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初恋は実らない / #シロクマ文芸部

#ショートショート  本文:783文字)

初めての恋は実らない。

幼稚園のとき、さくら組の先生に恋をした。なのに、ぼくが見染めたにもかかわらず、ぼくと出会って1か月で先生は結婚してしまった。

それを知った次の日、ぼくは、本当に結婚したのかを確かめるために先生の家に行った。

家には先生一人しかいなかった。「旦那さんは会社に行ってるの」と先生は嘘をついていた。玄関には男物の靴を置き、洗面所には歯ブラシを2本置くなど、あらゆるところに偽装工作がされていた。

「ねえ、先生。先生はぼくのこと好き?」とぼくが聞くと、先生は「大好きよ」と答えた。ほらやっぱり、先生はぼくのことを愛しているんだ。

「じゃ、なぜ旦那さんと結婚したなんて嘘を言うの?」
「嘘じゃないわ。本当に結婚したのよ」
「ぼくのことは嫌い?」
「ううん。好きよ」
「だったらぼくと結婚してよ」
「だから、先生はもう結婚しているの」
「やっぱり嫌いなんだ。ぼくと結婚してよ」
「結婚はできないの」

「嫌い?」「好きよ」「結婚して」「結婚できないの」というくだりを何回か繰り返したあと、プチっと何かが切れる音がして、先生は結婚できない理由を教えてくれた。

「民法第732条に『配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない』と定められているし、刑法第184条では、配偶者のある者が重ねて婚姻をした場合は2年以下の懲役が科される重婚罪になるの! 法律を破ると罪になるのよ! 二人で刑務所に入りたいの?」

意味が分からなかった。先生の言うことはむずかしすぎる。法律って何なの? ぼくは引き下がるしかなかった。

その日から、ぼくは法律を勉強している。法律を理解して先生と結婚できる方法を見つけるんだ。先生がおばあさんになる前に、先生と結婚する方法を見つけるんだ。

そう決心してから30年、初めての恋を実らせるためにぼくはきょうも努力している。とてもじゃないが、次の恋を探してなんかいられない。

一途だね。
どうかしているけど、こんな恋、ありかも……

はれるや( ´ ▽ ` )ノ。です。
実は実話です(ほんの一部だけ)。

こちらの企画に参加しています。

主宰: #小牧幸助さん
企画: #シロクマ文芸部 お遊び企画
お題: #初めての

では、今日はこのへんで。
はれるや( ´ ▽ ` )ノ。

またね~!

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追伸
コングラボードいただきました。
読んでいただいた皆さま、ありがとうございます。


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