『韓国社会の現在-超少子化、貧困・孤立化、デジタル化』(春木育美)
現代日本が抱える問題は枚挙にいとまがないわけですが、お隣の韓国も同じようです。
具体的に何がそうなのかといえば、少子化問題や格差問題が挙げられます。少子化問題に至っては韓国の方が日本よりも先に進んでしまっている状況とのこと。
少子化問題においては今後韓国がどのような道を歩んでいくのかを観察することにより、日本はそれを参考に対策を考えるので、お隣の国の状況分析は大事だというのが著者の話です。
韓国は日本よりも少子化が進んでいる
なぜそうなってしまうのか。日本よりも韓国は晩婚化が進み、出生率も日本より低いそうです。政府は少子化対策にかなり手を打っているようで、
文在寅大統領は2017年の就任直後の演説にてこう憂いたそうです。
「この10年間で少子化対策に130兆ウォンも費やしたのに、まったく効果がなく解決する兆しもない。このままでは早晩、国家的な危機を迎える」
2018年に出生率は0.98と、初めて1を下回り世界最低水準を記録してしまいました。なぜ対策しているのにそうなってしまうのでしょうか。
その直接の原因は、妊娠可能な女性人口の減少と、未婚者の増加および晩婚化です。
25~29歳の韓国女性の77%が未婚。35~39歳になっても、5人にひとり(19・2%)は結婚していないそうです。※韓国統計庁「2015年人口住宅総調査」
男性の未婚率が高くなる理由は以下であり、格差社会の影響があるようです。
「就職できないから」
「安定した職に就けないから」
結婚しているのはどのような男性かといえば、20~30代でも年収が上位10%に入っている男性の82・5%結婚しています。つまり未婚か既婚かの分かれ目となる最大要因は所得なのです。
理念なき政策による保育所乱立、その弊害
女性はといえば、育児に対してネガティブイメージが強く、韓国では「家事や育児は女性がするもの」という認識が残っているそうです。また「育児において人生の全てを犠牲してしまう」という認識もあり、結婚しないという選択をとってしまうのとのこと。
そういうなかでも韓国政府は保育所増やしたり、育休取得を推進したり、いろいろやってるようですが、結果は出ていません。保育所を増やすための補助金を韓国政府はばら撒きましたが、そこで何が起こったかといえば、保育所ビジネスが横行し、質の悪い保育所が乱立したのそうです。
収益を上げるために保育士を最低賃金で雇ったり、保育士の数を減らしたりして、質の悪い保育所が乱立してしまい、暴行などの問題が発生しました。
著者は理念なき政府の対策に問題があると指摘します。日本にも言えることだが、と前置きし、安易に保育園の数を増やしたり無償化を謳う前に保育士の待遇改善が先ではないかとも指摘しています。
よその国の事情も勉強して日本はどうするか考えたい
他にもいろいろ問題はあり、韓国の未来は明るいものとはいえません。ただ日本もよそのことを言える状況ではありませんね。著者曰く、隣国同士、知恵を絞りあって社会課題に協力できる関係を形成すべきではないかと述べて本書は終わります。
内向きな日本のニュースや問題について考えるのは大事だと思います。ただそれと併せて他の国ではどうなっているのかを比較して考えることは大事ですよね、ということで今回はお隣の国の事情を勉強してみました次第でございます。