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老死の苦しみと恐れから逃れるには?

欲望、執箸(執着)、恨み、所有欲、色欲などの煩悩は、世界の有様を正しく見ないという無明からくるものだと2500年も前に釈迦は教えを説いていました。

現在でも十分に通用する教えだと思えます。これは、SNS上で、双方ともに自分の正義を振りかざして、お互いを罵りあっている様子を見ていると一目瞭然です。

この無明を原因として苦しみが起こってくるメカニズムを説明した仏教特有の方法として「十二縁起」というものがあることが知られています。これについて仏教学者佐々木閑氏の説明を見てみます。

まず、苦が生じる根本のスタート地点として「無明」があり、以下、「行」→「識」→「名色」→「六処」→「触」→「受」→「愛」→「取」→「有」→「生」→「老死」の順番で展開していきます。それぞれの細かい解釈については意見が分かれているので踏み込みませんが、要するに、無明のせいでものごとの本質を理解していないために、老いや死への恐れ、苦しみが生じる、というプロセスを示しています。

佐々木 閑. NHK「100分de名著」ブックス ブッダ 真理のことば NHK「100分de名著」ブックス (p.46). NHK出版. Kindle 版.

様々あった解釈の中で、空海は次のように説明しています。 

無明(迷いの根本である無知)、行(無明から出てきて次の識を起すはたらき)、識(受胎の初一念)、名色(母胎の中で心作用と身体が発育する)、六入(眼耳鼻舌身意の六根がそなわってまさに母胎を出ようとする位)、触(二・三歳のころ、物に触れるだけの位)、受(六・七歳、苦楽を識別し感受するようになる)、愛(十四・五歳以後、種々の欲があらわれ、苦を避け、楽を求めようとする位)、取(自分の欲しいものに執着する)、有(生存の意で、愛取ともに未来の果が定まる位)、生(うまれて)、老死(歳をとり死ぬ)

空海; 加藤 純隆; 加藤 精一. 空海「秘蔵宝鑰」 こころの底を知る手引き ビギナーズ 日本の思想 (角川ソフィア文庫) (p.93). KADOKAWA / 角川学芸出版. Kindle 版.

【注:六処は六入となっています】

最後の苦しみと恐れは老死というものですが、その真っ最中にいるものとしては、この苦しみと恐れから逃れるには、どうすればよいのかと、必死にもがいているというところです。



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