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自然はすごい!Sense of wonder 3つの心臓、9つの脳。道具を使い、2本の腕で走る!大好物なのはカニ。でも仲間も平気で食べてしまう。様々な色や形に変身!性格がある?人間が好き?タコってこんなに面白いいきものだったのかあ!

驚きました!
タコがこんなに「かわいい」なんて!


ある日娘が「お母さん、これ好きそう」と言って
タコについてのドキュメンタリーを一緒に観ようよと誘ってくれました。
2020年にNetflixが配信した「オクトパスの神秘:海の賢者は語る」という作品でした。

そこには、頻繁に会いに来る人間を覚え、腕をのばして触り、人間の胸のあたりに飛び込むように泳ぎ着く行動をするタコが映し出されていました。

人間に甘えてる!と思いました。
なんてかわいいんだろう!
人間に興味津々で好意的なのにもとても驚きました。

この映像を一緒に観ていた娘も大変驚き、二人で「すごくおもしろかった!」と盛り上がりました。夫や息子たちにもその感動を夢中で話してしまったくらいです。

だけどこれは「ある記録」であって、
ある人がたまたま遭遇したタコとの体験談なのかなあとも思い、
「ホントかなあ」という気持ちから、
タコについてもっと調べてみたくなりました。

そして出合った本が
「タコの心身問題」(ピーター・ゴドフリー=スミス/夏目大訳・みすず書房)と「オクトパスの世界」(サイ・モンゴメリー/定木大介訳・ナショナルジオグラフィック)でした。
そこには想像を超えるタコの実態が書かれていたのですが、おもしろくておもしろくて!
わたしは
それからタコに夢中になってしまいました。


この書籍の中で、
「Secrets of the Octopus(解明!神秘なるオクトパスの世界)」というナショナルジオグラフィックの映像も紹介されていて、すぐに視聴しました。
これは現在ディズニープラスの「ナショナルジオグラフィック」で配信されています。

この作品でますますタコの能力の高さを知ります。
体の色の変化で感情を表し、コミュニケーションをとるタコ。
臨機応変に道具を使い、隠れ、闘い、
未来をも予測して道具を持ち運びます

腕で相手に触れてその目的を知ろうとする社交術
ケンカや協力をしながら情報収集をし仲間と学び合っているかのようです。
寝ながら夢を見ているような場面にも驚かされます。

私は予想以上のタコの「感情」や「知性」を目の当たりにし、ますます興味を深めていきました。



映像の中では自分の体を隠すための道具として貝をみつけると抱きかかえて持ち歩いたりする場面がありました。
その姿がまたかわいい!のです。大きめな貝をガシッとかかえ、二本の足(腕)でひょこひょこ走ります。
腕が足に?と驚くとともに、その姿があまりにユーモラスなため、ほほえましく思えてきます。8本の腕のうちの足に選ばれるのはどんな基準があるのかなあなどと思ってしまいました。

そしてその貝はどんな風に使うのだろうかと見ていると、あきらかに「すぐに使う」わけではなく、「これが必要になることがあるだろう」と未来を予測して「考えてる」としかおもえない使い方なのです。体に対してかなり大きめの貝を持ち運ぶ姿は危険ですらあるのに!

身の危険を感じたりして「隠れよう」と判断すると
貝のなかにすっぽりと入り込みます。
そしてまた、その時の貝の扱い方がとても上手なのです。

本当にこんなふうに!貝が2つに分かれて離れてしまっていても、上手に中に入り閉じます。
(「神秘なるオクトパスの世界」より)

タコは必死な思いで隠れているのですから「かわいい」だなんてとんでもない発言ではありますが、そのタコの「考え」や「器用さ」には本当に目を見張りました。


また、タコはカムフラージュの名手で驚異の変身能力があります。

ヒラメやカレイの姿を真似て「あざむこう」としているミミック・オクトパス。この他にもイソギンチャク、クラゲ、クモヒトデ、シャコ、タツウミ、ヘビ、ナマコなどに変身!ミミック・オクトパスが変身した種はこれまで確認されている数は15を数えるが、もっと多い可能性もある。
(「神秘なるオクトパスの世界」より)

