【対策を上回る試合巧者ぶり】 〜24-25 B3 第8節 香川ファイブアローズvs山口パッツファイブ マッチレポート〜
GAME1
香川80-62山口
(18-19,25-12,25-15,12-16)
スターティング5
香川:チャップマン・高橋克・デイビス・満尾・近藤
山口:コラム・重冨・山口・プレストン・川上
-1Q-
試合開始からこの試合は山口が少し意外な選択を見せた。
オフェンスの作りにおいて、ローポストの15.プレストンにまずボールを入れることを徹底。彼が5.デイビスを押し込むことで優位に立とうという意図が見受けられた。
このオフェンス自体は成功率50%ほどの印象ではあったが、変なターンオーバーを出さず、無難に試合へ入っていくという点においては、良い選択だったと思う。
ディフェンスでは、77.川上をトップにおいたゾーン気味の構えからマンツーマンに移行するような曖昧な形を採用。
また、15.プレストンが3.チャップマンを意識してかなり高い位置まで出てきており、3Pシュートを絶対にやらせないという意図が感じられた。
ただ、香川も山口の対策に対して5分ほどで対応を見せていく。5.デイビスは15.プレストンに対してボールを入れさせないようにマークを行っていき、オフェンス面ではガード陣の積極的なドライブアタックと5.デイビスのインサイドアタックで得点を挙げていった。
中盤以降は、山口が11.山口や77.川上の3Pシュートで前をいきながら、香川が4.高橋のトランジションスリーや9.請田の3Pシュートでついていくという展開となった。
山口の対策に対応する香川という構図となった1Qは一進一退の攻防で18-19のスコアとなった。
-2Q-
2Qは山口32.吉川のフローターが成功して幕を開ける。
山口は1Qと同様に香川の3Pシュートをかなり警戒してアウトサイドまで厳しくローテーションを行うディフェンスを見せる。
対する香川はスリーのフェイクから3.チャップマン、13.高橋がドライブでペイント内へ進入し得点を挙げていく。
すると、山口はこの辺りの時間からからパスミスによるターンオーバーが連続。トランジションから10.岡田に3Pシュートを献上し、逆転を許してしまう。
この時間は香川の試合運びのうまさが際立ち、セットオフェンスではペイントアタックで確実に得点を挙げ、トランジションからスリーを狙う形が上手くはまっていた。13.高橋のドライブと10.岡田のトランジションスリー、そしてトランジションから3.チャップマンの飛び込みで7点リードを奪った。
オフィシャルタイムアウト明けも香川がディフェンスで圧をかけ続け、山口にリズムを掴ませずに試合を運んでいく。
さすがにシュートの精度は落ちてきて、得点は思うように重ねられないものの、強度の高いディフェンスで山口に得点を与えなかった。
山口は24.田中・11.山口と15.プレストンのそれぞれのコンビネーションでチャンスシーンを作るが、香川の圧の前にスピードを上げすぎているのか、最後のシュート精度が落ちており、決めたいシュートを決め切れないシーンが複数回あった。
また、ラストポゼッションでは香川のゾーンプレスに対して痛恨のターンオーバー。4.高橋にスリーを決められて無駄な3点を与えてしまった。
香川が強さを見せた2Q。43-31と香川が大きくリードを奪った。
-3Q-
後半は同じゾーンでも2-3の形からディフェンスをスタートする山口。この形は最初のポゼッションだけだったが、ディフェンスリバウンドが確保できず、セカンドチャンスから5失点を喫する。
そしてギャンブルディフェンスの裏を突かれ、22.近藤に3Pシュートを許し、点差を広げられてしまう入りとなった。
その後は、77.川上のドライブからのシュートや15.プレストンのゴール下、32.吉川のフリースローなどで得点を挙げるものの、香川のオフェンスは止まらず、5.デイビスのダンクや22.近藤のスリー、4.高橋のドライブでさらにリードを広げていった。
その後は完全に香川のペース。何をやっても上手くいく香川、何をやっても上手くいかない山口という構図になり、香川はしっかり守って速攻を繰り出すことで得点を重ねていく流れを作ることに成功した。
このクウォーターだけで3本のスリーを決めた22.近藤の活躍が印象的だった香川が68-46とさらにリードを広げた。
-4Q-
