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帝京の現代的ラグビー戦術と勝負の「あや」:ラグビー 早稲田対帝京<3>(11月1日)

11月1日の早稲田対帝京、セットプレイから少ない手数でトライを取り切る早稲田に対し、帝京はフェイズを重ねての攻撃でトライを奪った。フォワードのポジショニングを横方向に散らし、素早いリサイクルを繰り返すポッド戦術に、スタンドオフ高本幹也のランを織り交ぜての攻撃だった。

前半17分 帝京のトライまでの連続攻撃

今日は前半17分、押川敦治のトライに至るプレーから、帝京の攻め方を分析してみる。

まず早稲田陣深くでラインアウト、そこから

① モールを形成。ただしモールはあまり押さない。
② 走り込んだバックスがラックを作る。このラックの時間で、ラインアウトに参加していたフォワードがポジションに付く。
③ 4連続で右方向(=順目)にフォワードが少しずつ前進しながらラックを作る。

このラック、少しずつグラウンドの中央に寄って行き、4つめのラックでは左サイドにかなりのスペースができていた。そこに帝京のアタックラインを形成。

4つ目のラックからは折り返して左方向に展開(=逆目)。スタンドオフ高本にボールが渡った時、高本は縦方向にラン。かなりゲインしたところで捕まる。

そこからもう一度左方向に。7番フランカー上山黎哉がボールを受ける。それほどゲインはできなかったがボールを失うことなくラックへ。

さらに右方向に折り返し。まず6番トンガタマにボールが渡るが、トンガタマは内に走り込んできた2番江良颯に返す。江良もまたかなりゲイン。

江良のゲインのあと、前に折り返した5番、8番を中心とするポッドにもう一度ボールが渡り、ラック。

この段階で、この左サイドの正面にいる早稲田のディフェンスは10人。帝京のアタッカーは13人。

ということは、早稲田は右サイドを5人で守っており、帝京がこの段階で右サイドに大きくボールを振っても人数が足りない。
他方、帝京のフォワードは左側にポジショニングしているので、早稲田のディフェンダーはそちら側にポジショニングしている。

そこで5番、8番を中心とするラックの右側で高本がボールを受け取り、まっすぐ走る。ディフェンダーの数はいるがスペースもある状況。高本、この一連のプレーの中で二回目のゲインをし、タックルを受けながら右に走り込んできた12番の押川にパス。押川はそのままインゴールに駆け込んだ。

この一連のラックで気づくことは、フォワードが縦のレーンに沿ってポジショニングしていて、横のレーンにむやみに入ってこないこと。いわゆるポッド戦法というポジションの取り方。

そしてディフェンスのポジションを見ながら、スタンドオフの高本が隙を見て縦に走り込む形でゲインを稼ぎ、トライを取った。

この高本のラン、試合を通じて、かなり有効なゲインを稼いでいる。(下の写真はランではなくパスだが)

後半4分 帝京の連続攻撃(合計11フェイズ)

トライには至らなかったが、後半4分の連続プレーでも高本のランが有効だった。このときは、高本のゲインとダブルラインの組み合わせで、トライ寸前まで行ったが、最後のパスが早稲田の選手に渡ってしまった。

このプレーの時、スコアは19対19。最終的に早稲田が45-29で大勝した試合だったが、ここで帝京がトライを取っていたら展開は変わっていたかもしれない。このあたりは勝負の「あや」というべきか。

帝京のラグビー、細かく見てみるとパワーだけでなく、よく考えられた現代的な戦術をとっている。20点近い大差が付くようなラグビーじゃない。大学選手権であるであろう再戦はもちろんだが、22日の明治戦、12月6日の慶応戦も楽しみだ。

(終わり)

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