70歳過ぎての通勤生活と手習い
【旅無香高堂~70歳過ぎての通勤生活と手習い】
《12年ぶりの通勤生活、税務署・臨時職員事始め》
2023年1月25日、我が足は押上駅に向かい、国家関係の事務所での臨時職員勤務が始まった。定年延長せず、退職して主夫生活に入り、サラエボやマルセイユでの海外生活、世間から身を隠すような気分だった。取りあえずは2か月、13時から4時間の勤務だが、通勤定期券を使ったのは12年ぶり。通勤すると言うのは不可思議な感覚、主夫だと毎日、何をするかは自分で決めなければならない。アルバイトと言いながら、12年ぶりに月曜から金曜まで定期通勤するとさすがに疲れる。持病の左足首炎症もあり、後は身体の左右の歪みに気を付けなければならない。
記憶と理解のテンポが遅くなっている中、仕事は覚えることばかりだった。業務知識が足りなくてやっつけ学習に追われ、70歳を過ぎての手習いはシンドイが、ここが踏ん張り時と考えることにした。研修では資料の文字が小さく、読み込むのに時間がかかる。頭が疲れて来ると甘いものが欲しくなるようだが、昔からデザートなるものにあまり嗜好が向かない。
イタリアのティラミスは好物なのだが、日本のティラミスはクリームばかりで、スポンジやマスカルチーズも少なく香りも乏しい。そこで、和菓子かと思うのだが、生地のもちもちふわふわは苦手である。墨田区業平の「森八」は、“きんつば”が名物だが、さて買いに走るか、頭の疲れとともに悩むことになりそうだ。
さらに3月に入り、大腸内視鏡検査を受ける。朝9時に病院に入り下剤を飲み干す、腸内が綺麗になるのに約2時間掛かる。だが、直ぐに検査とならず、医師や検査内容により待たされ、6時間待ちだった。検査では癌細胞もポリープも無し。ただ肛門内が腫れているとのこと、年寄になると皮膚が薄くなり、回復力も弱る。
《若き申告者からオジイチャと呼ばれる》
約2か月近い間、仕事社会への復帰を果たした。実は「税務署の確定申告サポート」の臨時職員だった。一応守秘義務があるので詳しく言えないが、お陰様で税務署の内部の様子が分かるようになった。業務研修はたった3日間で終わり、これだけが不満と疑問の残るものだった。その後税理士会の税務相談会があり、これはパソコンでの申告サポートだったので、良き予行練習にはなった。
そして、今年から始まったスマホでの申告業務が始まったが、戸惑いの連続ばかりだった。2月半ばに若い女性(多分キャバクラのおネエチャン)が申告にきたが、スマホ操作での操作を進めたが、彼女は最初戸惑いながらも案内に素直に従い、入力していた。最後のデータ保存で私がアンドロイドのタブキーの場所で悩んでいたら「これから先は分かる、紙は要らないから丁度いいわ」と作業を進めた。
最後に「ごめんね、手間取って」と私が言ったら「オジイチャン、スゴイね、スマホ使えてる」と帰っていった。「オジイチャン」と面と向かって言われたのは初めてかも知れない。だが、そうだ、もう70歳を越えている。本人に自覚が無いだけだった。さて、これからどうやって仕事を探そうか、レストランの皿洗いのバイト口があれば良いのだが。
《ある税務署職員と内緒の会話から》
ある時、中堅の税務署職員と会話する機会があった。その会話を手紙風に書いてみると、以下のようになる。まずは我が告白から始まった。
『3年間コロナ自粛の生活でしたが、多少動作がゆっくりとなり、想起力や記憶力が衰えはじめています。しかし、少しでも社会復帰したいと考え、今回の臨時雇用に応募しました。確定申告は2000年頃から続けており、不動産所得もありましたが、税理士を雇うことなく、自分でやっていました。
50代に入り、ライブドア事件の時に「証券から新しい株式世界」の誕生を目にしました。放送局では番組作りよりイベントや各種事務局業務が多く、学生相手のアナウンサートレーニング事務局長をやりました。また、80年代後半からコンピュータ社会に関わり、携帯電話は初期から関りましたが、スマホ普及の頃は海外生活をしておりました。ソフトがアプリに変り、考え方は分かっているが、操作などテクニックの習得は遅れてしまいました。』
と我が過去を語り、これまでに見聞きした状況をお話した。
『まず、職員の「申告者」を大切にしようとする考え方や対応については問題ないかと思います。職員の受付案内業務については、まずは「こんにちは」と言う一言を発する事かと思います。相手に眼を合わせて(あったら)、手を差し出して(指し示して)、「どうぞこちらへ」で良いかと思います。その後は「書類をお見せください」「確認させてください」等々の業務にあった声掛けが大事と思います。』
今年からスマホでの申告が出来るようになったが、ご存知だろうか。アプリに出来るところは限定されており、いきなりパソコン画面に飛ぶなど扱いにくい所がある。また、サーバの容量が小さく、申告期間中にサーバダウンがあり、最終3日間はパソコンでの作業になった。来年は資産や住宅売買などの一部を除き、スマホが主流になるだろう。
だが、本格的な申告が始まった時、私が割り与えられたのは、納税者への対応で無く内部サポート業務だった。恐らく若い研修担当者には、私は扱いにくい年寄と思われたのであろう。だが、何らの不満は無く、内部から税務署員を観察する良い機会になった。さらに、様々なイベントから得た我が事務局経験からのアドヴァイスを語った。
