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少女は王妃となり民族を救った / #逆噴射小説大賞2024

 これは、紀元前5世紀、東はインドから西はエチオピアまで127州を統べる大帝国ペルシャで、あるユダヤ人の父娘が同胞を救った物語である。それは、ペルシャ帝国4代目の王、アハシュエロス1世の治世3年目、紀元前482年から始まる。

「ハダサ、早く用意しなさい。王の祝宴に遅れるぞ」
「モルにい、女の子は出かけるまでに時間がかかるのよ」
「そのモルにいという呼び方はやめなさいと言ってるだろ。お父さんと呼びなさい」
「だって、小さいころからモルにいって呼んでたんだから急にはムリよ。それよりモルにいこそ、私のこと、ハダサって呼んでるじゃない! ペルシャでの名前はエステルよ」
「わかった、わかった。ハダサ、じゃなかった、エスティ。いいから手を動かしなさい」

 モルにいと呼ばれた父親の名はモルデカイ。彼は叔父叔母が亡くなったとき、娘のエステル(ハダサ)を引き取り養父となった。幼いころから年の離れた兄のように慕ってきたエステルはモルデカイのことをなかなかお父さんと呼べずにいた。二人はペルシャの都、スサに住んでいた。

「いいか。エスティ。王の祝宴では、私たちがユダヤ人であることを明かしてはならんぞ。宮廷にも我らの祖国イスラエルに国を滅ぼされて恨んでいる者がいるかもしれんからな」
「わかってる。それと、イスラエルの神、主の教えを忘れるな、でしょ」
「そうだ。『1に主のため、2に主の民のため、3に主の民に良くしてくれる人々のため、心を尽くして仕えることを忘れるな』だ」

 王はギリシャ遠征に行く前に、スサに住むすべての民を招いて、王宮の園の庭で祝宴を催した。7回に分けて催されたその最終日に二人は招かれていた。

 事件は宴会の席で起こった。以降、二人は主が定めた運命という大きな渦に巻き込まれていく。主がご自分の民、イスラエルを二人の信仰に託したのだ。

(つづく)
【782文字】

第1話はここまで

はれるや( ´ ▽ ` )ノ。です。
#逆噴射小説大賞2024 応募作品です。
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