補陀落追想【♂1♀1】

◆タイトル…補陀落追想(ふだらくついそう)
※作:浅沼諒空

◇粗筋
 友人の納骨式へ出席するために東京から訪れた女性。その土地をずっと離れずに生活を続ける男性。
ふたりの時間が、ある日偶然クロスした。本当に、ただそれだけの……話。

◆登場人物…2人(♂1♀1)
来訪客…♀推奨、20台前半〜自由。東京からやって来た。
店長…♂推奨、地元で姉妹が上京し亡くなった経験を持つ。

◆上演時間…約20〜25分


◇以下本編
【場所は日本の地方都市。道端で女性が一人、懊悩に身を捩っている】

来訪客「(溜め息) どうしよう~どこに置いて来ちゃったんだっけ……どうしてこういう時って前後の記憶が曖昧になっちゃうのかなあ……はあ~……」

【男性が近くを通りかかる。見知らぬ人間が派手に独り言を呟いてるのを見とがめて、思わず足を止める】

店長「あのう……。」

来訪客「ううん……。」

店長「……あのー?」

来訪客「(まだ一人でぶつくさぼやいている)」

店長「……あのっ!」

来訪客「は、はいっ?な、何かご用ですか?」

店長「はい、先程から道端でうんうんうなっているのが見えたから、何かあったのかな、と。どうかしましたか?」

来訪客「(知らない土地で不測の事態が起きたので不安で半泣き)は、はい~実はその、この辺で落し物をしちゃって……いえ実はこの辺かどうかもアヤフヤなんですけど……」

店長「はあ、そんなに大切なものでしたか。」

来訪客「はい。無くしちゃったら自分の中であまりに情けないというか、申し訳ないというか……。」

店長「分かりました。よかったら、私も一緒に探しますよ。」

来訪客「ありがとうございます。でも、いいんですか?ご用事とか……。」

店長「大丈夫ですよ。それで、何を落としたんですか?」

来訪客「えーとですね、なんというかスベスベしてツルツルした布でくるんであって。中身はこれこれこうで……。」

店長「布……?布……ああ、もしかして袱紗(ふくさ)の事ですか?」

来訪客「あー!はい、そうです。多分!それです!」

店長「多分って……んん?(はっと思い出す)ああ~、それってあなたのだったんですか」

来訪客「ふぇっ?知ってるんですか?」

店長「ええ、あなたが仰っていたような品物がさっき駅の(※アドリブ)に落ちていたので、近くの交番に届けておきましたよ」

来訪客「そ、そんな所に!?でも見つかっててよかったぁ~」

店長「本当によかったですね。じゃあ交番までご案内しましょう」

【二人、交番まで引き取りに行く】
【しばらくして、引き取った後の二人】

来訪客「本当にありがとうございました〜」

店長「いえいえ。まあ普通はそんな大事なものをあんなところに落っことしたりはしないと思いますけど……」

来訪客「うう……以後気をつけますぅ。いつもはここまでひどくは無いつもりなんですけど……。」

店長「ふふっ、そうですね。慣れてない土地に急に来て緊張すると、ポカしちゃいますよね。」

来訪客「そ、そうですよねっ。……って、私が他所から来たってやっぱり分かっちゃいましたか?」

店長「ええ。雰囲気とか、お話してる時のイントネーションとかも少し違うから、外から来た人なんだなってすぐ分かりますよ。どちらからいらしたんですか?」

来訪客「東京です」

店長:「(何かを思い出したように、少し声が堅くなる)東京から、ですか……。」

来訪客「(相手の表情の変化を勘違いして)ああっ、もしかして東京お嫌いでしたか!?でっ、でもでも本当はそんなにはテレビとかネットで言われてるみたいなイメージでは無くてですね……」

