🇦🇺30歳成人女性、激ヤバ大家からrun awayの巻🇦🇺最終話
〈登場人物のおさらい〉
私: かたことの英語で何とか細々とオーストラリアで生活している無職。今回の件で、クラスメイトのコロンビアーナに「You’re a Japanese worrier.」とお褒めの言葉を頂いた。
ルームメイト③: 英語ネイティブのバイリンガル。
剥き出しの狂気: 私の元大家。被害妄想がすごい。
大家の妻: 日本人。
安心安全快適な住まいを手に入れて改めて振り返り、ふと思い出す人物がいました。映画「哀れなるものたち」の主人公・ベラに近付き、勝手に傷付き破滅したダンカンです。SFコメディの本作で、ベラは身投げした臨月の女性の体に胎児の脳を移植することで蘇った無垢の女性として登場します。美しい妙齢の女性の姿で、自我が芽生えたての少女のような言動。そのアンバランスさと不完全さにダンカンは心を奪われ、彼女を誘惑。愛人として旅に連れ出しますが、その旅の間に彼女は膨大な知識を吸収。本を読み、自立を知り、そして医学部で学ぶ聡明な女性へと成長します。ベラに言い負かされるようになってきたダンカンは最初の余裕はどこへやら、泣いて縋って怒鳴っては泣いてまた怒るの情緒ジェットコースター状態に。彼が愛していたのは「自分に優越感をもたらし、支配が容易な不完全さ」だったというわけです。
海外には日本と日本人が好きだと言ってくれる人がたくさんいます。そして日本人女性を自分の物件に入居させたいオーナーもたくさんいます。その理由が「日本人女性は礼儀正しく、家を綺麗に大事に使ってくれる。他の住人とのトラブルも起こさない良い利用者」という評価なら何の問題も無いのです。
ですが中には私たちの性質を悪用する人間が少なからずいるようです。「争いを好まず交渉の経験自体が少ないから、反撃されるリスクも低い。いつもニコニコ淑やかで従順。何よりろくに英語を話せない。良いカモ」だとダンカンのように思っていたのが、元大家でしょう。いえ“良いカモ”扱いしていた自覚すら無いかもしれません。“助けてやっている自分は余裕がある良い人間だ”ぐらいに思っていたのかもしれませんね。
大家は日本語ネイティブの妻と住人たちが話すのを良しとせず、妻自身も住人と積極的に関わることはありませんでした。私も彼女とは1,2度しか話したことがありません。「嫁には言うなよ」との言葉通り、自分にとって都合の悪い情報を妻に知られたくなかったのでしょうが、外部との接触を絶たせるのは典型的なモラハラ手法ですよね。「妻は僕に日本語を教えてくれない」と大家は言っていましたが、私は何となくその理由が分かる気がしました。と言っても私の想像に過ぎないので今後も本当の理由が分かることは無いのでしょうが、何にせよ大家の言動には中々根深い物があるなぁと感じた次第です。
英語ネイティブのルームメイト③は驚いてくれました。「初めての海外なのに、4ヶ月で大家に交渉&ブチギレかませる程に成長したのが本当にすごいと思うよ」と。ダンカンが必要無くなったベラのように、剥き出しの狂気が必要無くなった私もその場を去るのみ。この物語も一件落着です。
それにしても日本の男尊女卑から一時的にでも避難したいという理由もあって外に出たのに、海外でも男尊女卑の煮凝りのようなモラ男に会うなんて。比率はともかく、どこに行ったってこういう人間はいるという勉強にはなりましたし、こちらの未熟さに好意を見出すような人間との付き合いは避けるに限るという教訓を得たのでした。
〈30歳成人女性、激ヤバ大家からrun awayの巻・完〉
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?