タコは人間が瞬きするよりも早く体の色や形を変えることが出来ます
ある観察結果では1時間に最大177回体の色を変え50種類の変形パターンをもち、あっという間に変化させるかと思えばそれを1時間以上も維持することも可能な種もいたとか!観察者はそのことを「我々が知る限り、どの動物にも見られない」と言います。

また、さらに驚くのはカムフラージュの意味合いにおいてタコは「目立とうとしている」「あざむこうとしている」という点です。
他の動物は(例えば昆虫の擬態や動物の冬毛など)「驚かす」「威嚇する」「隠れる」という目的が多いのですが、タコは高度で複雑な能力を駆使し、相手に「錯覚」をおこさせ、自分の居場所を悟られることなくカニなどの獲物を誘い寄せるためと考えられています。

しかしもっと驚くことには、その擬態をタコが「選択」しているかもしれないと考えられていることです。つまりは捕食者の種類に応じて相手が何を恐れるかを考え適応しているかもしれないのです。
それは同時に「観客は自分とは違う視点を持っているかもしれないと理解している」ということなのだといいます。

このような「他者視点」の能力はチンパンジーやカラス科の鳥にもみられるそうなのですが、多くは人間の認知に限定されることが多く、
この能力は社会的知性の特性といわれ、人間でいえば他者との経験や環境での成功や失敗から学ぶことで学習されていきます。人間はこのような発展から複雑な人間関係を生き抜くために社交性やコミュニケーション能力を高めるのです。

タコにも、そんな「考え」があるのかもしれないとわかってきたのです。
それは研究者たちがいままで想像していたタコの能力よりとてつもなく複雑なことでした。


さて、私は今回あらためてタコの姿をじっくり観察してみました。
あれ?タコの目ってこんなだった?
横長の四角い目ですまーしている顔。
すごくかわいく見えてしまうのは私だけでしょうか。
私は今回初めて知りました。この四角い目がタコ特有なのだということを。
主にリラックスしている時この目をすることが多いようなのですが、
なんとも愛らしい感じがしてしまいます。

ミズダコの目(「神秘なるオクトパスの世界」より)

しかし、この目は色を識別できません
周囲の色と完璧に同化して変身する様子をみてからその事実を知ると信じられない!と思えてしまいます。
タコの目は人間には見えない偏光を見ているのだと言います。
奥行き知覚がほとんどありませんが、夜でも見え、深海でも見えています。
世界を彩る複雑な色彩の知覚することに関しては、
研究の結果、皮膚で光を感じ明るさの変化を感知できるのではないかと考えられています。


そして、頭!
タコの頭って、あのよくタコを描く時に丸く描くところが頭だと思っていたんです。でも映像や写真ではことごとくその「頭と思っていた部分」がダランと下に垂れ下がるようになっていて、目が突起のように突き出していたため、いわゆるイラストに描くようなタコの姿はあまり見られませんでした。

豊海おさかなミュージアムHPより

調べてみると、あの部分は「外套膜」といって、様々な内蔵が入っている場所、つまりはタコの「胴体」なのです。
そしてその下の目のあるところが「頭」になります。

このように手足が胴体ではなく頭部についている軟体動物のⅠグループを頭足類と呼びます。
頭足類は腕や触腕手を備え、血液は青く、頭部にある漏斗から水を噴射して海中を高速で移動します。


移動するといえば、先ほど「ひょこひょこ走るタコ」について書きましたが、このことも他の動物にはみられない能力なのです。
二足歩行する生物は他にももちろん存在しますが、二本の足で歩くには骨格が必要だと考えられてきました。でもタコには骨格はありません。
タコは「硬い骨格や殻がなく、それなの二足歩行できるという唯一の動物」ということになり、この動作もやはり軟体動物としてはすごいことなのです。


そして脳。
タコには腦が9つあるといわれています。
タコには頭蓋骨がなく、脳は喉のまわりに輪を巻いたような形をしています。
そしてその他8つの脳は腕の中にあるのです。
その8つの脳はそれぞれが大量の情報を処理できるようになっていて、
例えば切り離されたとしても、その腕は自力で動いて何かすることが出来ます。その腕で獲物を捕らえることも可能なのです。

