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雨の日に電車に乗ると

雨の日に電車に乗ると
必ずと言っていいほど思い出す光景がある。

雨が降っていたある日、出かけた時のこと。
電車に乗って、一番はじの空いているところへ腰掛けた。そして銀色に輝く手すりに傘をかけて
私は本を読み始めたのだ。

降りる駅だ!
気づいたら扉が開いていた。
慌てて立ち上がり、
飛び出した。

やれやれとホームでひと息した時
肩を軽くたたかれ
ふりむくと

私の傘を持った女性が目をまんまるくして立っている。

お互い何も声を発することなく1秒くらい見つめ合った。

あ!
私が状況を理解した。

ありがとうございます!

サッと彼女は私に傘を差し出した。
そして私が受け取ると
クルッと向きを変え
また電車に乗ったのだった。

間一髪で扉が閉まり、
彼女は無事に乗れて
電車は動き出した。

私は聞こえるはずが無いのに
声に出して
ありがとうございます!と
でも小声で言った。
彼女を探したけどわからなくて
探しながらお辞儀をして
心の中では
わあわあ言っていて
感動して

鳥肌がたっていた。

いちかばちか。
持って行ってあげよう!と思ってくれたんだ。
電車にまた乗れなくてもいいやと思ってくれたかもしれない。

確実に私のことを優先してくれたんだと思う。

私はその傘をまだ買ったばかりで
でもとても気に入って買った傘だった。

ありがとう。
ありがとうございます!

何度も心の中で繰り返した。



そして今日雨が降っていて、
朝電車に乗ったら思い出した。

もう何年も
あの時の感動がよみがえり
繰り返してしまうのだ。


本当に、
本当にありがとうございました!


私はあの傘を今も大事に使っている。


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