読書メモ「奇跡」

奇跡

・講談社
・林真理子
・2022年2月

 梨園の妻と有名写真家の実話に基づく恋愛小説。「出会ってしまった」と設定されている大恋愛の顛末が、林真理子さんの優しく読みやすいタッチで丁寧に描かれてている。
 不倫、不貞を正当化できない難しさがあるが、本物の愛情があったからこそ成り立った男女の関係、家族の新しい形がそこには確かにあったのだろう。
 特に、自分にうそをつかない人生を貫いた主人公・博子の力強さには驚いた。不倫とはいえ、純愛を選びながらも、大事な息子を育て上げる覚悟。鬼のような執念もにじみ出てくる。
 ただ、読みながら感じていたことだが、これがフィクションではなく、実話であることから何とも言えない違和感を抱いてしまったことも事実。
 そして、「梨園の妻」ということもあるからかもしれないが、世間体や周りからの評価に目を奪われがちな博子の生き方はどうなのかとも感じた。それは博子自身だけではなく、新しいパートナーや息子にも同じ視線が注がれ続けていく。    


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