
すごい世界だなあ。

お名前をよく聞くような歌舞伎役者さんの足袋はほとんどこの大野屋さんで作られているそうです。楽屋やご自宅にお伺いして足型をとられるとか。「歌舞伎座」「新橋演舞場」「国立劇場」「明治座」「博多座」「南座」「松竹座」など全国の劇場で活躍されている役者さんの足袋を作られているそうです。


さて、いままで全く足袋を気をつけて見てこなかった私ですが、浮世絵の世界ではどうなっているのだろう?とちょっと気になりだし・・・
のぞいてみることにしました。

大野屋さんでお話をうかがったとき、「昔は大体の人ははだしだったと思いますよ。本当に高貴な方がはくものだったので」とおっしゃっていましたが、本当にはだしで下駄やぞうりという人の姿が多くみられました。
また、女の人の絵などは足元を着物で見えないようにしているものも多く、足をむやみやたらにみせないということがおしとやかであり美しさの基準でもあったのかなあと思えてきました。

若いむじゃきな足を思わせます
かごやさんなんて足を酷使したお仕事だったから
はだしだなんて怪我をしたのではないかなあ
でもたしかに足袋ははいているイメージなかったです
これは歌舞伎役者の絵です
黒い足袋とタイツみたいなのが派手ですね
草履の結び方も独特です
これは吉原の芸者です。
芸のために男装した二人が描かれています。
黒と茶色の足袋ですね
これも役者を描いた作品です
やはり草履の紐の結び方がおもしろい。
また、この人物のように足首を紐でしばっているようすはよくみられます。
はやりのファッションの一つだったのでしょうか


かわいいサイズの足袋がたくさんありました!
手のひらサイズです!

この小さな足袋は飾って置くようなものですか?と聞いてみたところ、「小銭入れ」にする方も多いんですよ。と教えていただきました。
「それに、御銭とかいて『おあし』と読むように、『お金』は足がついているみたいに出たり入ったり動きがあるということにちなんでこれを「小銭入れ」にすることで「お金がたまるように」さらには福が入ってくるようにと願い「福足袋」と呼んでいます。」とおっしゃっていました。

縁起物が大好きな私は早速ひとついただきたくなり、家紋がたくさん描かれたデザインものを選びました。

こはぜもちゃんとついています!
ちなみにこはぜは一つです。
しかも「新富町大野屋」って入っていますね!

このサイズは本当に小さいのですが、新生児の足にははかせることができるのだそうで、「私も息子にはかせたんですよ」とのこと。でも本当にその頃だけしか履けなかったと笑っていらっしゃいました。

この小さいサイズはただ大きさがちがうというだけで通常の寸法のものとすべて同じ手順で作られているため、作るのが一番大変なのだとか。

私も早速小銭入れにして一つは持ち歩き、一つは福銭を入れて家のお守りにしております。


また、縁起物は柄にもありました!
トンボの柄です。

トンボは前に前にと飛び、後ろには下がらない昆虫なんですね。だから勝利を呼び込む「勝ち虫」として武将が使っていた縁起の良い模様なのだそうです。
この模様を好んでご注文される方もあるとか。

足袋の世界にそんな「縁起の良い」話があるとは思ってもみませんでした。
日本の文化をまた深く知り、面白い世界を知りました。

皆様も是非この小さな素敵な博物館にお出かけいただき、足袋の魅力を感じてみてくださいね!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?