4Q序盤は山口での初出場となった24.田中の活躍が光る展開に。チームとしてボールを回し、コーナーで待つ24.田中が3Pシュートを沈めると、彼のキックアウトパスからシュートシーンを作り、15.プレストンがセカンドチャンスで得点を挙げた。
ただ香川の方も、9.請田、25.ダマで2点を確実に重ね、山口に流れ渡さず上手く試合を運んでいった。
それでも、24.田中の攻守に渡るハッスルプレーで山口が少しずつ自分たちのバスケを取り戻し、オフィシャルタイムアウトへ突入した。
大量リードのオフィシャルタイムアウト明けもディフェンスの強度が落ちない香川。時よりファウルになってフリースローを与えてしまうものの、フィールドゴールはほとんど与えずに時計の針を進めていった。
終盤は少しシュートの精度が落ちたように見えたところはあったものの、全く問題にならないぐらいに山口を最後まで圧倒していた。
2Q以降は終始ペースを握っていた香川が80-62と大勝を飾り、連勝を7に伸ばした。
-試合後の感想-
終わってみれば香川の完勝となったこの試合だが、山口の戦いぶりには全くケチをつけることはできない。
この試合の山口には明確な香川対策を感じた。
その内容は1Q,2Qの戦評のところに書いた通りのため、ここでは割愛するが、少し変化球的なアプローチで先制パンチを浴びせ、試合の主導権を握りたい意図があったと思う。
ただ結果的には、その序盤で思ったようにリードを奪うことができなかったのが痛かった。
ただ、これは香川の対応力の高さと自力を褒めるしかないところであり、山口としてやれることはやったと感じている。
香川の対応力の高さは、オフェンス選択の部分にで強く感じた。山口がスリーを相当警戒した守りを敷いている中で、的確にドライブアタックでペイント内を攻めて、得点を重ねていた。
開始5分経たないぐらいで、既にペイント内を狙うような意図を感じ、その速さと遂行力に驚いたところである。
自力という面では、まずはディフェンスの強度の高さが挙げられる。
山口視点で見た時に、いつもよりもシュートの局面で精度が落ちていたように見えたのは、そこに持っていくまでに神経を使わされていたからだと思う。それこそが香川のディフェンスが効いていた証だったのではないだろうか。
そして、トランジションによるオフェンスはやはりこの試合も破壊力抜群だった。山口にスリーを警戒されている中でも、トランジションの機会を逃さず、高精度で3Pシュートを決められる力を持っているところはさすがという他ない。
このように、GAME1は香川が強さを見せた内容だった。これを受けて、山口が更なる対策を講じることができるのか、短い時間の中での修正力が求められるGAME2となる。
GAME2
香川81-69山口
(25-15,16-15,18-18,22-21)
スターティング5
香川:チャップマン・高橋克・デイビス・満尾・近藤
山口:コラム・重冨・山口・マックスウェインJr.・川上
-1Q-
この試合は21.マックスウェインJr.をスターターで起用した山口。
立ち上がりから彼がポイントとなって試合が進んでいく。
最初のオフェンスは9.重冨とのロゴピックアンドロールからの得点。そして、ドライブからのシュートと21.マックスウェインJr.の連続得点による良い入りを見せる。
対して、香川のオフェンスは3.チャップマンがマークにつく21.マックスウェインJr.を狙った積極的なアタックを見せる。そこを起点に、彼の得点、4.高橋の3Pシュートなど、成功率の高いオフェンスを展開した。
互いに点を取り合う中で、徐々に香川が力を見せる展開に。
その要因として挙げられるのはシュート精度だった。シュートを決め切る香川に対し、クリーンなシュートも決め切れない山口という構図が続いた。
もちろん、香川のディフェンスの強度により、精度が狂わされているという側面もあるが、1Qはオープンなシュートもそれなりにある中で、決定率が上がらなかった印象だった。
フィールドゴール成功率61.1%、3Pシュート成功率42.9%の香川に対し、フィールドゴール成功率43.8%、16.7%の3Pシュートの山口と好対照な数字が残った1Qは、25-15と香川が2桁のリードを奪った。
-2Q-
24.田中、32.吉川のツーガードで始まった2Qの山口。32.吉川のフローターと15.プレストンのオフェンスリバウンドで得点を挙げるが、ディフェンスで香川に制限を与えることができず、流れを引き寄せることができないでいた。