以下は申告業務サポート側から見たマニュアルのようなものである。個人事業者は消費税インヴォイス制度も始まるから大変になるだろうから、その手順を読んでみたら、参考になるかもしれない。
《確定申告の研修内容について》
確定申告の仕組みや概要の説明がほとんどないまま、いきなり「例題」から入り、戸惑いばかりでした。また、メモを取ろうとしましたが、講義を薦めるのが早くてメモを取る余裕がないのが実情でした。頭の中の整理のため、復習しようとも基になる資料が手元にないので、一苦労します。
研修資料を持ち出し出来ないのはよく分かりますが、「予習復習できない研修内容」が問題で、いきなり分厚いバインダーを渡されても戸惑うばかりです。それならば、窓口で配布されている申告資料を事前に渡し、研修開始前にその仕組みを読んでおくことを進めるべきでしょうか。
すべて申告書の「第一表を完成させるために、第二表以下付表や添付資料がある」があると言う基本原則を、しっかりと伝えることが肝要かと思われます。職員は基礎知識があるかと思いますが、こちらには無いことを知っていただきたいと思います。受付表を作る職員が確認していないケースが見られるので、受付表業務の充実が必要かと思われます。
私は研修前に資料を読んでも「A表、B表」が無くなっていたこと、用語が違う、特に株式関連の新用語が多いことでした。この10年の「株式・税務」の変わりように非常に驚き、「よく分かる税務用語集」が欲しいと思いました。私は、そのため国税庁のサイトなどで資料を入手して、ワードに貼り付け、整理をしながら学習しています。
また、アンドロイド、アイフォンの操作上の違いが判らない、未完成なアプリのせいか、入力作業で誤りやすいところ(間違えやすい罠)のようなところがあります。操作上の説明やアドバイスがありますが、メモを取る暇がない時に言われることが多く、もう少し丁寧な説明があったらと思いました。実際の場で分からないことを聞くと「それは研修でやった」と言われる方がおりました。
《今年から始まったスマホ申告》
①まず、e-TAXの<ID、PW>の保持確認が大切ですね。再発行、新規発行に専任のスタッフがいても良いかと思います。対応は「ファイルをお見せください」「受付表はありますね」「表面の確認」「「裏面記載項目の確認」をしながら、「この手順でやります」と説明することが客の安心感につながると思います。次に「スマホはお持ちですね」「アンドロイドかアイフォンか」を必ず聞くことです。
②スマホ申告は「出来る人・やってみようとする人・全く出来ない人」の3種類がおり、スマホで「文字や数字の入力が出来ますか」と聞いてみることです。逡巡している方には「やってみた方が理解しますよ」「認知予防になりますよ」などと会話をして、「操作画面は案内します」と言ってみることです。ただ、出来ない人には「数字の確認、内容の確認だけはお願いします」と必ず声掛けをすることかと思います。
③また、スマホが出来る人でも「画面をスクロールするのが早すぎる人」がおり、違う操作に入ってしまう人もいます。その際は「スクロールはゆっくりと」「質問項目は入力を終えると色が変わる」との案内、入力後に「次に進むか戻る」の表示が出ますと言葉で伝えることです。そして「画面が変わる」ことを認識させます。問題はミスをしたら「どう戻るか」です。「戻る」を押したら「どこに戻るのか、前の画面なのか」が不明です。
④データの送信と保存が結構面倒です。<iPhone(Safari)><Android(Google)>の場合の操作方法に違いがあり、研修時にどちらかしか使っていない人には双方のスマホを準備して操作方法を習熟させることです。「データの保存」が途中で何回か出て来て、ここで一旦確認したい気持ちになります。また「データの表示・印刷」との言葉がわかりにくく、印刷が出来ないと言っているのに出来ると勘違いする人がいます。言葉的には「表示確認」「印刷画面」でしょうか。ここでも「戻る」のはどうするのか、データ保存が大きな課題と思われます。
《一期一会、一期チラ見、一期再見》
臨時職員に応募していたのは、定年後の男性と同年代の女性たち、そして若い主婦だが、どうやら私が一番の年上のようだった。午前組、午後組ともに15人程度、午後組に打ち上げを呼び掛けたら11人が参加してくれた。
【せっかくだから、ささやかに打ち上げの夕べ】ご案内
3月15日で終わるこの出会い、せっかくだから一杯やりませんか。手軽に安く、短い時間を楽しく過ごせたら幸いです。この間の思いを語り、愚痴ったら、それを忘れるための時間かと思います。
何が、人々を繋ぐのか分かりません。人間は「一期一会」で出会って、街中で「一期チラ見」をすることがあります。そして、連絡して「一期再見」まで進むこともあります。ただ、人それぞれ、感覚的に合う方や合わない方もいるかと思います。ジョークは良いにしても、告げ口や悪口だけは避けたいと思います。
私は2013年からサラエボやマルセイユで主夫生活をしていました。英語や仏語も話せず、手差し指差し会話だけで、心が通い合う人々がいました。日本帰国後、ほとんど知人友人と会う機会はありませんでした。
出会ったこの場と人々を、出来たら大切にしたいとも思います。この日がダメな方でも、また会える機会をつくれたら幸いです。是非、連絡先を教えてください。では、当日夕方にお話しできることを楽しみにしています。
<日時>2023年3月15日(水曜)17時30分~