見出し画像

フォーリン・ラブ / #青ブラ文学部

「ねえ、吊り橋効果って知ってる?」
夕食後、お茶を飲みながら、母が突然そんな話をし始めた。母はいつも唐突だ。

「知ってるよ。不安や恐怖などによって緊張やドキドキを感じているときに、その場にいっしょにいる人に対して恋愛感情を抱きやすくなる心理的効果のことでしょ。それがどうかしたの?」と私がスラスラと答えると母がニヤリと笑って言う。

「お母さんとお父さんの恋も『吊り橋効果』だったのよ。ね、そのときの話、聞きたくない?」

あ、これヤバいやつだ。こういうときは、断っても話してくる。早く自分の部屋に戻って宿題をしたいのに。でもこういうときは素直に「うん、聞きたい」と私は可愛く答える。その方が面倒くさくないから。早く話が終わるから。

「お母さんがまだ高校生のころ、夏休みに学校で肝試しをしようということになってね。こわいのとか苦手なのに、友だちの手前、なんか断れずに参加したのよ」

「うんうん、それで」
早く話が終わってほしいので、適当に相槌を打って先を急がせる。

「でね、そのときペアになったのが、お父さんだったのよ。高校の裏手にある廃校舎の理科室に行って来なくちゃいけなくて、もう怖くて怖くて。でも、最初は、大丈夫よ、っていう顔して二人で校舎に入って行ったの。

その廊下は古くなっていて今にも底が抜けそうで、歩くたびにギシギシきしんで、それがまた怖くて怖くて。ギシギシときしむたびにヒッという声が漏れそうになるのを必死にこらえて歩いて行ったの。

懐中電灯の明かりではあまりよく見えなくて、めちゃくちゃ怖かった。理科室の近くまで来たとき、足元をカサカサって何か黒いものが走り抜けたのよ。もう我慢できなくて、『ギャー!』ってお父さんに飛びついちゃった。

そうしたら、廊下が二人の体重に耐えられずにメリメリっと底が抜けて床下にズボッと落ちて、さらにびっくり。お父さんは「大丈夫か」ってお母さんを庇ってくれたの。かっこよかった。そのとき、二人は恋に落ちたの。ね、これって、吊り橋効果じゃない?」

そのとき、母の横でお茶を飲みながらテレビのニュースを観ていた父が話に参加した。

「恋に落ちたんじゃない。穴に落ちたんだ」

ここまで、891文字
楽しい家族団欒の一幕です!


こんばんは。はれるや( ´ ▽ ` )ノ。です。
今回は合わせ技なしです。そういうルールだったので。
他の皆さんの作品とはかなり違ったテイストになってしまいました。いわゆる、いつものはれるや( ´ ▽ ` )ノ。のショートショートです。

#青ブラ文学部
お題: #軋む恋

山根あきらさん。
タモリ文学は語れることがなかったのであきらめました。
従来の青ブラ文学部に参加します。

よろしくお願いします。

いいじゃないか、今が幸せならば

スキ、コメント、フォロー、記事紹介、サポート、大歓迎です。
よろしくお願いします。

#いつきさん 、いつもありがとうございます。#賑やかし帯 保管庫はこちらです。


よろしければサポートお願いします! いただいたサポートはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!