マスコミと不動産営業マンに惑わされてはいけない
こんにちは!
CFP受験生のハマネコ(@hmnk_cfp)です!
本日は2024年3月20日
いわずもがな、日銀のマイナス金利政策が解除がニュースになっています!
日本の経済史のなかでも歴史的な瞬間であり、私が読んだ日経新聞の朝刊も3面すべてがこの件でした(笑)
そして私たち一般人にとっては、この政策で気になるのが「住宅ローンの金利がどうなるのか」ですね。
日銀が長年続けてきた低金利政策を転換すると言っているようなものです。
これから家を買う人、あるいはすでに変動金利でローンを組んでいる人にとっては、「ローンの支払いが上がるんじゃないか」という不安が出るのも無理がありません。
そしたらさっそく、YouTubeでこんな動画を見つけました。
これは関テレの特集のようですが、ツッコミ所が満載どころか憤りを感じるので、この記事でも取り上げようと思います。
なお関テレアンチではなく、「マスコミの間違った情報に踊らされてはいけない」という警鐘を鳴らすためですので、誤解無きようお願いいたします!(笑)
1.そもそもマイナス金利とは
そもそもマイナス金利とは、何でしょうか?
これは「民間の銀行が日銀に預けるお金に、マイナスの金利を適用する」と言うものです。
※私たちの預金は関係ありません
金利がマイナスですから、銀行側は日銀に預けておくとそれだけで損になります。
だったら融資に回した方がいいよね、という動機付けを民間銀行に対して行うことで、銀行がお金を貯めこむことを防ぎ、経済を活性化させる狙いがあります。
ただマイナス金利にはいくつかのデメリットがあり、その一つに「為替が円安に進みやすい」というものがあります!
現在は歴史的な円安局面で、輸入価格高騰による物価上昇→国民生活苦という影響がモロに出ています。
最近お店に行っても、いろんなものが値上げしてますよね。
一方で企業側の賃上げや株価高騰は進み、経済は回復傾向に向かっている。
だったら、もうマイナス金利政策はやめて「普通の世界(=金利がある世界)」に戻してもいいよね。
というのが、今回の決定の背景です。
2.住宅ローンの金利はすぐには上がらない?
さて、住宅ローンの金利はどう決まるのでしょうか?
まず大前提として各銀行の匙加減で決まるものであり、日銀や政府が「○○%にしなさい」みたいな法律・あるいは指針を出しているわけではありません。
ではその「匙」はどのようにして決まるのか。
それは固定金利と変動金利で、次のように異なります。
・固定金利→長期プライムレート(10年物国債)
・変動金利→短期プライムレート
このうち固定金利は文字通り金利を固定しているので、今回の決定によって金利が上がることはありません。
ただしなかには「10年固定」などのように固定期間が決まっているタイプのローンもあり、その場合は固定期間終了時に金利が上がる可能性はあるので、注意が必要です。
そして問題は、変動金利で組んでいる、あるいはこれから変動金利で組もうとしている人です。
変動金利の要因である「短期プライムレート」を決める要因となるのが、「無担保コール翌日物金利」です
そして日銀の金融政策決定会合では、この無担保コール翌日物金利は「0.0~0.1%の間で推移するように調整」すると宣言…
といっても、なかなか分かりずらいですよね。
要するに日銀は、「住宅ローンの変動金利が急激に上がらないように政策を調整しますよ」と言っているのです!
もちろん日銀もバカではない(というか、日本最高峰の頭脳が結集している)ので、金利の上昇にノータッチな世界になったらどうなるのか、なんてことは分かっています。
また銀行側も、ある一行が急に住宅ローン金利の引き上げを行ったら、新規顧客からも「じゃあ他行で組みます」となり、融資機会を損失してしまいます。
特に銀行は横並び意識の強い業界ですし、顧客の獲得競争という観点からも、急な変動金利の引上げは考えられません。
3.話題を作りたいマスコミと家を買わせたい不動産屋
ここまで説明したうえで、冒頭の動画の内容に戻ります。
ますここでは、3年後の変動金利が0.4%から2.9%に上がるという試算が出ております。
ここまで述べてきたように、日銀は住宅ローン変動金利が急激に上がらないように配慮した政策を行いますし、銀行側も営業戦略から急な変動金利引き上げは行わないでしょう。
もちろんゼロとは言えませんが、現実的にはあり得ない数字です。
例えば、大谷翔平選手が開幕戦でホームランと打ったとして、「このペースでいけば年間162本(=メジャーリーグの年間試合数と同じ)打つことができます!!」と報道するようなものです(笑)
※例年のホームラン王は40~50本、史上最高でも73本(ただしステロイド使用)
数字は嘘をつかないが、嘘つきは数字を使う
まさにこの言葉が当てはまる、良い例でしょう。
そもそも出典元であるみずほリサーチ&テクノロジー社の試算が非現実的ですが、このガバガバ試算を公共の電波で流す関テレ側の意図も分かりません。
明らかな話題作りにしか見えませんね。
そしてこのマスコミ以上に信用ならないのが、不動産の営業マンです。
家の購入を迷っている人に対して、
「マイナス金利解除で今後は住宅ローンの金利が上がるでしょうから、今のうちに買っておいた方がお得ですよ~」
という営業トークをする姿が目に浮かびます。
本気でそう言っているのであればただの勉強不足ですし、私がこの記事で述べたような背景を知っているのであれば、自身の営業成績のためなら何でもする不誠実マンです。
もちろん彼らは家を売ることが仕事ですし、とくに不動産営業マンは新卒程度の低い基本給と膨大なインセンティブで給与が構成されているのでしょうから、気持ちは分からないでもないですが…(笑)
ちなみに先ほどの動画でも、(不動産営業マンではないですが)住宅ローン比較サイトを運営するモゲチェックのアナリストが「家は早く買うべき」と述べています。
公共の電波を自社の営業に使わないで欲しいものです。
マスコミや不動産業界の自浄作用が期待できない以上、私たちが気を付けるべきなのは、こういったポジショントークに惑わされずに正しい情報を身に付けることです!!!
とは言いますが、今回はたまたま私が得意な金融分野だったから報道内容のおかしさに気が付けただけで、不得手な分野だったらきっと騙されていたでしょう
あらゆる分野に共通していますが、特定の利害関係を持たない個人・団体による適切な情報発信が行われて欲しいものです。
そして金融分野については自分がその一人になれるように、これからも勉強・活動を続けていきたいなと思います…
では!