帰社日と36協定・変形労働時間制の関係について

そもそも帰社日とは

客先常駐を行っているIT企業では、常駐している社員が一定の期間ごと(企業によって異なる)に自社に集まる日を設けている場合があります。
この自社に集まる日を帰社日といいます。
※企業によってはこれを帰社日と呼ばず、別の名称を用いることもあります。

帰社日はいつあるの

帰社日がある日・時間は企業によって様々です。
よくあるパターンとして、以下が挙げられると思います。
1. 平日にフルタイム
2. 平日の終業時間前に開始し、終業時間(定時)に終わる
3. 平日の終業時間前後に開始し、終業時間後(定時後)に終わる
     3-1. 終業時間前(定時前)に開始
     3-2. 終業時間後(定時後)に開始
4. 土日祝日に半日
     4-1. 始業時間から数時間
     4-2. 所定労働時間の途中
     4-3. 終業時間の数時間前から終業時間
5. 土日祝日にフルタイム

上記各パターンにおける帰社する時間帯を図に示すと以下のようになります。黄色の部分が帰社する時間帯です(労働時間が09:00~18:00の場合)。

パターンによってエンジニアの稼働を増やさなかったり、逆に常駐先の稼働を減らさなかったり(エンジニア自体の労働時間は増える)します。
※それぞれのパターンに対する是非は、ここでは考察しません。

労働時間的に違法に見える帰社日のパターン

労働基準法第32条には以下のように記述されています。

1. 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
2. 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

ところで、所定労働時間が1日8時間の場合、パターン3については、1日の労働時間が8時間を超えます。またパターン4と5については、平日に祝日がない週に帰社日があると、1週間の労働時間が40時間を超えます。
そのため、これらのパターンについては違法ではないかと思うかもしれませんが、必ずしも違法とはなりません。違法とならない方法はいくつかありますが、ここでは36協定と1年単位の変形労働時間制について取り上げます。

なお、これ以降の内容は、所定労働時間が1日8時間であるものと仮定しています。

36協定

簡単に言うと、法定労働時間(1日8時間・1週40時間)を超えて労働させるときに、あらかじめ労使間で結んでおき、労働基準監督署に届け出る協定のことです。この協定を結んでおくことで、労働者が法定労働時間を超えて働けるようになります。

この協定を結ぶことにより、定時後あるいは土日祝日に帰社することが合法になります。
なお、帰社によって所定労働時間を超えた部分については、その分を時間外手当(残業代)として支払うか、あらかじめ固定残業代(みなし残業代)として支払う必要があります。支払われていなければ違法です。

1年単位の変形労働時間制

1年単位の変形労働時間制については、以下が参考になると思います。

東京労働局, "労働基準法のあらまし", pp.6-7, 2015.

東京労働局, "一年単位の変形労働時間制 導入の手引き", 2015.

上記の「労働基準法のあらまし」では、「1年単位の変形労働時間制の要件」(以下、要件と記載)は以下のようになっています。

1. 対象期間は、1か月を超え1年以内とすること。
2. 対象期間を平均した1週間あたりの労働時間は40時間以内とすること。
   (特例措置事業場においても40時間以内とする必要があります。)
3. 労働時間の限度は1日10時間、1週52時間までとすること。
4. 対象期間における労働日数は1 年間に280日以内とすること。
   (対象期間が3ヵ月以内の場合は制限がありません。)
5. 連続して労働する日数は原則として最長6日までとすること。
6. 1日及び1週の所定労働時間を法定労働時間以内で特定した場合には、法定労働時間を超えた時間について、法定労働時間を超えて特定した場合は、その所定労働期間を超えた時間について割増賃金を支払うこと。
7. 対象労働者の範囲、対象期間及び起算日、労働日及び労働日ごとの労働時間、有効期間、特定期間(を定めた場合はその期間)を定めた労使協定を締結し、これを労働基準監督署長に届け出ること。
8. 常時10人以上の労働者を使用している事業場については、1年単位の変形労働時間制を採用する旨を就業規則に記載し、これを労働基準監督署長に届け出ること。

この制度を帰社日に利用した場合、以下のようになります。
・帰社日があるの労働時間を、終業時間より超過している分だけあらかじめ伸ばす(パターン3)
・帰社日があるの労働時間を、終業時間より超過している分だけあらかじめ伸ばす(パターン3・4・5)
・上記2つによって伸ばされた労働時間は、別の日を休日にするなどして年間労働時間・年間労働日数が要件を満たすように調整する

この制度を利用した、帰社日のパターン5の導入例を次で示します。

1年単位の変形労働時間制の導入例

2018年度(2018年4月~2019年3月)のカレンダーにおいて、帰社日と休日を以下のように定めるとします。
・帰社日は毎月1回とし、月末の土曜日にフルタイムとする
・ただし、11月と12月は連休と年末年始の兼ね合いで、その1週前の土曜日を帰社日とする
・上記以外の土日祝日は全て休日とする

すると、以下の画像のようになります(休暇は割愛)。

1日8時間労働であれば、年間所定労働日数の最大は260日となります。この例では年間所定労働日数は259日であり、1週の最大労働時間は48時間であることから要件を満たしています。

また、1日に残業を行わない場合、1週の労働時間が48時間となっている週についてはその週で48時間を超えたときに、それ以外の週では40時間を超えたときに初めて割増賃金が発生します(要件の6)。そのため、上記のカレンダーで残業や休日出勤を全く行わなかった場合、残業代は発生しません

まとめ

・帰社日がある日・時間は企業によって様々
・帰社日のパターンによっては1日・1週の労働時間が法定労働時間を超える
・上記の場合でも36協定や変形労働時間制の導入などによって必ずしも違法とはならない
・36協定を結んだ場合、帰社によって法定労働時間を超えた場合は残業代が発生する
・1年単位の変形労働時間制を導入した場合、残業をしなければ残業代は発生しない

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