キヤノンの独り相撲?:キヤノンイーグルズ対NTTドコモレッドハリケーンズマッチレビュー<1>
ラグビートップリーグ開幕。開幕節の2月20-21日は町田GIONスタジアムにキヤノンイーグルス対NTTドコモレッドハリケーンズを見に行った。
前半はキヤノンが圧倒的に攻め込んだが、スコアは14-6と開かず、後半逆に攻められ、後半最後の20分はシーソーゲームとなって最後はドコモが逆転のペナルティゴールを決めて26-24で勝った。最後まで目が離せない面白い試合だった。
得点機会ではキヤノンが圧倒(9対4)
この試合をまた、大学ラグビーと同じやり方でレビューしてみる。
まずは得点機会。22mラインを突破した回数を確認してみよう。
キヤノンイーグルス
9分:スクラムターンオーバー
11分:グラバーキックがタッチに出てボールロスト
17分:ラックでのターンオーバー
26分:ノックオン
29分:トライ
34分:トライ
47分:ノックオン
62分:ペナルティゴール
76分:トライ
ドコモレッドハリケーンズ
21分:オーバー・ザ・トップ
58分:トライ
26分:トライ
32分:トライ
こうしてみると、22mラインを突破した回数は9対4で、普通だったらキヤノンがある程度の点差を付けて勝つような数字だ。しかし、キヤノンはそのうち3回しかトライに結びつけられなかった。
一方、ドコモは少ないチャンスを確実にトライに結びつけた。さらに22mラインの外側でのペナルティからPGを3本決めて9点取っているのが最終スコアに効いている。
ボールロストマップで見てみる
こうなってくるとボールロストの状況が気になる。というわけでボールロストマップ。
まずは勝ったドコモから。
ボールロストは13で少ない。攻め込んでからのボールロストも少なく、自陣深い場所でのボールロストもなく、いい形のゲーム運びができたことがうかがえる。
ただし、62分と68分のラインアウトスチールが惜しまれる。この2回はいずれもキヤノンのダイレクトタッチというミスで得たチャンスだっただけに、ここをきちんと取れていたらもう少し楽に勝てていたかもしれない。
次にキヤノン。
全体でボールロストが18。しかも攻め込んでからのボールロストが多いし、ダイレクトタッチも3回ある。ゲームの主導権を握っていながらも攻めきれなかったことがボールロストマップからも読み取れる。
やはりボールロストが少ない方が勝つ
まとめてみたのが下記の表。
キヤノンのボールロストが18でドコモのボールロストが12。大学ラグビーで「発見」した(笑)、「ボールロストが少ない側が勝つ」法則はここでも生きている。
特にキヤノンが、22mラインを突破してから5回もボールロストしているのは大きい。しかもノット・リリース・ザ・ボールなどのペナルティではなく、ノックオン3回、スクラムターンオーバー1回、ラックターンオーバー1回。
そしてそのうちの4回が前半。ハーフタイムのツイートと速報レビューでは「前半仕留めきれなかった」と書いたのだが、数字を見ても文字通り「仕留めきれなかった」ことがわかる。
興味深いのが、キヤノンのボールロストはそのほとんどがミッドフィールドで起こったことだ。
このことの意味は1試合だけからでは読み取れないが、それだけミッドフィールドでの攻撃を重視していると言うことなのだろうか。しばらくキヤノンの試合を観戦する予定はないのだけれど、ちょっと覚えておこうと思う。
キックの比較:両軍とも前進成功は50%程度
次にキック。
ドコモレッドハリケーンズ
再確保:0
プレーエリア前進:2(13分、67分)
後退:2(59分、75分)
キヤノンイーグルス
再確保:0
プレーエリア前進:4(22分、36分、43分、62分)
後退:4(13分、38分、62分、67分)
リターンキック:1(42分)
※ 蹴り返しに対してレイトチャージでペナルティとなった77分にキヤノンが蹴ったキックは除外
両軍とも再確保はゼロ。不用意に22mラインを越えるキックもなかったのでフェアキャッチもゼロ。プレーエリア前進は両軍ともほぼ半分の比率。
1つ際立つのはドコモのキックの少なさ。つまり、キヤノンの攻勢に対してキックでテリトリーを稼いでかわしていたわけではないことがわかる。なお、75分の後退はTJペレナラのハイパントをキヤノンにキャッチされ、田村優のビッグゲインからトライに至り、キヤノンに再逆転を許したもので、高く付いたボールロストになってしまった。
一方、キヤノンは田村優を擁していることもありキックが多い。ただし、ダイレクトタッチ3回はいただけない。結果としてはそのうち2回のラインアウトはスチールに成功しているが。
まとめ:ミスが多く、勝ちきれなかったキヤノン、勝てる機会を確実にものにしたドコモ
こうしてみると、キヤノンの独り相撲だったように思える。22mラインを9回越えたにもかかわらず、ノックオンなどのミスも多く、得点に至ったのは4回にとどまった。また、ダイレクトタッチ3回も、自らテリトリーを失っていたという点で大きい意味を持ったとも思われる。
それでも、前半5分にペナルティでスクラムを選択したときにPGを蹴っていたり、26分のトライ寸前でのノックオンがなければ、最後のPGでもドコモは追いつけなかった。
これらのミスを逃さず、きちんと勝ちゲームに持っていたのが、今シーズンのドコモの地力であり、まさにTJペレナラの力であると言える。
なおキヤノンは、さすが智将沢木、と思える結構面白い攻撃を見せていた。次回それを見てみようと思う。
(続く)