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国民性の違いをフランスジョークから

●風英堂長月記=フランスジョークと国民性の違い

心が暗くなるので、最近は批評や批判を避けるようにしているが、それでも次から次と突っ込みどころ満載の社会事象や人間模様が展開されていく。

日本のメディアはジミン党総裁選一色だが、あまり国民の共感を得られないと感じたのか、皇室の結婚ネタが蔓延し始めた。新しい警察庁長官が生まれ、さらに官邸警察が暗躍、コロナ対策批判から眼を逸らすよう国民意識を誘導しているようだ。

1996年よりパリ在住で、フランスの社会や文化に関するジャーナリストで、光のオブジェアーチストとしても活動する永末アコ氏が、国民性を言い当てるジョークを紹介している。
◆船が沈没しそうになり、乗客は海に飛び込まなくてはならない状況になった。船長は乗客の国籍ごとに違った説得をし、全員を飛び込ませることに成功した。
 アメリカ人には「さあ飛び込んでください、ヒーローになれますよ!」
 イタリア人には「さあ飛び込んでください、女性にモテますよ!」
 日本人には「さあ飛び込んでください、もう皆さん飛び込みましたよ!」
 フランス人には「飛び込まないでください!」◆

自由の国で個人が尊重され、上から強制されることが大嫌いな国民性があるのがフランス人。「飛び込むのは個人の判断だ」と思い、同じ船に乗って大波に揺られようと、船長の独断的な命令に簡単には従わない。日本人は付和雷同型、同調意識が満載の国民性のようだ

フランスのコロナ対策の「衛生パス」に対して「ノー!」と、人々はプラカードを掲げて叫ぶ戦後最大とも言える抗議の市民デモが起きた。共有されるスローガンは「リベルテ=自由を!」で、政府からの一方的な命令に市民は服従しないという思いが込められている。

永末アコ氏は
◆このデモは決して攻撃的なものではない。子供がいて、犬がいて、音楽があり、会話のある、自由なフランスを守りたいという前向きな行進だ。学者、知識人、化学者、起業家、教師、警官、看護婦、主婦、販売員、清掃員、受付員、学生、スポーツマン、ミュージシャン、エンジニア、イエローベスト運動の参加者、失業者・・・。スーツスタイルのムッシューと、ガレージから出てきたようなティーシャツの男性と、優雅なワンピースを着たマダムと、ビーチサンダルを履いたヒッピー風の女の子が、肩を並べて行進する。国は「政府のものではなく国民のものである」という思いを新たにする人々。この国の人たちには何百年も前の市民革命が深く刻まれていることを、私は実感せずにはいられない。◆

フランス人にとって市民の自由が失われることは「コロナにかかるのと同じくらいの怖さを伴う」と言うことで、許されるべきことではないと考えるようだ。昨年の日本帰国前にロックダウンを経験した我が眼差しは、この自由意識を羨ましく思うが、感染し重症化した場合を考える臆病な自分もいる。一方、「友人知人との雑談やワインの飲める美味しい食事をしたい」と強く願うのも確かだ。

さらに、永末アコ氏の文章を引用させていただく。

◆厳しい「ロックダウン1」が始まったのは2020年3月。静寂に包まれ、誰もが今までにない様々な思いを経験し、たった1カ月あまりのことだったのに深い穴の中で長い季節を過ごしたような気がする。そして夏の少し前にロックダウン1が解除。フランス人にとって人生に欠かすことのできない夏の休暇を満喫した

なにしろ、このデモには組織や団体が存在しない。各々がソーシャルネットワークやメディアを介して開催を知り、一人の人間として自由意志で参加している。リーダーもいない。誰もが同じ立場で、同じ力を持って、自由を訴え、政府に立ち向かっている。職業によっては自由を叫ぶだけではなく、化学者や医師であればコロナ撲滅に対する今回の措置の有効性に疑問を呈し、弁護士や知識人であれば法的な視点でのこの措置の不当性を、デモを舞台に政府に投げかける。時々、国歌のラ・マルセイエーズの合唱がどこからともなく始まり、感極まる人もいる。

政府はコロナワクチン接種を義務とは言わず、衛生パスの導入で接種する以外に選択の余地のない状況に追い込んでいる。コロナにうつらないよう、うつさないようにとワクチンを打つのではなく、コロナワクチンの信憑性に疑問を持っていたとしても、衛生パスがないと何もできないからと仕方なくワクチンを打つフランス人は多い。ファミリーや同僚、友人たちの間では、コロナワクチンや衛生パスについての会話がダブーになっている。

それはしばしば分裂をもたらし、張り詰めた空気をもたらすことを学んでしまったからだ。各々に意見があり、思いがあり、違った視点での正義がある。それでも、衛生パス導入反対のデモに、政府にその独断を再考させるべく、多くのフランス人が参加することに、フランス人がフランス人たるゆえんを見る。

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