店長「(食い気味に)あ~、いえいえいえ、そういう訳じゃないんです。ただ結構遠くからわざわざお越しなんだなって思いまして、そんなに深い意味はないんですよ。」

来訪客「あ……すいません、早とちりをして……。」

店長「いえいえ、気にしないで下さい。……失礼ながらそのご様子だと、法事に行かれる途中でしたか?」

来訪客「はい。」

店長「ご身内のどなたかが?」

来訪客「友人のです、実家がこちらだと聞いたので。見つけていただいたこれも、その人の遺品なんです。」

店長「お友達が、東京からわざわざ相手の地元まで出向いて?珍しいですね。」

来訪客「ええ、まあ、職場の同僚で、色々とお世話になった人だったんです。遺族の方からご連絡を頂いて、じゃあ折角だから行かせて貰おうって。これが親戚のだったら面倒臭いから適当に理由つけてすっぽかすんですけど……って、なんだか私、一人で喋りまくってますね、ごめんなさい。」

店長「……こちらこそ不躾な事を色々尋ねてしまってすいません。……そうだ、もしご用事が済んで時間があるようなら、私がやってる喫茶店にいらっしゃいませんか?」

来訪客「喫茶店やってらっしゃるんですか?素敵ですね!でもいいんですか?」

店長「はい。あいにく名刺を切らしてますので、店名と番地のメモを差し上げます。まあ、こんな風に出会ったのも何かの縁という事で、もしよろしければ。」

来訪客「ありがとうございます。きっとお伺いしますね。」

【翌日。先程ささやかな人助けをした店長が一人で切り盛りしている喫茶店】
【不意にドアベルが鳴り、来訪客の存在を知らせる】

店長「いらっしゃいませ。……ああ、あなたは昨日の……。」

来訪客「どうも、お邪魔します、その節はありがとうございました。お言葉に甘えて、来てしまいました。」

店長「いえいえ、お越しいただいてありがとうございます。メモの案内が簡単過ぎたから、迷ったりはしませんでしたか?」

来訪客「頂いたメモ、凄く分かり易かったです。」

店長「この時間帯は忙しくありませんから、どうぞゆっくりしていってください。」

来訪客「はい、そうさせていただきます。」

店長「……と言うか、まあ、今のところ本日最初のお客さんなんですけどね。」

来訪客「んん~……静かで落ち着ける、よいお店だと思いますよっ!」

店長「……ははは、いつもはこうじゃないんですけどね。たまに、こうして誰も来ない時間がポコっとできちゃうんですよ。それでも、なんだかんだで色んな方々に贔屓にしてもらって、何とかやってます。」

来訪客「そう言えば駅前は結構大きくて栄えてる感じだったのに、有名なチェーン店はあまり見ませんね。」

店長「そうですね、たまに新しく出店してきたりもしますが、中々定着しないですね。この辺の人間は目新しいものを毛嫌いするみたいで……少し閉鎖的というか排他的かなと思ったりもしますが。」

来訪客「そうでしたか。でもなんかこう、地域のみんなで団結してるって感じですね。」

店長「ううん、まあそうとも言えますかね。そのお陰でこうして営業していられる所もあるから、一概に良いとも悪いとも言えませんね……そう言えば法事は無事済みましたか?」

来訪客「はい、おかげさまで。」

店長「故人の思い出の品を無くしそうになった話は……」

来訪客「しました!話しました!ご家族や住職さんにすっごく笑われちゃいました。あー恥ずかしかった。」

店長「そうでしたか……まあ、せっかく東京から遺品を持って来たのに改札出て早々おっことしちゃうんじゃあ、ねえ……。」

来訪客「お願いだからこれ以上は責めないで下さい~。あっそうだ、わ、私はお客様なんですよっ。」

店長「そうですね、お客様への無礼は差し控えましょうか。実はね、私の身内も東京へ出てたんですよ、妹なんですけど。それをちょっと思い出してしまいまして。」

来訪客「そうなんですか~。もしかしたら、私も妹さんと向こうで会っていたかも知れませんね。今は何をしていらっしゃるんですか?」

店長「……もう、亡くなりました。」

来訪客「……そうでしたか、不躾な事を聞いてしまってすいません……」

店長「いえ、お気になさらないでください。」

来訪客「あのっ、もしかして……まさかご身内の方って……!

