香港書房

香港関連の書籍や出版物を日本の読者に紹介、販売します。店舗は神保町PassageByAllReviewsの本棚にあります。店主は東京在住香港人。ノートで香港関連の本や香港文化について書き込みます。 Twitter: @hkbr1841

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最近の記事

レスリーパワー

先週末 #花様年華書店 にいらしゃった1人の若い日本人お客様に香港好きになったきっかけを聞いたところ、なんとレスリー・チャンです。うむ、「レスリーがなくなった時にあなたはまだ生まれていないじゃないか」、と店主が一瞬密かに疑っていたが、実は、彼女は「さらばわが愛」を観て、そんな素敵な俳優に興味が持つようになり、調べて見たら、すでに亡くなったことを知り、ショックだったという。そして彼の映画や音楽を掘りだじファンになった。 彼女が先月初めて香港に行って、レスリーファン先輩たちに連

    • 「花様年華」ふたたび

      再び「花様年華」を観て、まだ色々な余韻を味わっています。ここで一つの気づきをシェアしたいと思います。それは周慕雲(トニー)と蘇秘書(マギー)の交流が深まるきっかけになった、武侠小説です。日本語の字幕には、「小説」だけに訳したけれども、それはそれで問題がありません。字幕の時間と字数が限られているし、映画の全体には影響がありません。 ただし、「武侠小説」をもっと知っていればその時代の香港を深読みができるのではないかと店主は思っています。 武侠小説と言えば、第一人者の金庸でしょう

      • 《開雀籠》郭達麟著

        香港で「雀籠」でというのは鳥籠のことで、飼っている鳥の小屋みたいものですね。店主の一つ前の世帯には鳥の飼主たちが朝に茶楼に雀籠を持っていき、点心をあじわいながら、鳥の歌いを楽しんでいたのが、日常のことでした。そんな風景と言えば、皆さんの頭に浮かんできたのはなんでしょうか?店主にはやはり、あのジョン ウー監督、周潤發主演「辣手神探」(ハードボイルド)の最初の銃撃戦のシーンでしょう。 店主が子供の時、そんな光景がまだ見かけましたが、80年代以降、香港の経済が急速に成長していき、

        • 《香港職人》出版記念トークイベント『素晴らしき香港職人の精神』

          この数年間、コロナの流行と、香港からの人口流出の加速により、香港らしい物がどんどん消滅していきました。それは文字や写真で記録しても、決して追いつくことはありません。 独立メディア《誌 HK FEATURE》は、2年をかけて、そんな香港の職人たちを記録してきました。  《香港職人》は25人の香港の職人を記録した書籍です。「香港の祭り」/「香港開檔」/「香港味」/「香港のメンテナンス」/「香港映画」の5つのパートに分かれており、200ページ以上で構成されています。  香港の人気イ

          在地・餐桌・小旅行

          「在地・餐桌・小旅行:遇上香港飲食文化」著・黃可衡、絵・mujiworld絵。10個のルート、地点で香港ならではのガッチグルメや飲食文化を紹介するプチガイドブック。 本作品には「茶果嶺」や粉嶺古洞にある、醤油の伝統製法を守り続ける「悅和醬園」などしっかりご紹介。「 悅和醬園」には筆者は見学したことがあり(事前連絡必要)、3代目社長がとても丁寧に説明してくれました。伝統的な醤油製法は改めて理解し、すごいなと思っています。残念ながら、政府が「北區再開発」計画を立てて、そのあたり

          在地・餐桌・小旅行

          【香港失物認領處】Vivian Ho著

          今日のおすすめはVivian Hoの「香港失物認領處」。 著者のHPでは香港版「ウォーリーをさがせ!」という。2018、19年複数の作品賞を受賞。 HPでたくさんの内容が記載されたので、ぜひ見てください。 画像はオフィシャルサイトより。 作品賞受賞紹介ビデオ(中国語)もどうぞ。 #神保町 #PASSAGE #香港書房  https://passage.allreviews.jp/store/4J4IREOY5CG6AZBXYMFIA3A4

          【香港失物認領處】Vivian Ho著

          高峰「人間冥煙」

          面白い異色の一冊。あの世の人への紙贈り物コレクション図鑑。供えものを燃やして、亡くなった人に贈るという習慣は中華文化の一つの特有もの。世界がどんなに進んでいっても先人に対する敬意や想いやりは変わっていない。香港に「紙紮文化」はいまだに健在。 紙紮のお供え物は生きている方があの世の人が豊かな「暮らし」のためだから、日用品から贅沢品まで色々あります。好きな食べ物はもちろん、その他に、買い物に使う紙幣や元寶があれば、実用のお湯ポット、炊飯器、医薬品などもある。豪宅や高級車が有れば

          高峰「人間冥煙」

          ≪読書記録≫「無惡不作 : 香港黑幫電影的肌理脈絡」蒲鋒著

          前月香港 深水埗「獵人書店」で購入したこの本を読了。著者は台湾在住香港人映画評論家蒲鋒さん。タイトルを勝手に訳してみると「香港ノワール映画の系譜」。 冒頭の2、3章は香港ノワールに影響を与えた、アメリカマフィア映画と日本の極道、q任侠映画を解析する。それらは当時の社会状況や価値観などどう反映していたかがとても興味深いです。 そして香港の映画には戦後から「黒社会」の要素が徐々に入って行く経緯を分析します。やはり60年代までは検閲基準が厳しかったが、70年代に入るとだんだん緩

