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地中海北縁の旅と生活 第2章の⑥

香高堂 地中海北縁の旅と生活 第2章の⑥
第2章<2016年真夏の南仏マルセイユ観光記>
2-6《南仏マルセイユ行を控えての誕生日に思う》

 2016年7月23日、サラエボ18時過ぎ、日本では真夜中25時か、独り言を書き連ねる。我が家の<また旅猫のGRIS>が報告していたが、8月末から南仏マルセイユ暮らしになる。アパートメントが決まっていないこともあり、まだまだ苦難の日々が待ち構えている。現地でもそれなりの生活の苦労はあると思うが、1980年代からの憧れの地「南仏プロヴァンス」に行けるのは望外のことであると思っている。
 
 この3年、サラエボで住宅や食材、スモッグに悩まされ、家のカミサマと諍いを繰り返しながらも主夫生活を送ってきた。肝臓がんや後背部の瘤も出来、筋肉の強張りにも悩まされてきたが、精神は至って元気である。65歳で年金が本格的にもらえるらしいが、日本にいないので手続きが大変だ。その申請書類をネットで入手し、郵便事情の確かなマルセイユで出してきた。
 
 齢65歳を迎える。人生70年と思いながら、60歳を過ぎて何かをしようと思っていたが、未だに答えは見つからない。後5年、70歳を過ぎて楽をするためにも、まだまだやらなければならないことがある。64歳になった時に思い出したのはビートルズの「When I’m 64」という曲で、若い夫婦が64歳になってもお互い健やかに睦まじくいよう」と語り合っている内容だ。人生80年の時代になったが、まだまだ何があるのか分からない。

 WHOでは65歳以上を「高齢者」、65歳~74歳までを前期高齢者、75歳以上を後期高齢者と言うらしい。「てゃんでい、高齢者?前期とか後期とか、その区別がしゃらくせい!」なんぞと思ってしまう。今年5月に帰国した時、リムジンバスが割引になっていた。65歳になる年度らしいが、1月に使えたのに・・・と知識不足を後悔。
 
 過日バブル時代を潜った女性との会話がよみがえる。派手さばかりが浮き彫りにされ、批判や揶揄を受けることが多いとのことだった。何も気にすることはない、「今前を向いているか、その頃の価値観に留まっているか」である。生き方が今輝いているなら、その輝きを見てくれる人をしっかりと信じれば良いのだ。ただ「巧言令色鮮し仁」とはよく言ったもので、言葉巧みで愛想を振りまく者には誠実な人間が少ない。
 
 詩人であり思想家の吉本隆明は1990年頃、17歳の若者に向かってこう語っている。『日本国民の7割は中流だと思っている。もう十分、それはそれでいいと僕は思う。だけど、人間には理想と言うものがあるんだぜ。今、おまえが一番関心のあるのは?って聞かれたら西欧や東欧の話で、作家が書いたものよりももっと面白い。現実に欧州で起こっていることは、あと2~3年で日本に返ってくる。僕はものかきとして、何か起こった時にそれを考え尽したいと思う』

※2024年、30年経って社会に理想は見られず、カネカネカネの世の中になった。

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