店長「あー、いえ、妹が死んだのはもう三年程前でして、既に埋葬も済ませています。」

来訪客「あ……。」

店長「ですのであなたが今想像されたような、ウチの妹とあなたのご友人が同一人物……なんて事は無いですよ」

来訪客「そ、そうでしたか、そうですよね~いくらなんでもそんな偶然無いですよね~……また早とちりしちゃいました、変なな事ばかり言っちゃってすいませんっ!」

店長:「ははは、そんな、サスペンスドラマじゃないんですから。現実はそんなに面白い偶然なんてありませんよ。」

来訪客:「ですよねー、あはははは……。」

店長「家族の誰にも何の相談もせずに急にぷいっと飛び出していったもんだから、驚きましたよ。東京って、田舎者からしたらやっぱり独特のイメージがあるというか、惹かれる何かがあるみたいですねえ。」

来訪客「(ぼそっと呟く)なんだか、似てるなあ……。」

店長「……?」

来訪客:「あ、ごめんなさい。なんでもないです」

店長「……」

店長「あの、よかったら、そのお友達のお話を聞かせてくれませんか?」

来訪客「えっ?あの人の話ですか。でも私話すの上手じゃないし、知らない人の事を聞いてもそんなに面白くないかも知れませんよ?」

店長「いいんです、どのみちお店も今のところは暇ですし、なんだか興味が湧いて来ました。代わりにコーヒーを一杯サービスって事で。」

来訪客「はいっ、それでは……なんていうか、結構変わった人でしたね。ちょっと醒めてるっていうか、格好付けるの好きだったんですよねー。」

店長「こんなド田舎から出でったのにねえ。見知らぬ土地で無理してらっしゃたんじゃないですかね?」

来訪客「そう……だったんですかね?」

店長「無理してでも出ていきたい場所だったのかも知れませんがね」

来訪客「またまた、いい所じゃないですか。」

店長「……コーヒー、お待たせしました」「

【店長、来訪客の前にコーヒーを置く】
来訪客「ありがとうございます、いただきます」

店長「お話の続き、お願いします」

来訪客「それで、色々な事を多角的に考えるっていうか、人とは違う角度で掘り下げたりするのが好きでした。だから話してても新鮮で楽しかったです。一番印象に残ってるのは、ふたりでランチしてる時に『人生の最後に一言言い残すなら何ていうか』って聞いてきたんです。まじめな顔して聞いてくるから、私一生懸命考えたんですよ。」

店長「なるほど。」

来訪客:「それで、私だったら……私だったら『ありがとう』って言うなって答えたんです。」

店長「……ほほう。」

来訪客「そしたらその人、何て言ったと思います?……『カワイイ事言うんだね、まだまだ子供だからかな~』って鼻で笑ったんですよ!しっつれーですよねー自分から話振っといて!」

店長「はっはっは。」

来訪客「そうだ、店長さんだったらどうですか?その時何て言いますか?」

店長「うーん、どうでしょう、パッとは思い浮かばないですねー。恥かしながら日々の暮らしで精一杯なんで、現実離れした考えに耽ったりはしないクチですね。」

来訪客「確かに、その人は生活感無かったですねー。でもねー、実は案外寂しがりやだったんじゃないかなって私は睨んでるんですよー、ふっふふふ。」

店長「それでもわざわざ一人で上京するなんて、度胸がありますね。」

来訪客「何かしたくて、じっとしていられなかった、そう言ってました。故郷じゃ出来ないような、色んな事にチャレンジしてみたいって。子供の頃から胸の中がモヤモヤしてて、それをどうにかしたいとずっと思いながら過ごしてたって。」

【店長、突然皿を落とす。陶器の割れる鋭い音が店内に響く】

店長「(突然笑い出す)」

来訪客「て、店長さん?どうしたんですか?お皿落とされたみたいですけど」

店長「ああ、失礼しました……何かしたくてじっとしていられなかった、ですか……しかし、それってそんなに素晴らしい事なんでしょうかね?」

来訪客「えっ?」

店長「いえ、そういう話ってやたらと美化されてますけど、要は自分の人生を担保にして、後先考えずに負けが見え見えのバクチを打つのと同じじゃないですか。それってそんなに格好良いんですかね?」

来訪客「ううん……格好良いかどうか、とか素晴らしいかとか、考えた事無いです。それを言ったら、どんな生き方にも、そういう所があるんじゃないでしょうか?

