世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ
京都市在住の大学法学部の3年生の短期インターンを受け入れました。
求人サイトから応募をされ、WEB面談の後、熱量の高いメッセージをいただき、受け入れを決めました。
単身で旅費は全て自腹。政治に興味があり地方自治体の実情を知りたいという動機だそうです。行政を中心として1日3〜4件を周り、1回1時間以上の聴き取りをされました。見聞したもの全てが新鮮で、授業で学ぶことしかなかった知識が一気に現実になったようです。
インターンの受入れは、各方面の方のご協力があって実現します。今回、受入をして沢山の方から想いと様々な視点からのお話を聴くことができました。また自分自身、話をすることで、情報が整理されたり、改めて自分の考えていることに向き合うことができ、よい経験になりました。
彼女は滞在中に2度、「メキシコ人漁師とアメリカ人旅行者」という話を別の人から聞いたそうです。そして、自分はこの600人の島にこんな仮説を立ててやってきたという話を聞かせてくれました。
「今、アメリカの若者が資本主義から社会主義に傾倒し始めていて、若者の移住が増えているこの島に移住する動機は、もしかしたらなにか繋がるものがあるのかも知れないと考えました。」
なんとも大胆な仮説です。そう思わせた理由は何だったのでしょうか?
この島は人口の約3分の1が生産年齢人口にあたり、その2分の1が公務員や外郭団体の職員です。島全体が子育てに協力的で、仕事は定時で帰る人がほとんど。18:00に街から人影が消えます。
Amazonや楽天の商品は離島でありながらそれなりの価格とスピードで届きます。輸送費の分、島内物価は高く心理的に買い控えをする。それでも最低限のサービス、不便さが当たり前の生活は消費ストレスからの解放感が強いかもしれません。
民間企業が少ないため競争原理が働きにくい。それは勿論、暮らしの節々にも表れます。そう考えると都市部と比較すると社会主義の仮説とメキシコ人漁師は遠い異国の話ではないのかもしれない。と思えてきます。
現代は良くも悪くも個人は自らの意思によって所属を選べる様になりました。常に将来不安が漂う日本社会において、国がスキルアップやリスキニングに投資をするように促しています。それは不況と自由競争が産む個にフォーカスされた生き残り戦略です。
この国で、「わたしたち」という主語は徐々に失われつつあります。この大きな流れを生きる前提条件にしなければならない社会は、内なる豊かさの崩壊と言う危うさが漂っています。
彼女の仮説を聞いてウルグアイのムヒカ大統領の演説(2012年)を思い出しました。
豊かさを問い直さない限り、大きなルールで社会の構造を変えることはできないのではないか?そんな問題提起をした演説です。
不便さがそのまま豊かさであるとは言えません。この島に移住してその日、自分たちが食べる分だけ魚を獲って暮らすことは相当に難しい。また、社会が最低限の暮らしを保証できなくなった今、市場が個人に開かれ、競合や脅威、予測不能な事態がいつ何時おこるかわかりません。
しかし、「脅威に対する準備」と「豊かさを問い直す」の意味は「わたし」と「わたしたち」くらいに大きく異なると思います。メキシコ人漁師とアメリカ人旅行者が共生できる環境とは?地球環境含めてその在り方を考えることが、持続可能な未来をつくるヒントなのかもしれません。