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書評「武器になる哲学」

山口周さんの本は「NEW TYPE」なぜ世界の経営者は美意識を鍛えるのか」に次いで3冊目だが、3冊も読んでれれば、まぁ、私も山口さんのファンということなのだろう。全体的には「読みやすさ+刺激的」を意図して書かれているのでどの本も面白く読める。

「武器になる哲学」の内容としてはツールとして使える五十の哲学や人文科学のアイデアを簡単に紹介しながら興味を掻き立てるような内容で、アジられることもそれほどなくお値段もお手頃なのでお薦めできる。
2020年3月現在、Kindle Unlimitedでは無料の模様。

筆者の意図としては哲学や人文科学の知識、考え方をツールとして用いることで目の前の現象や世の中の動きを理解し、疑問を呈し、課題を浮き彫りにし、未来を模索するための助けになるから知っておいて損は無いよ、ということ。まぁ何度か読んだ方がいい+自分で勉強した方がいいのだろうけども。

弁証法とコンテナ

42節で弁証法が出てくる。引用すると

1. まず命題(テーゼ)Aが提示される(正)
2. 次にAと矛盾する反命題(アンチテーゼ)Bが提示される(反)
3. 次にAとBの矛盾を解決する統合された命題(ジンテーゼ)Cが提示される(合)

とある。次の世代でもこのジンテーゼCに対して反命題が提示され、社会は発展していくと言った具合。二者拓一の問題を統合的に解決する解決策には過去の議論の中で現れたアイデアが内包されていることがあり発展というのは螺旋状に起きるというのが42節の内容である。
昔読んだのだと、「The Goal2」でゴールドラット博士が見せてたのもこの類型だろうとか温故知新というのもそういう意味かもしれない。

ここで一つ思い出した話を。ちょうどdockerが出始めた頃に「コンテナとは何か?」ということについてハードウェア部隊のお偉いさんに説明しに行ったことがあり、こんな会話をした。

「今の時代、ソフトウェアをインストールするのに依存関係やら自動化やら大変なんですよ。このコンテナを使うとアプリケーションは全てのコンポーネントを全て抱えたままダウンロードしてインストールすることになるんですよ。アップデートは置き換えになります。スマホアプリみたいでしょ」
偉い人「あ〜、つまりオフコンになるのか。いいかもね。」
「?????」

整理するとこんな話。

1. 1980年代。オフコンはハードとソフト一体で提供された。ソフトのアップデート=ハード入れ替えである。依存関係なんて言葉はなかった。
2. 1990年代。オフコンへのアンチテーゼとして、Unix/Sunがソフトウェアをインストールするという方法論を提示した(アンチテーゼ)。共有ライブラリなどが盛んに利用され、そのうちにネットワークからソフトをダウンロードするようになった。
3. 2010年代。ソフトをインストールするコストが爆発したのでコンテナという形にパッケージして丸ごと置き換えの世界に戻った(ジンテーゼ)

80年代はソフトのメンテナンスなんて無いある意味幸せな時代で、90年代に世界が変わってから20年後に統合されたアイデアが提示されたというのはいかがだろうか。Sunが悪いわけじゃなくてまぁ時代の要請だろう。
※VMイメージのコピーや自動化なんかもあったけど決定打にはならなかったですね。

スマホゲーム

ちなみにこの本の序盤では「人」の性質について過去の研究成果を整理して紹介しているのだけど、ここだけでもちょっと面白い。こんな感じである。

7節:人は報酬が不確実なほど熱心に取り組みを行う
11節:考えと行為との整合性を取るために考えが曲げられる

スマホゲームだ(笑)。

- XXX連無料の方が〇〇確定よりも人を惹きつけたり、
- これだけ(金と)時間をかけたんだからこのゲームは面白いはずだ、と思わせたり

するのも、

14節:予告された報酬がイノベーションを阻害する

というのも実によく理解できると思う。

ラノベとかアイドル業界も似たような構造があるんだろうなというところで駄文を終わる。


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