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《開雀籠》郭達麟著

香港で「雀籠」でというのは鳥籠のことで、飼っている鳥の小屋みたいものですね。店主の一つ前の世帯には鳥の飼主たちが朝に茶楼に雀籠を持っていき、点心をあじわいながら、鳥の歌いを楽しんでいたのが、日常のことでした。そんな風景と言えば、皆さんの頭に浮かんできたのはなんでしょうか?店主にはやはり、あのジョン ウー監督、周潤發主演「辣手神探」(ハードボイルド)の最初の銃撃戦のシーンでしょう。

店主が子供の時、そんな光景がまだ見かけましたが、80年代以降、香港の経済が急速に成長していき、一般市民はそんな暇がどんどんなくなりましたし、伝統的茶楼(有名な蓮香樓みたいなちょい汚いで渋くて、鳥を持ち込みOKのところ)も消えてきました。
それに伴い、街中に雀籠の姿が少なくなり、雀籠造りの技術や職人が香港から消える危機を直面しています。そんな中で本作品が誕生しました。
先月台北国際ブックフェアで著者郭氏のトークイベントを聞きました。

彼は若手インテリアや家具デザイナーですが、3 年前にあるプロジェクトにより、伝統的な雀籠造りに出会って、その繊細さや美しさに魅了されました。それ以来、彼は毎週末香港の雀籠職人、陳樂財の見習いとして過ごし、徐々に技術を習得していきました。この本には、雀籠の造り方、原材料から仕上げまで、雀籠構造の分析、鳥の種類や地域によりさまざまな雀籠デザインのご紹介、雀籠の美学の説明、香港の太子(プリンスエドワード)にある「雀仔街」(鳥を飼うに関する店が集まっている街)の案内ガイド、などなど、詳しい内容が詰まっています。

彼の情熱により、最近雀籠という無形文化財に対する関心が高まってきました。トークの最後に「鳥をかごに入れるのが鳥は可哀想ではないか」という疑問に対し、彼は「僕は今数羽の鳥をオフィスに飼っていますが、籠の扉が開けっ放ししています。鳥たちが自由に出入りできます。実は鳥によりますが、籠というのは鳥自身を守る場所にもなるかもしれませんという。なるほど。
この作品はイラスト、写真、装丁にこだわっていて、香港好き、伝統工芸に興味ある方におすすめです。


ちなみに、タイトルの「開雀籠」は広東語の「開籠雀」(お喋りの人)の言葉遊びだろう。


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