ポゼッション対キック:ラグビー 早稲田対帝京<1>(11月1日)
早稲田と言えば継続ラグビー、帝京と言えばパワーラグビー。イメージを語ればそうなる。ただこの試合は趣が違った。
11月1日の関東大学対抗戦ラグビー、早稲田対帝京のことだ。
この試合、速報レビューは試合直後に書いたのだけれど、なんとか次の週の早稲田対筑波大学の前にちゃんとしたレビューを書きたい、と思っていた。
けれど、そのあとサッカーの試合を二試合見たと言うこと、写真の整理に手間取っていることもあって(10月31日から11月3日までのラグビー・サッカー合計6試合での撮影枚数が一万枚を軽く超えているのです(泣))、なかなかかけなかったのだが、結局早稲田対筑波の前になんとか始めることができた(全3回の予定)。
最終スコアは45-29で早稲田の勝利。トライ数は早稲田が7、帝京が5の合計12で、スコアが大きく動く、見ていてエキサイティングな試合だった。
トライまでのプロセスの違い
ただ、このトライの内容は両チームで大きく異なる。
「それは当たり前、早稲田がバックスで帝京がフォワードでしょ?」と言いたくなるかもしれないが、その違いじゃない。早稲田のトライ7つのうち3つはフォワードによるもので、帝京のトライのうち3つはバックスによるものだ。バックスのトライとフォワードのトライを比にしてみれば、早稲田は4対3、帝京は3対2でそんなに違うわけじゃない。
「帝京がモールでたくさん取ったのでは?」と言う人もいるかもしれないが、ラインアウトからのモール(モールを直接押し込んだだけでなく、モールからのパスでトライになったものを含む)でのトライは、両校ともに2つだ。
少ない手数でトライを取り切る早稲田
では何が違うのか。
トライに至るまでの手数の違いだ。
早稲田の場合、7つのトライのうち、モールで取った2つを除く5つのトライを見てみると、セットプレイから1フェイズで取りきったものが3つ、2フェイズで取ったものが1つになる(残りの1つは5フェイズかけている)。
つまり、セットプレイから準備されたプレーを含め、一発のプレーでトライを取り切っていて、あまりブレイクダウンを継続させて行く形を取っていない。実際、フェイズを重ねずに、早い段階で裏のスペースに蹴るというのが何回か見られた。
フェイズを重ねる帝京
帝京の場合、5つのトライのうち、やはりモールで取った2つと、早稲田ボールの5mスクラムからボールを奪取した1つを除いた残りの2つのトライは、18分のトライが10フェイズ、82分のトライが3フェイズで取ったものだ。このうち82分はもうノーサイド間近で、点差が開いていたのでリスクを取って大きくボールを動かしているから戦術的には除外してもいいだろう。
逆に、44分にトライ寸前まで行ったプレーがあったが、やはり11フェイズかけている。
このように、フェイズを重ねていくポゼッションラグビーが帝京の形だった。
早稲田のゲームプランと吉村紘の役割
早稲田の代名詞は展開ラグビー。ただ、展開ラグビーはラックを作りながらボールを動かしていくから、当然ブレイクダウンの数が増える。ただし、フォワードが強いチーム相手にブレイクダウンの数が増えると、ボールをジャッカルされたりノット・リリース・ザ・ボールでボールを失う可能性も増大していく。
なので、この違いは、早稲田側が、帝京とブレイクダウンで競るのを避け、キックを使いながら極力少ない手数でトライを取り切るというゲームプランを取ったことによるように思われる。この早稲田のゲームプランを支えたのが、スタンドオフ、吉村紘の繊細なスペース感覚と正確なキックだった。
ここで既に1500字まで来たので、今日はここまでにしておく。あと2回に分けて、吉村のプレイと帝京のフェイズを重ねての攻めを分析してみようと思う。
(続く)