スリーを警戒する中で、ペイント内のスペースが広く開いており、ハイピックを使われながらのペイントアタックを止めることが難しくなっていた。
25.ダマや10.岡田のシュートが決まらないことに助けられていたものの、トランジションから16.満尾、3.チャップマンへのダブルチームが不発に終わってフリーになった9.請田にスリーを決められて、11点差でオフィシャルタイムアウトへ突入。
タイムアウト明けは、フリースローで香川が2点を追加した後、山口がリバウンドからの速攻で77.川上が3Pシュートを決めるという流れに。
そして、その後の香川のタイムアウト明けから山口はビックラインナップを採用。17.パクセジンの強さを生かして2点を挙げる。
しかし、香川も5.デイビスが17.パクセジンを押し込んで得点、さらに4.高橋のスティールからの得点で突き放す。
ラストプレーで77.川上が意地のスリーを決めて何とか追いすがる山口だったが、シュート精度が上がらず、点差を詰めることに失敗した2Qとなった。
-3Q-
後半も3Pシュートを積極的に放つ山口。
4.コラムの2本の成功により、点差を詰める入りを見せる。
しかし、セカンドチャンスや速攻から3.チャップマンや5.デイビスのペイント内への進入を防ぐことができず、簡単に得点を与えてしまう。
その後、4.コラムのスリーや77.川上のバスケットカウントによる3点プレーで山口が良い流れを掴んでもおかしくない展開となるが、さすがの香川は流れを渡さずに試合を進めていく。
4.高橋が4.コラムの上からディープスリーを沈めると、セカンドチャンスから3.チャップマンがダンクを決めて得点差をキープする。
終盤にかけて、再びビックラインナップを見せる山口だが、良いディフェンスを見せた後に、ターンオーバーや簡単なシュートミスがあり、お付き合いのような形で流れを失っていた。
シュート精度には向上の兆しが見られたものの、思うように点差を詰められず3Qを終え、59-48と11点差のままとなった。
-4Q-
4Qも一進一退の攻防で始まり、互いに得点を取り合う展開となった。
しかし、3Qの終わり辺りから香川が使い始めたゾーンプレスに対して足が止まり気味となった山口は、スローインでボールを入れることができず連続ターンオーバー。
そのいずれも香川に得点へと繋げられてしまい、16点差と試合を壊してしまった。
オフィシャルタイムアウト明け少し経って、開き直って3Pシュートを狙い始める山口は、77.川上、4.コラムが立て続けに決め切ると、15.プレストンがゴール下で存在感を発揮してオフェンスリバウンドから連続得点を挙げ、点差を詰めることに成功する。
試合が決まった後ではあったものの、最後まで戦う姿勢を崩さなかったことと、ここまで苦しんでいた77.川上が、この2日間吹っ切れたようなプレーを見せてくれたことが収穫だったといえよう。
80分間通して山口に流れを渡さなかった香川がGAME2も81-69で勝利を飾り、8連勝を達成した。
-試合後の感想-
前日からのプラン変更もあって、この試合も香川に対する抵抗を見せた山口だったが、香川の壁は分厚く、香川の試合巧者ぶりが光ったGAME2となった。
21.マックスウェインJr.を軸に据えたオフェンスを狙った山口に対して、3.チャップマンと5.デイビスで、他の外国籍選手と比べてややインサイドのディフェンス力に劣る彼を狙ってオフェンスを作っていったところは見事だった。
また、自分たちのオフェンスが失敗した後のディフェンスでうまく山口を止めて、連続得点で流れを与えなかったところも強く印象に残った。
三重との試合でも、相手に流れが渡ってもおかしくないところでの踏ん張る力が印象的だったが、この試合でも同じような力強さを感じた。
一方の山口については、21.マックスウェインJr.を軸としたオフェンスへのプラン変更はおもしろい選択だったし、試合の入りには一定の成果が見られた。
その中でも、前節も課題となったシュート精度の低さによって10点差をつけられてしまった前半は悔やまれるところである。
後半は香川の落ちないディフェンス強度に押し切られてしまった感があり、この辺りは力の差を見せつけられたような格好となった。
連敗となってしまったが、チームとしての戦い方は良かったと個人的には感じており、後は各々が力をつけることが重要になってくるのだろうと思う。