人工皮”風音”レビュー
人工皮はだいぶ前からありましたがほとんど普及していませんでした。
音色が舞台などで使うにはほど遠いレベルでしたので安価な初心者用の三味線などに使われるくらいでした。
動物愛護の問題や上質な皮の確保ができないことから開発が進み今はさまざまな種類の人工皮が出ています。
その人工皮の中で”風音”に張り替えた生徒さんがいましたのでご協力頂いて試奏させていただきレビューを書かせてもらいました。
人工皮に張り替えようか考えている方の参考になればと思います。
まずは単音での音色、共鳴、さわりの確認
音の粒もしっかりしていて音色、共鳴、ハーモニクスなど全く問題ないです。
撥で演奏すると音のボリュームにビックリしました。
今回はゆるめに張ってもらったのですがそれでも甲高い音がかなりします。
駒を変更
イイ感じですね!
この駒は甲鳴りをおさえつつ音色は前に出るようにカスタマイズしたものになります。
甲鳴りは風音の特徴なのだと思います。それをおさえるために風音専用の駒もあるとのことです。
皮の色合い
動画レビュー4の左の三味線は犬皮、右の三味線は風音になります。
並べてみると色の違いがはっきりわかり風音の方はホワイト色といった感じになります。
また撥皮が目立ちますね。
これが客席などからみたときに気になる方がもしかしたらいるかもしれません。
僕自身もこれは気になり専用の目立たない撥皮があると良いかなと思いました。
それと動画レビュー3の冒頭で駒が動いて直しています。
もしかしたら駒の素材によっては演奏中動きやすいのかもしれません。
使い分け
もし僕が今も現役の演奏家なら犬皮、風音の2丁を持ち下記のように使い分けます。
①舞台→風音
音色に関しては問題なと思います。
また移動中の天候や気温の変化によって皮が破けるリスクがなくなる分精神的にも楽になります。
②レコーディング→犬皮もしくは風音
スタジオやエンジニア、録音する曲のジャンルによって使い分けると思います。
スタジオはブースの広さ、曲のジャンルなどによっては音が大きすぎてしまうのではないかと思います。
アレンジャーやプロデューサーによっては「昔の三味線の音が欲しい」と要求されることもあります。
またエンジニアによってはまだ風音の音量に抵抗感や違和感を持つ方がいるかもしれないなと思いました。
③TVや写真などの映像、撮影関係→犬皮
音色の問題ではなく撥皮が目立つのが気になります。
気にならない方は風音で良いと思います。
まとめ
今回の試奏から感じたのは現場で使用するには問題ないと思いました。
ひと昔、いやふた昔前頃の津軽三味線の甲高い音に近い音が出ているのには驚きで、また撥のアタック音が大きくなるのではなく音色が大きくなっているのにはさらに驚きました。
だいぶ前からですが良質な皮が少なくなりやたらと甲鳴りするか、全く鳴らないかの時期がしばらくありました。
そういった中で好みの音色へ変えるブームもあり30年くらい前から裏の皮を抜いて(緩く)張る、カンガルーの皮を張る、鉛入りの地唄駒を使うなどと各奏者や三味線屋さんが様々な試みをしていました。
僕もその一人で色々試しましたが最終的に出した結論は、
『皮のことはあきらめよう』
でした。職人さんには申し訳ないのですが皮を張り替えるたびにここまで音色が変わってしまうと現場では難しいと判断し、そのかわり駒と撥で安定させる方向にしました。
ですがこれも皮の安定が必須で人工皮の開発が進んでくればより安定した音色を奏でることができると思います。
今回試奏させていただいた風音もここまでくるのにはかなりの苦労があったかと思います。
こういったことをしていただける職人さんには感謝しかないですね。
また演奏家の方も昔のような音が鳴る人工皮を作ってくれっと言うばかりではなく駒や撥、弾き方など様々な工夫をして共に良い方向に向かってもらえたらイイですね。
最後になりますが風音の張り替えをしている三味線屋さんの紹介です。
以上参考になれば嬉しいです。
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