<鑑賞記録>カム・フロム・アウェイ / フェニックスシアター
2015年にアメリカで上演された作品です。9.11同時多発テロを基にしたミュージカル。その日、アメリカの空域は閉鎖された。そして、アメリカ国内に着陸する予定だった飛行機38機と7,000人の乗客たちは、カナダにあるガンダーという小さな町に降ろされる。これは、その町から動けなくなった乗客たちと、住人たちとの交流の話。
主役もなくて、全員が入れ替わり立ち代わりで、いろんな役を演じる。衣装はほとんど変わらなくて、演技と小道具だけで役が変わっていくのは見応えがあった。初演時は、小さい劇場でトライアル公演を重ねて、2年くらいかけてブロードウェイに進出した作品の、ロンドン公演ということで、細部まで作り込まれていました。実話が基ってことで、随所にあるイスラム系の人たちに対する差別表現とか、満足にご飯も食べられず、お風呂にも入れなくて知らない人たちと一緒に寝泊まりするストレスとかが生々しかった。けど、コロコロ変わってく場面のテンポの良さと、メリハリのある曲が楽しかった。休憩がなかったのも良い。セットもシンプルで、衣装も普段着っぽい感じで、逆にそれが、その土地に暮らす人たちのドラマと、突然起きた悲劇を引き立てていて、上手いと思った。
劇場に、当時のニュースとか、地元の人たちの写真とかが掲載されていたり、至る所でリスペクトと、当時のテロを忘れない姿勢が見られてよかった。実話を基にして、しかも9.11のセンシティブな話で、ブロードウェイのヒット作のウェストエンド公演って事で、ハードルも上がってるところで、こういう細かい部分まで気が配られてて素敵だと思った。テーマは無骨だけど、旅行でも観に来られるし、家族連れでもいけるくらいポップな仕上がり。機会があったら是非観に行ってください。