          ≪読書記録≫「無惡不作 : 香港黑幫電影的肌理脈絡」蒲鋒著

          Marcel Heijnen写真集『香港舖頭貓』『香港街市貓』

           神保町PASSAGEの「香港書房」棚で開催中(2023年4月上旬現在)の、「香港ネコ特集」からのご紹介です。  香港在住オランダ写真家Marcel Heijnenさん(マルセルさん)の猫写真集『香港舖頭貓 Hong Kong Shop Cats』(2016)と『香港街市貓 Hong Kong Market Cats』(2017)。 この2冊は、香港フォロワーなら知らない人はいない思うほど大人気シリーズ。世界中にも売れています。でも残念ながら、いまはほぼ絶版になっている状

          Marcel Heijnen写真集『香港舖頭貓』『香港街市貓』

          「香港舖頭貓 Shop Cats of Hong Kong」2023カレンダー販売中!

          『香港舖頭貓 Hong Kong Shop Cats』『香港街市猫 Hong Kong Market Cats』でおなじみ、香港香港在住のオランダ人写真家、Marcel Heijnenさん=マルセルさんの作ったカレンダー「香港舖頭貓 Shop Cats of Hong Kong」を入手しましたので、急遽、神保町「PASSAGE」にて販売します! 『香港舖頭貓 Hong Kong Shop Cats』『香港街市猫 Hong Kong Market Cats』と同じく、上環を中

          「香港舖頭貓 Shop Cats of Hong Kong」2023カレンダー販売中!

          龍美童「The Trams 電車」

          先日「上架」するため神保町に行く前にある古本屋に寄って見たら、良いものを発見。 約30年前(1994)に出版された絵集「The Trams電車」。 テーマは香港の名物路面電車だが、収録されたのが“電車のある香港街風景”といって良い。一つ気になるのが店の前に吊られていた「鹹魚」(塩でつけた魚)。90年代以降「鹹魚を食べると発癌率が増加」という研究報告が発表してから、鹹魚の販売がどんどん減ってきたのです。いまはその光景はほとんど見かけないだろう。懐かしいなぁ。 作家はその時に

          龍美童「The Trams 電車」

          黃慶雄「香港老美」

          これは香港のレトロ建築図鑑と言ってもよい。香港は150年わたり西洋と中国そして日本文化の影響を受け、自分の特殊の経済、社会発展により、独特な建築芸術が生まれた。例えば、唐樓、騎樓、 窗花、ネオンサイン。それらを見たら誰でも「あ、それは香港だ」と気づくだろう。 残念ながらそんなレトロ的なものが近年急速に消えていく。そういう流れに対して反発が起こり、様々な反対運動や保育(保存)運動が起こった。最近一番注目されるのがその「皇都戲院」だろう。この「香港老美」シリーズはその懐古ブーム

          黃慶雄「香港老美」

          劉佩佩【何處是吾家】

          これは絵本とは言え、子供向けだけではありません。絵は鮮やかな色や場面のデザインで香港街の特色をよく表せる。テーマは香港で一番深刻な住宅不足問題です。重いテーマだけど、語り手は9歳の明仔で貧しく厳しい日常の中に困った時があれば、ささやかな幸せもある。文章は少なめで分かりやすい。大人が読んでも香港社会状況の理解を深めるはず。 著者は日本で留学、滞在したことがあって、浮世絵の影響を受けて絵を描き始めたという。広告業で働いた後、ロンドンで絵本と漫画修士を修了。2017年にイラストレー

          劉佩佩【何處是吾家】

          Alison Hui【香港尋味】

          《上架書のご紹介》Alison Hui「香港尋味」。著者は旅行大好きのイラストレーターです。海外にはあちこちに行ったりしますが、自分の街の香港にもうろついていて、手描きで街の風景を記録している。今回の「香港尋味」はタイトルの通り、香港の独特の食文化の図鑑だ。 香港といえば、茶餐廳は有名ですね。この図鑑にはそれはもちろん、大排檔、冰室、茶樓、そして蛇羹(蛇スープ)まで紹介されている! 本書にはおいしそうな食べ物のイラストだけじゃなく、それらの歴史、沿革、老舗、作りのコツ、「老

          Alison Hui【香港尋味】

          陳舜臣「香港」

          これは文藝春秋の「世界の都市の物語」シリーズで、ちょうど1997年香港が返還される前の5月に出版された。歴史小説家陳舜臣が独自の文献調査で香港開埠(イギリスに割譲)以公97年まで150年わたり、香港に影響を与える人物や出来事が詳しく語る。続→ 店主は高校まで香港で勉強したが、実は香港の歴史が学校ではそんなに教わらなかった。なので、この本でいろんなことが分かって納得した。もう絶版になっていて、僕は数年前に古本屋で偶然に見つけて、その内容が興味深いし、印刷の質(装丁やデザイン)

          陳舜臣「香港」