≪読書記録≫「無惡不作 : 香港黑幫電影的肌理脈絡」蒲鋒著
前月香港 深水埗「獵人書店」で購入したこの本を読了。著者は台湾在住香港人映画評論家蒲鋒さん。タイトルを勝手に訳してみると「香港ノワール映画の系譜」。
冒頭の2、3章は香港ノワールに影響を与えた、アメリカマフィア映画と日本の極道、q任侠映画を解析する。それらは当時の社会状況や価値観などどう反映していたかがとても興味深いです。
そして香港の映画には戦後から「黒社会」の要素が徐々に入って行く経緯を分析します。やはり60年代までは検閲基準が厳しかったが、70年代に入るとだんだん緩和されるによって、「黑幫片」の内容も多彩になってきて、結果的に世界の香港ノワールが成し遂げられた。
本書にはたくさんの香港ノワールの映画が紹介され、70年代の「大決鬥」、「邊緣人」から、80年代の「上海灘」や「省港旗兵」、「英雄本色」(男たちの挽歌)に引き起こされた「英雄片」ブーム、そして90年代の「古惑仔」シリーズ、ジョニートーの作品、2000年代に入り「無間道」までの進化、変調、そしてブレークスルーを細かく分析される。残念なことで、著者によると、2006年以降は中国大陸の市場と資本のため、その厳しい検閲に通さななけらばならなくなり、香港ノワールは終焉にむかっていく…
紹介されるのは名作ばかりでなく、その系譜の進化と継承に役目を担ったマイナーな作品もたくさん紹介される。本作を読み終わったら、以前観た作品をもう一回見直したり、観ていない作品をいまさら見たくなりました。香港ノワール映画ファンにはおすすめの本ですが、いつか誰かに日本語版を作ってほしいのです。
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