店長「身よりも無いところに一人で無計画に突っ込んでいくような奴と、勝手知ったる場所で、信頼できる友人知人に囲まれて過ごしている人たちとを簡単に比べられますか?ああ多分そこかも知れませんよね、今あるもの、恵まれてるものを放り捨てるのって、持てはやされ易いのかなあ。」

来訪客「それは……そうかも知れませんけど……。」

【店長の声と表情から、皮肉めいた笑みが消える。】

店長「貴方達は東京に……華やかな都会に住んでいます。きっと何でもあるんでしょう、関心を惹くもの、刺激的なもの、気持ちを湧き立たせるもの。こんな片田舎からでも良く見えますよ、そういう情報はキラキラしてて目立ちますから。そうやって街灯によって来る蛾みたいに引き寄せられていく連中が後を絶たないでしょうね、そちらは。そういう連中を見てると退屈しのぎにはなるでしょう?」

来訪客「そ、そんな言い方しなくても……。」

店長「似たようなものでしょう? そうやって集まった連中は勝手にもぞもぞ蠢いて力尽きたら、貴方達が知らない間に勝手に消えていく訳です。多過ぎて気にも留めないくらいでしょうね。何かを見つけられれば大ラッキー、でもそんな奴は一握りでしょ?」

来訪客「……。」

店長「……でもね、私達のように生まれ育った土地から簡単には離れらない者からしたら、そんなものは空々しくて仕方ないんですよ。肉親がいきなり知らない土地へ飛び出して行ったと思ったら、今度はいつの間にか知らない場所で死んだと聞かされた時の私達の心境を、想像できますか?」
店長「自分たちは奪われたんだと……ずっと一緒に暮らしてきた肉親を奪われたんだと……そう思わなきゃやってられない人間だって実はいるんですよ。」

来訪客「……店長さんの妹さんは、どんな方だったんですか ?」

店長「……お話を聞いてたら、あなたのお友達と似てたみたいですね、考え方というか……夢見がちな奴でしたよ。ここじゃなければきっと何かが出来ると信じ込んでいました。結局何もできないままだったみたいですけど。」

来訪客「妹さんは、上京して何か辛い思いをしてたとか、そういうのを聞いた事はあったんですか?」

店長「分かりません、何も。たまに私には連絡がありましたけど、それもせいぜい世間話くらいでした。特に何も無いから何も言わなかったのか、身内には言いたくなかったのか、私もあえて突っ込んだ聞き方はしませんでした。こういう時、身内は応援してあげるべきなんでしょう?その時はもうお互いいいトシだったし干渉するものでも無いでしょうし。」

来訪客「……昔はもっと沢山、色々な話をしてくれたのに、って?」

店長「……!」

店長「……ええ。もしかしたら本人は、そういうベタベタした距離から離れたかったのかも知れない。あいつにとってこの町は、最初から居場所では無かったのかも知れない。そう思うようにしました。」

来訪客「……そうですか。」

店長「ある日突然、死んだって連絡が来ました、警察から。事故だって。身元がわかって実家へ連絡が入るまで数日かかりました。だから向こうで何をしてたのかも、ほとんど何も知らないんです。……取り敢えず、しょげこんだ家族を無理矢理東京まで引っ張っていって、着いたらもう火葬してもらっていたんで、遺骨を受け取って帰りました。」

