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輪廻する宇宙(6)
横山順一著『輪廻する宇宙』の構成は下記の通りです。今回は第三章の続きを描きます。
序章 輪廻転生とは何か 転生者の捜索と科学の方法
第一章 宇宙の中味をさぐる
第二章 宇宙観の変遷 偏見からの解放
第三章 加速膨張宇宙の謎
第四章 ダークエネルギーの正体
第五章 宇宙のはじまり
第六章 宇宙の将来
終章 ダライ・ラマとの邂逅
第三章 加速膨張宇宙の謎②
原子を使って宇宙を見る
東京帝国大学教授を定年退職した後に、大阪帝国大学の初代総長になった長岡半太郎博士は、原子核が土星、電子が土星の環のような構造を持っているということを提唱した。この模型はのちにラザフォード散乱の実権によって発見された原子核の存在を見ぬいていた、という点で画期的なものであった。
しかし、電子がニュートン力学に基づいて回転運動し、それにマックスウェルの電磁力学を適用すると、この提唱には難点があると周りの学者から指摘された。そもそもこうしたミクロな世界は、実験的検証ができないから実証科学として意味をなさない、と批判された。そのため長岡は、原子物理の研究を止めてしまった。後で、後悔したそうですが。
世の研究者の中には、評論家然として周りの研究者の行っていることを批判ばかりする人がいるものである。確かに難点を見つけてあげつらうと、批判者はいかにも賢そう見える、
しかし、批判それ自体は何も生み出さない。批判が意味をもつのは、それを克服しようという強い意志とぶつかったときだけである。そして、えてして時代は、批判者が予想するよりもずっと速く巡っていくのである。
(ブルーバックス) (p.94). 講談社. Kindle 版.
【学者の世界も一般社会と同じく、上げ足取り、冷や水浴びせの批判者はいるようですね。X(旧Twitter)で頻繁に見られる現象です】
この難点は、物質粒子には波の性質もあるという量子論によって解決された。
古典論とは。物理量が連続的な値を取るという、我々の日常生活の常識が通用する理論である。
これに対して、量子論は、ミクロな世界を表す微小な物理量には最小単位があり、その整数倍の状態しか実現しないという主張である。すなわち、エネルギーなど全ての物理量は連続的に値を取れるのではなく、飛び飛びの値しかとれない、というのである。
たとえば、時間を計るのにアナログ時計を使うかデジタル時計を使うかを比べてみる。アナログ時計でも連続運針の目覚まし時計は連続的に流れているので1秒よりも細かい単位で時間を読み取れるが、デジタル時計は、それができない。つまり、アナログ時計は古典論であり、デジタル時計は量子論であるということになる。
ストップウォッチを使えば1秒以下も容易に計れるから近似にすぎないのではないかという疑問や、連続運針のアナログ時計でも秒針の太さにより細かい目盛りの時間は計れないという批判もあるが、これはたとえ話しの限界ではある。
だから、量子論というのは決して本来連続のものに何らかの近似を行うことによって飛び飛びにしたのではなく、もともと飛び飛びのものしかないのだ、と横山氏は強調する。
光を分解する
スイスの理論物理学者リッツは、あらゆる元素に対し、原子が放出される光のさまざまな輝線の周波数を整理した結果、各元素について、ある周波数の輝線が観測されたとすると、二つの周波数の和に対応する周波数と差に対応する周波数のところにも、必ず輝線が見られるという法則を発見した。
このことは、原子の内部エネルギーは特定の値を飛び飛びにしか取れず、そのエネルギーの差に対応する周波数しか出ない、ということを示唆している。
ボーアの量子論
デンマークの理論物理学者ニールス・ボ-アは、ある運動量を持った電子は、その逆数に比例する波長の波としての性質を持つと考え、電子が存在できるのは、軌道の円周の長さがその波長の整数倍となるような半径を持った軌道上だけである、と考えた。
ボーアは、背景となる理論があったのではなく、ただの仮説として提案されたものであったが、こう考えると、電子が電磁波を出してその軌道半径が少しづつ連続的に減少しながら潰れてしまう、という長岡の原子核モデルの欠点が克服できると共に、リッツの法則も見事に説明されるのである。
物理学に革命が起こるときには、このように全く自由な発想の下で、一見、空理空論と思われるような議論を展開していき、実験事実や観測事実と比較していくうちに、徐々に新しい理論が全貌を現わしてくるのである。
宇宙のエネルギー組成
現在の宇宙の物質・エネルギー組成は、我々の身体や地球や夜空の星ぼしを構成している元素の原子は、全体のわずか5%足らずでしかない。そして、27%ほどがダークマターさらに残りの68%がダークエネルギーである。
元素が5%程度であるというのは確定的であるが、あとの二つ、すなわちダークマターとダークエネルギーの比率は観測の進展と共に多少の変動がある。