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年間ベスト的なやつ

2022年に買ってよかったものや見つけてよかったものなどをざっくりと紹介。2022年以前にリリースされていたものなども含む。中古盤や古本は割愛。順不同。

Loren Auerbach with Bert Jansch / Colours Are Fading Fast (2016 Earth Records )

年始に購入した際にはもう今年は何も買わずにこのレコードだけ聴いていればいい…などと思っていたがその気持ちも長続きはしなかった。詳しいレビューなどは過去の投稿に書いている。


Aunt Helen / Hey Aunt Helen(2022 vicious kitten)

シンコーが出してたパワーポップガイド本で関口弘先生がシングルを紹介していたニューヨークのバンドの編集盤。唯一のシングルはdiscogsで3万円くらいで売っているのでこの編集盤のリリースは有難く、そして驚いた。しかし大して話題になっておらずリリースに気づいていない人も多いのでは。

唯一のシングル「Big Money」のほかに未発表曲も収録されている。パワーポップというよりニューヨークドールズを地下室に閉じ込めて好き勝手演奏させたような毒々しいハードグラムロックで78年録音だがプロトパンク的な雰囲気がある。やたら手数の多いベースが素晴らしい。また後身バンドのThe ToysやLone Cowboysの音源も収録されているのでお得感もある編集盤。買えるうちに買ったほうがよい。


Versus / Ex Voto (2019 Ernest Jenning)

とても思い入れの深いわが心のバンドとも言えるVersusの再結成2作目。情弱なので3年間このアルバムの存在に気が付かなかったが、bandcampで一聴したろころ自分がVersusというバンドに求めている要素が多く含まれていて、ジャケットは盟友Tae won yu(Kicking Giant,The KG)が描いているので即購入。
若干ヘヴィで長尺な曲が多かった前作よりもポップさとシャープさが増していて90年代の全盛期に近いものがある。Sci-Fiをテーマにしたコンセプトアルバムらしい…。リミッターかけすぎのマスタリングには不満があるがジャケ画が素晴らしいので物としての価値が高く、家にあるのが嬉しい作品。


Guided By Voices / Devil Between My toes (2022 Scat)

2022年も3枚くらい新作を出し、別ユニットの音源も出して相変わらず常軌を逸したリリースを繰り広げたGBVの記念すべき1stアルバムの再発。

ストリーミングやらBOX SETのCDでも散々聴いていた作品だが改めてアナログで聴くとカッコよさが倍増して聴こえた。まだ収録曲数も少なくキャッチーな曲も多いのである意味非常に聴きやすい作品ではあるが、このアルバムだけ聴いてGBVの魅力をわかったような気になってもらっては困る。


Yuko Kono / Fragment (2020 self release)

元my pal foot footのメンバーのソロアルバム。ツイッターのTL上でspecial viewの方がこのアルバムを紹介していて聴いてみたらよかったので購入。今のところデジタルリリースのみ。ここ1年半くらい身につまされて悲しくなったり悔しくなったりするので日本語の音楽はあまり聴かなかったのだがこの作品だけはスッと耳に入ってきてよく聴いていた。

オーストラリア録音でメンバーも現地のミュージシャンと録音された、とても澄んでいて乾いた詩情を携えたサイケデリックフォーク作品。同地で60年代から存在していたtullyやextraditionなど優れたアシッド/サイケフォーク作品と共通する風通しの良さを感じる。


Uni Boys / Do It All Next Week (2022 Curation)

LAのヤングパワーポップグループの3rd(?)アルバム。個人的に思い入れの深いFurtherの主要メンバーだったBrent Rademakerが主宰しているCuration Recordsという何処かで聴いたことのあるような名のレーベルからのリリース。2022年とは思えないジャケット写真や80年代のローカルテレビに出演したパワーポップバンド(The GOなどを参考にしてそう)を模倣したようなPVを見てパワーポップコレクターだった頃の情熱を思い出した。

意図的にLAの先人The Quickのフレーズの引用があったり70's~80'sパワーポップリバイバル的側面は強いが、曲のクオリティは高く中音域を強調したようなミックスは後期のRegistratorsを想起したりもした。地元LAではFlamin' GrooviesやBlack Crowesなど名だたるレジェンドと共演したりしているので今後の活躍に期待大。
LPで買いたいのだが円安の影響で送料込みだと8000円以上かかってしまうので世界情勢を憂うしかない。


つくみず / シメジシミュレーション 03 (2022 kadokawa)

電子書籍で購入したが全巻セットをヤフオクで買ってしまったので紙も所持している。アニメ化もされた前作「少女終末旅行」は終わりに向かって息を弾ませる少女二人のミニマルでドローンな作風が魅力的な作品であったが、現在連載中のシメジシミュレーションは前半にゆるくほのぼのとした学園生活をシュールに4コマで描きつつ中盤から不穏な空気が漂い始め、後半は哲学と文学と科学とシュルレアリスムが容赦なく激突し合うような前後不覚な展開となる巻構成で進められている。

この3巻は2021年に連載されていたものだが、今年の世界情勢を予見するような内容になっていて、秩序を崩壊させようとする者の狂気性と秩序を保とうとする者の無力さがかわいい絵柄でポップに描かれている。
全く終わり方が想像できない漫画なのでこの先が楽しみであると同時に、休載や病みツイートを連発したりすることもある作者の体調や精神状態が心配になったりもする。ゆっくりでいいので無事に作品の完結を願っている読者も多いのでは。来年1月に4巻が出る。


panpanya / 模型の町(2022 白泉社)

発売日に書店で購入。通算9作目の単行本。今作は家をテーマとした作品とたまたま降り立った土地の地名を推理していく「ここはどこでしょうの旅」シリーズを主軸とした短編集。

panpanyaの作品はこの世で一見無駄と思える物事や当たり前と思い込んでいる事象に対して、この上なく馬鹿馬鹿しいアイデアや斬新すぎる着眼点、常軌を逸した謎の行動力を使って対象物に新鮮な光を当ててくれる。言うなれば読むタモリ倶楽部。新刊からでも過去作からでもどこから読んでも安定した面白さと鋭さをキープし続けていることが凄いし、信頼感も年々増していく。


ab(阿部共実) / ガラグロガラゲロ2 (2022)

ツイッターやニコニコ漫画などで密かにUPされている阿部共実先生の変名による漫画。現在商業誌に連載されている「潮が舞い子が舞い」も愛読していて今年出た8巻(帯文:鈴木もぐら)も購入済みで一生終わって欲しくないと思える数少ない漫画ではあるが、出版社や編集者からのしがらみのない状態で自由に描かれた「ガラグロガラゲロ2」をあえて紹介してみる。無料で読めるし。

基本的には3~4人のヤベー奴らがSNSやらゲーム実況やら俗っぽいものについて語り合うという会話劇であるが、ズレまくったボケと冷徹なツッコミの絶妙な掛け合いや展開はほぼM1である。ヤフコメ民が一生到達できないであろう鋭い着眼点とワードセンスを内包したユーモアは現代のネット社会への痛烈な皮肉となっている…などという批評すら馬鹿らしくなるような脱力具合が心地よく更新されると嬉しい。


ユズキカズ / ヤナギホールで会おう (2022 青林工藝舎)

2022年にユズキカズの単行本が新たに出版されるとは驚きだった。

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