カモナマイハウス ・中央公論新社 ・重松清 ・2023年7月 社会問題化している空き家を舞台として、家族、老い、離別などをテーマにユニークな登場人物とともに心温まるストーリーが展開されていく。 ビジネスを成功させる敏腕営業、長年暮らしてきた家を大切にしたい家族、空き家をレンタルしてお茶会を開くマダム、鳴かず飛ばずとなっているが俳優業を続ける30歳の息子など、登場人物それぞれが課題と向き合う様子がコミカルに描かれている。 涙あり、笑いありのヒューマンドラマとして大いに
奇跡・講談社 ・林真理子 ・2022年2月 梨園の妻と有名写真家の実話に基づく恋愛小説。「出会ってしまった」と設定されている大恋愛の顛末が、林真理子さんの優しく読みやすいタッチで丁寧に描かれてている。 不倫、不貞を正当化できない難しさがあるが、本物の愛情があったからこそ成り立った男女の関係、家族の新しい形がそこには確かにあったのだろう。 特に、自分にうそをつかない人生を貫いた主人公・博子の力強さには驚いた。不倫とはいえ、純愛を選びながらも、大事な息子を育て上げる覚悟。
老いてきたけど、まぁ~いっか。・ダイヤモンド社 ・野沢直子 ・2022年10月 人生100年時代。人間関係、家族とのかかわり方、少しずつ衰えていく体。50を過ぎて、これからの人生をいかにして楽しんで過ごすか、自分はどうあるべきなのか、明るいタッチであるものの、しっかりと老いについて考察された指南書と言える。 「自分を喜ばせるために時間を使うべきである」、「無限に広がるヒトの輪」、「あっという間に子育ては終わりを告げる」など、豊かに自分らしく生きるためのヒントが満載だ。
おいしいごはんが食べられますように ・講談社 ・高瀬 隼子 ・2022年3月 ・芥川賞受賞 どこにでもあるようなオフィスを舞台に、主人公の独身男性社員を中心に、「食べる」を織り交ぜながら、人間模様が描かれていく。 表向きは笑顔でも、その裏にひそむネガな感情。食に興味を見いだせない主人公と料理大好きな女性社員。嫉妬や苛立ちの感情を抱くもう一人の女性社員。この3人を中心に物語は展開する。 「食べる」を象徴的なテーマに設定し、いつまでも横たわる価値観の違いを、登場人物が抱