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輪廻する宇宙(8)
横山順一著『輪廻する宇宙』の構成は下記の通りです。今回は第五章を描きます。
序章 輪廻転生とは何か 転生者の捜索と科学の方法
第一章 宇宙の中味をさぐる
第二章 宇宙観の変遷 偏見からの解放
第三章 加速膨張宇宙の謎
第四章 ダークエネルギーの正体
第五章 宇宙のはじまり
第六章 宇宙の将来
終章 ダライ・ラマとの邂逅
第五章 宇宙のはじまり①
宇宙膨張をさかのぼる
宇宙膨張をさかのぼり、過去に向かってみよう。光は光速で宇宙空間を進んでくるので、遠くの宇宙を見れば、時間をさかのぼった過去の宇宙の状態を観測することができるわけである。
宇宙の進化を過去にたどると、温度がどんどん上昇していくため、過去の宇宙においては、電子は原子核に束縛された状態ではなく、イオン化したプラズマ状態にあったと考えられる。
このような状況では、光子は、まっすぐに進むことができなかった。宇宙膨張によって温度が下がって電子が原子核に束縛されて初めて、宇宙は電荷を持った粒子のない、いたるところ電気的に中性な状態になり、電磁波はまっすぐ進めるようになったのである。これを宇宙の晴れ上がりという。これが起こったのはビッグバン後38万年頃の温度が絶対温度で3000度の頃のことである。
ビッグバンそのものから来る光を直接観測することはできないが、宇宙の晴れ上がりの時、すなわち誕生38万年後の宇宙から来る光を観測することはできる。
この光は138億光年をかけて地球に飛来してきたわけだが、その間の宇宙膨張によって電波(マイクロ波)の波長に引き伸ばされ、しかも宇宙の全方向がら一様に飛来するので、宇宙マイクロ波背景放射と呼ばれる。
地平線問題と平坦性問題
地平線問題とは、地球上の各点から同時に空を見上げたところ。見える雲の様子は場所によって千差万別なのに、宇宙が晴れ上がる前、宇宙を覆っていた雲はどこもかしこもほとんど一様だという不思議な状態のことをいう。
ビッグバンン宇宙論では、地平線は宇宙年齢に比例して大きくなるのに対し、宇宙空間の大きさやその曲率半径は、万有引力が宇宙膨張を減速するように作用するため、よりゆっくりとしか大きくなれない。
したがって、現在の宇宙半径が地平線より大きいということは、過去の宇宙の曲率半径は当時の宇宙半径より何十桁も大きかったことになる。
なぜこのような状態が宇宙のはじめに実現していたかは大きな謎である。これをビッグバン宇宙論における平坦問題という。