また、失われた腕は完全な複製をして再生ができます。
タコのオスが特殊な機能を有する右第3腕を失った場合でもその機能を完璧に含めた腕を再び持つことが出来るのです。

さらに研究者のあいだでは
この腕1本1本に「それぞれに意識空間」があったらどうだろうという考えが出始めています。
脳が9つあるということでタコは「複数の自己」を持ち、内気な腕、大胆な腕というような性格の違いがあるのだろうかというのです。
私は、その考え方はとても面白いと感じました。

いや、でも9つとまでいわなくてもタコはかなり「考え」て行動しているということだけでも驚きます。
映像の中でみせる人間への好奇心や人懐っこさなどから「性格」も感じることができます。
いままで考えたこともなかったタコの知能のゆたかさには本当に驚くことばかりです。

アトランティック・ロングアーム・オクトパス
キレイだなあ!腕が胴体の7倍の長さになることがあるとか!すごいですね!(「神秘なるオクトパスの世界」より)


「神秘なるオクトパスの世界」には、さらに面白い研究が書かれていました。タコは「遊ぶ」のだというのです。
シアトル水族館で行われたある実験で8匹のタコにそれぞれ容器を与えると、容器を投げ捨てたり怪しい物体を遠ざけるかのようにする者もいた中であきらかに違う行動をした2匹のタコがいました。
容器にジェット噴射を浴びせ、しかもその水の勢いの加減を注意深くコントロールしながら、水槽の中でその容器がコロコロ転がるようにしていたというのです。それはまるで「ボール遊び」のようでした。

遊びも知能に関連する活動の一つと考えられていますが、
活動の中でも「楽しみながら」という行為は特別なものに思えます。


私にとって、タコは身近な生物で身近な食材でしたが
どんないきものなんだろう?だなんてことは、まるで考えたことがありませんでした。
今回たまたま映像を見ることで興味が湧き調べてみたことで知ることになりましたが、タコのその驚異的な能力には本当に驚かされました。

タコは瓶の開け方も理解し、人の顔も見分けることが出来ます。
人間が出来ることがタコも出来る。それがたくさんあることがわかってきました。もしかしたらタコができて私たちができないこともあるのかもしれません。

タコの行動を専門とする海洋生態学者のチェルシー・ベニス博士は「神秘なるオクトパスの世界」の中でこのように言っています。

「タコは私たちの、いわば科学アドバイザーだと思います。タコの生態学、行動学、遺伝学を研究することで、海洋の生物多様性と健康、持続可能な漁業、進化、ソフトロボット工学や神経科学のための生物学的インスピレーションなどに関わる多くの問いに答えることができます。そして科学研究者であり教育者でありコミュニケーターでもある私は、どうすればマルチタスクの達人になれるかをタコから学んでいます」

タコは孤独な動物だと考えられてきました。
しかし、最近の観察や研究結果から何匹もが同じ場所で生活しているタコや、異種で共に生活しているタコもいることがわかってきました。
そして人間への好奇心の強さなども含めて驚くほど友好的な個体も少なくありません。
また、その様子をさらに深く観察していくと、同種異種問わず個別にかなりの性格の違いもみられ、それゆえにうまくいっている場面も多く見られるのだそうです。

そんな話を聞くと、人間関係を考えさせられるのです。別の考えを持つ相手を受け入れていけることで豊かな関係が気づかれていくという見本をみせてくれているような気がして、タコに学ぶことはたくさんあるのではないかと思えてきました。


タコの寿命はどの種もかなり短く、長くて3年から5年ですが、1年に満たないものもいます。一生に一度だけの繁殖を行い、オスは交接のあと生涯を閉じメスは卵が無事かえるまでただひたすら卵の環境を良くすることだけに徹し餌も口にせず体力を衰えさせ子どもたちのふ化を見届けると力尽きて死んでゆくのです。

それはとても「タコの感情」を感じる一場面であり
生物としての意味や豊かさなど、
忘れかけていたようないきものとしての真理を考えさせてくれる気がしました。

また一つ真実を知り、自然のすごさに感動しました。

このことから
人間という生物にも目を向け
自分と向き合うことにつなげていきたいと思っています。


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