ボール奪取位置が低すぎる:U24日本代表対アルゼンチン代表(3月26日)<1>
今日はラグビー観戦はお休み。さすがに3日続けてスポーツ観戦はいろいろ厳しいので。今日は本当は大分前のパナソニック ワイルドナイツ対日野自動車レッドドルフィンズのレビューを書こうと思っていたのだけれど、サッカーのU24日本代表対U24アルゼンチン代表の試合を第2戦の前に書いておこうと思う。
今日の写真は試合前の黙祷の直前の整列。黙祷の間にシャッターを切るわけにはいかないので、ほんの少し前のショットだ。
ボール奪取位置が低い!
フォーメーションを見るよりボール奪取マップを見てみよう。フロンターレの場合はポジションとシルエットで誰だか識別できるのだが、U24代表だとそれは難しかったので選手名は入れていない。
合計数は35。自分が数えた中ではこれは川崎フロンターレ対セレッソ大阪戦と同じ数になる。
しかし大きな違いは敵陣でのボール奪取が著しく少ないこと。五分の一のわずか7回だ。しかも半分近い17回がペナルティエリアに近い地域。プレッシングによるボール奪取ではなく、攻め込まれたところでなんとかボールを取り返した、と言うのが正しい解釈だろう。
同じ35回のフロンターレ対セレッソ戦のマップを再掲してみた。
こうしてみると地域の違いは歴然としている。文字通り、U24代表は高い位置でボールを奪えていない。
Jリーグの多くのチームは、重心を後ろに下げてしっかり守り、攻撃は外国人FWを中心とする縦に早い攻撃を中心とする。このU24チームのボールの奪い方は、まさにその典型的なJリーグのチームの戦い方といわざるを得ない。しかしスピードと決定力の高い外国人FWはU24日本代表にいるわけがない。
シュートにつながらないボール奪取
シュートにつながったボール奪取はいつものように水色で表示しているが、わずかに4回。しかも敵陣で奪取してそのままシュートに行けたのはなんとたったの1回だ。ハイプレスからのショートカウンターという戦術をこのチームはとっていないことが明らかに言える。
その4回はシュートまで何回のパスをしたかを次にまとめてみる。
5分:3本(ドリブル1回)
44分:3本(ドリブル1回)
69分:3本
79分:9本
こうしてみると、シュートはボール奪取から少ない手数で敵ゴール前まで持ち込んだケースが多いことがわかる。これは現代サッカーとしては当たり前のことだが。
しかし、全体としてボール奪取が後ろなので、少ない手数でゴール前に持ち込む回数は必然的に少なくなる。しかし、それができなければ、相手のブロックがしっかりできてしまうので、崩すのは至難の業。
なお、44分のボール奪取は自陣ペナルティエリア内だが、この時はビルドアップと言うより、三笘薫が2人のタックルをかわしてドリブルでボールを運び出し、3人目からタックルを受けた後のボールをきちんと拾ってからのパスで崩したものだ。3人引きつけたことによる中盤のスペースを利用した攻撃と言うことになる。
前後半を分けてみると?
次に、途中まで0-0だった前半と後半を分けてみてみよう。
まず前半。
合計ボール奪取数19ながら、敵陣でのボール奪取、わずかに3。完全に押し込まれていたことがわかる。
後半はどうか。
合計ボール奪取数は16。
少ないが、これは「取れなかった」というより、持たされる展開になったと言うことも一因だ。
こちらも敵陣でのボール奪取は4つ。そして、そこからシュートにつながったケースが1つもない。
自陣でのボール奪取位置を見ると前半ほど押し込まれた感じがしないが、これはアルゼンチンが守ってからロングボールというかたちが多く、そのアバウトなボールを中盤で奪取できたケースが何回かあるためだ。
相手は強かった。しかしこの戦い方でいいのか?
こうしてみると、当たり前だが、川崎フロンターレが普段行っているサッカーとは全く違うサッカーをU24日本代表は展開したことがわかる。そもそもフォーメーションが4-1-2-3と4-2-3-1の違いがあるので当然だが。
ただ、ここまでボール奪取位置が後ろになってしまうとなると、ショートパスをつないでと言う日本が好む戦い方は適切ではないだろう。その間に相手の守備ブロックはできあがってしまうのだから。普通ならロングカウンターを軸に点を取る戦い方になるはずだ。
もしショートパスをつなぐ戦い方を志向するならば、もっと高い位置でプレスをかけなければならない。ただしハイプレスをかけるならばポジショニングを調整していかなければならない。また、点を取るにはいまよりもトランジションを早くしてゴール前に迫っていく形にすべきだろう。
こうしてみると、日本選手の得意なプレーと、現在のU24代表の戦い方には大きなギャップが生まれてしまっていると考えざるを得ない。確かにアルゼンチンは強かった。1点取るチャンスは何回かあったが、1点取れていたとしてもその後で2点目を取られた可能性は高いだろう。しかし、相手の「強さ」というより、やっているサッカーがぼやけている感じがする。このぼやけた形で夏まで行くつもりなのだろうか。29日の第2戦でそのヒントが見えるだろう。
個人的には、田中碧が中盤で適切なポジショニングとスプリントを繰り返すことで、チームのダイナミクスを変えていくことを期待したい。
この試合は、三笘薫のプレーも細かく見てみた。ただまだまとめ切れていないので、第2戦の後になってしまうが、それは次回にしたい。