来訪客「……大変でしたね。」

店長「すいません。昨日あなたを見かけた時、すぐに他所から来た方だと分かりました。お話を伺ってあなたが東京から来たと聞いた時、真っ先に妹の事が浮かびました。そうしたら、ずっと押し込めてたものが頭の中に沸いて出てきて……」

来訪客「だからお店に呼んでくださったんですね。」

店長「……はい。本当は少しだけ向こうの話を聞きたかっただけなんです。こんな愚痴を見ず知らずの方に聞かせるつもりは無かったんです。そんな事したって仕方ない、補陀落(とおく)へ逝ってしまったモノは還らない。分かってるんです。」

来訪客「……いいえ、確かに言う通りかも知れません。もし私が店長さんの立場だったら、やっぱり冷静でいられるかどうか分からないし、色んな所から色んな人が来て、自分の夢を追って、でもいつの間にか居なくなって会えなくなって、そういう事一杯あるから……もしかしたら麻痺しちゃってる所、あるかも知れません。」

店長「……。」 

来訪客「でも私は、会えて嬉しいなって、本当に良かったなって、今でも思ってます。無意味な事じゃなかったって。」

店長「……?」

来訪客「私の友達や、店長さんの妹さんが、本当はどんな気持ちだったかなんて分からないけど、二人に出会えて良かったと思った人達は、きっといたはずです。だって」

店長「……だって?」

来訪者「……だって私がそうだもの。一緒にお仕事したり遊びに行けたりして楽しかったもの。色々な話が聞けて嬉しかったもの。」

店長「……。」

来訪客「だから私は、あの人にもう一度『ありがとう』って言いたくて、ここへ来たんです。あの人のご家族にも言いましたよ、私が知ってる色んなこと。それはもう洗いざらい、かっこつけの癖にどんなドジをしたかとか、どんな風に私をからかったか~とかも!だから私は世界中の人に言えますよ。あの人が飛び出した事が間違ってなんか無かったって。愛してくれたり心配してくれる人達が一杯居た場所を飛び出した事が、凄く勇気が要って、凄く大変で、だけど凄く意味がある事だったって。」

店長「……。」

来訪客「でも、店長さんともこうしてお話できて、よかったです。」

店長「えっ?」

来訪客「私の側にいる人達は、ドラマとかゲームの中のキャラクターみたいに突然現れたり誰かに用意されたんじゃなくて、色々な人達の想いや時間を沢山背負ってるんだなって事を、店長さんに改めて教えてもらった気がします。 忘れちゃいけない事だけど、気をつけてないと忘れてしまいそうになるから。」

店長「教えてって……私のはただの愚痴とか因縁つけてるようなものです。それは、ただの勘違いですよ。」

来訪客「いいんです、私はそう思ったんですから。だから気にしないで下さい。少なくとも、店長さんが妹さんのことを大事に思っていた事も、ずっと心配していた事も、力になれなかったかも知れないって悩んでいた事も、それは全部本当の事でしょ?」

店長「ええ、いや、まあ、その……。」

来訪客「ああ~、何でここまで来て言い淀むんですか~?全部嘘だったんですか?」

店長「う、嘘じゃありません。」

来訪客「じゃあ、私の言ってる事が正しいって事で、いいですよね?」

店長「(苦笑交じりの溜め息)そうですね。……妹にも、あなたみたいに想ってくれた友達が、いたでしょうか。

来訪客「絶対いましたよ!」

【来訪客、コーヒーを飲み干す。店長はその様子を見つめている】

来訪客:「……コーヒー、美味しかったです。ご馳走様でした。」

【来訪客、席を立つ。】

店長「あ、あのっ!」

来訪客「(立ち止まって振り返る)店長さん?」

店長「さっきの質問、最期に伝えたい言葉があるとしたら。」

来訪客「……。」

店長「私も、ありがとうと、最後にそう告げると思います。同じ時間をすごせた事に、感謝を伝えたいはずだと、そう思います。貴方のお友達も……私の妹も、きっとそうだったように。」

来訪客「……はい!」

―――終幕。

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