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本の話


本を買わない。最後まで面白いかどうかもわからない本にお金を出すのが嫌だったし面白くなかった本でワンルームを狭くするのはもっと嫌だった。
だからいつも本を読みたい時には大きめの図書館へ行き、一度に大量に借りては時間と元気のない日々を理由に読書欲が萎んでしまう。
半ばタスクとなりかけた山積みの本と迫り来る返却期限のプレッシャーに耐えることができなくなると、自転車で30分走るのだ。読めなかった本の重さを背負いながら。


一週間くらい前、ドン・キホーテを読みたいと探している友人と入った本屋で久しぶりに小説を買った。
今までは目的もなく店内をふらつき、集めている漫画の新刊が出ていれば購入するか、脈絡のない尿意に追われて早々に退店するのが常であった。小説コーナーはほとんど見たことがない。

その日、友人は四冊の本を買い、それに感化される形で私も三冊の小説を買った。重松清「とんび」、小川糸「たそがれビール」、工藤隆夫「山小屋主人の炉端話」、別にじっくり選ばず、気まぐれのチョイスだった。

まず買った本は何がいいかって、軽い。図書館で借りる本には当然ビニールのカバーがかけられているが、あのカバーが本を重たくしているのだ。意外と。
今までは本の重さなんて気にしていなかったのだが、一度何もかかっていない本の軽さと手触りを知ってしまった今、もはや戻れまい。

軽い、で言ったら気持ちもそうだ。もう自分のものなのだから万一折ろうが破こうが失くそうが悲しい思いをするのは自分だけで良い。

そして何より返却期限がない!!!

これですよ。

今すぐに読まなくても読みたくなるまで何十年でも持ってていい。
部屋に未開封のご褒美が常駐してるのはきっと精神衛生上、いいことだ。

というかそもそも「面白いかどうかもわからない本をごく軽いノリで買う」という心の余裕が必要だったんだなあと思った。

ちゃんと面白そうな本を選ぼうとしたり、早く読まなければいけないと思い込んだりしていると読書のハードルはぐいぐい上がる。その原因を解消するのに「買っちゃう」というのは私にとってはとても有効な方法であると思う。

肌に合わなかった本については、どうしようかなーと考えているが今はまあいっか。何年後かに面白く感じるかもしれないしもっと嫌いになるのかもしれない。

最近「ホントモ」という文庫本を持ち歩くためだけのポシェットを手に入れた。(カバー画像参照)
可愛くて可愛くて持っているだけでウキウキする素敵なものなのでそれと合わせて買った本ライフを楽しんでいきたい。

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