![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/49003504/rectangle_large_type_2_ed78673556cdfda109186b7f5124e5cf.jpg?width=1200)
クローズアップ三笘薫:U24日本代表対アルゼンチン代表(3月26日)<3>
今日は昨日に引き続いて、0-1で敗れた3月26日のU24日本代表対アルゼンチン代表戦のレビューの締めくくりとして、三笘薫と周囲の連携を見てみたい。
第2戦とのボール奪取位置の比較
ただ、その前に、3-0で勝利した3月29日のボール奪取マップを作って見たので、2つの試合を比較してみよう。
まず3月29日のボール奪取マップ。シュートを打ったかどうかは色分けしていない。
全体のボール奪取数は40。26日は35だからそれほど多くなってはいない。
大きな違いは奪った位置。敵陣でのボール奪取数が12(26日は7)、(ラグビーの22mラインや10mラインのようにフィールドに線が引いてあるわけではないので正確ではないが)ミドルサードの位置を含めるとだいたい28で、実に70%になる(26日は14、40%)。それだけ高い位置で奪えていたと言うことだ。
参考までに26日のボール奪取マップを再掲する。×の位置の分布が大きく異なることがわかる。
次に前後半を分けてみてみよう。
まずは前半。合計で30、つまり全体の75%。
うち敵陣が11。ゲーム全体を通じての敵陣でのボール奪取は12だから、敵陣でボールを取れていたのはほとんど前半と言うことになる。これだけ高い位置でボールを奪えていれば、優位に試合を展開できる道理だ。
次に後半。ボール奪取数自体が10しかなく、26日の試合の前後半いずれをも大きく下回る。敵陣でのボール奪取はわずかに1だ。ただしそれでも、ミドルサードでのボール奪取は多い。
リードして折り返し、さらに点差が開いていったため、後半はアルゼンチンの攻撃に対してゆっくりとリトリートして守ることが多く、アルゼンチンはアタッキングサードまでボールを持ち込み、シュートに持ち込むか、それでなくてもゴールラインを越えてしまう形になることが多かった。これはボールを「奪えなかった」と言うより、抜かれるリスクを取って「奪おうとしなかった」と考えるべきに思える。
これは、リードして守備を重視していたからでもあるので、この点からだけ評価をすることは難しい。むしろ上手くゲームを運んだというように評価すべきかもしれない。
やはり高い位置でボールを奪えていた29日の第2戦
このように、印象通り、29日の試合では高い位置でボールを奪えていたのがわかった。特にボランチに入った板倉と田中碧のボール奪取は目立ったし、押し込む展開になったのでセンターバックの2人も高い位置でボールを回収することができていた。
こう言う形であれば、26日の試合のレビューで書いたような「ぼやけた戦い方」にはならない。これはチーム全体の戦い方、特にボールを奪う位置についての意思統一によるものなので、この点からだけみて個々のプレイヤーの力を評価するのは難しいだろう。
三笘薫のプレー分析
ここからは本題の三笘薫。特に26日のぼやけた戦い方の中では、三笘の印象が今ひとつだった。
ただ、その多くは、この試合で日本側の選手、特に中盤の動きのなさに原因がある。
例えば試合の前半の2つのボールロストを見てみよう。
前半2分、三笘のボールロストと周囲の連携
前半二分、中盤でボールを受けた三笘。周囲にパスを受けられる選手がいなかったのでドリブルで時間を作る。それをアルゼンチンの10番バルガスが追う。
バルガスを振り切って中央方向に入っていく三笘だが、そこにアルゼンチンの5番アスカシバルのタックルが入る。
このタックルを引きつけて、三笘は右足アウトサイドでボランチの渡辺皓太にパスを出す。この時、渡辺皓太はアルゼンチンの8番コロンバットを背負いながら、パスを受けられる絶好の位置にいる
三笘はアスカシバルと一緒に潰れる形になる。そこでパスを狙ってコロンバットが渡辺皓太の前に身体を入れる。この時渡辺皓太は棒立ちで、あえなくコロンバットに入れ替えられてしまう
この時、渡辺皓太はコロンバットと競るのではなく、リトリートしてしまっていて画角から消える。
そしてコロンバットがボールを確保。アルゼンチンはチャンスを迎える。
こうしてみると、この三笘のボールロストは三笘の責任とは言い切れないことがわかる。この時、ボランチが渡辺皓太でなく田中碧だったら、三笘の右足アウトサイドのパスにタイミングを合わせてボールを受けに来ていただろう。
そうしたら、三笘はアスカシバルと一緒に潰れているから田中碧の前にスペースができており、日本は逆にチャンスを迎えたはずだ。
田中碧の運動量、と言うだけでなく、右足アウトサイドでのパスのタイミングを渡辺皓太がつかみ切れていなかったと言うこともあるのだろうが、このあたりが、田中碧が入っているときといないときの違いだ。このボールロストについて三笘は批判されているが、周りの動きと併せて評価すべきだろう。
前半2分、もう一つのボールロストと周囲の連携
もう一つ、上のプレーの直後のやはり前半2分のボールロスト。
まず、ゴール前で渡辺剛がヘッドでクリアしたボールがボールが三笘の足元に入る。
ただしこの時、三笘はアルゼンチンの4人に囲まれている。
アルゼンチンの選手の位置を考えればバックパスは危険。前も2人に塞がれているし、攻撃の起点になることを考えれば大雑把なクリアも好ましくない。そこで三笘は中央方向にドリブル。まず正面に立ち塞がった2人を外す。
2人外されてしまったのでアルゼンチンは8番コロンバットが三笘のチェックに入る。
コロンバット、一瞬逆を突かれるが左足をかろうじて残す。
残った右足でボールにチャレンジ
残した右足がかろうじてボールに引っかかる。
ボールがはねて三笘のコントロールが乱れる。
そしてバウンドはコロンバットの足元に。
コロンバット、ボールを確保。
この時も周囲の動きがなく、三笘はパスを出せず、ドリブルで抜くしかなかった(クリアすべき、と言う議論はあり得るが)。2人を外した後の3人目のコロンバットはスライディングタックルに来て潰れているので、近くにサポートに入ってパスを受け取れば、やはり前進できたはずだ。
44分はほぼ同じ位置からのドリブルからチャンスを作った
実際、44分には、同じ位置からドリブルを仕掛け、同じように2人を抜いた後で3人目のスライディングタックルを受けるものの、再回収してカウンター、三好の(当たり損ないの)シュートにつなげている。
やはり3人引き受けてボールを出しているので、アルゼンチンのディフェンスが崩れていて、チャンスにつながったものだ。
序列は下がったかもしれない。しかし、田中碧との連携を代表で見たい。
このように、三笘がボールを失った2つのプレーも、細かく見ると、三笘そのものの問題と言うより、周囲の動きと合っていないことに問題があることがわかる。
それだけ普段ギリギリでボールを合わせていると言うことなのだろうが、そうであるが故に田中碧と三笘薫の同時出場が見たかった。
今回、三笘は残念ながら序列を下げてしまったと思われるが、これから夏までの間、それを挽回するだけの活躍を期待したい。
(終わり)