Kodak Retina IIa
35mmフィルムカメラの元祖はライカであり、その後コンタックスがライバルとして登場しましたが、もう一つ忘れてはいけないのがコダックのレチナというカメラです。
ライカやコンタックスは当時高級カメラでしたが、低価格なレチナの登場によって35mmカメラが大衆化したとされています。レチナは価格を抑えるためにレンズ固定式とし、レンズシャッターや蛇腹など、すでに確立されていた機構を採用しています。一方でエクターなどの優秀なレンズを採用しており、写りに妥協はありません。
また、現在一般的なパトローネ入りフィルムは、レチナ用として初めて登場しました。それまでは、長巻フィルムを専用カートリッジに詰め替えて使う必要があったのです。パトローネ方式は非常に便利だったので、レチナ以外のカメラにもすぐに普及しました。まとめると、レチナは35mmフィルムカメラの低価格化とパトローネ方式の普及に貢献した、歴史的なカメラだと言えます。
1934年に初代レチナが登場し、それに改良を重ねながら多くのモデルが生まれましたが、私は1951年発売のレチナIIaというモデルを購入しました。私が入手した個体にはクセノン50mm F2のレンズが付いています。
レチナIIaは距離計付きで、セルフコッキング式の巻き上げレバーが採用されたのが特徴です。セルフコッキング式とは、フィルムの巻き上げと同時にシャッターチャージもされる方式のことです。今では当たり前の機能ですが、蛇腹カメラでこれを実現するのは難しいことだったようです。
蛇腹カメラなのでクラシカルな見た目ですが、デザインは洗練されていて筆記体のロゴからは洒落た印象も受けます。ただし、前蓋を開けたときに右手で掴める部分が小さく、ホールディングはしにくいです。ファインダーは小さくて覗きにくいですが、二重像によるピント合わせは正確に行えます。
(ライカM3登場以前のカメラはどれもファインダーが小さく、メガネ使用者にとっては辛いです)
前蓋を閉じるとコンパクトになり、レンズキャップも必要ないので携帯性は抜群です。サイズを比べてみると、さすがにローライ35よりは一回り大きく、バルナックライカに近いサイズ感です。
裏蓋は国産カメラのように蝶番でパカっと開くので、フィルム装填はしやすいです。レチナに限った話ではありませんが、ドイツ製のカメラは基本的にモルトを使わずに遮光するので、さすがだなと感じます。
作例
以下はレチナIIaで撮った写真です。
フィルム:ILFORD FP4+
フィルム:FUJIFILM 400